第10話 魔法と手加減

こんにちは、トラウです。

今、僕の眼前には、地面にできたクレーターがある。いや、有り得んだろうよ。先生でもこんな威力なかったのに。魔力操作ミスって暴発したかなぁ。

「うーむ、お前の魔力が多いのは聞いていたが、魔力操作も化けもんだとはきいてないぞ。」

「え?魔力の暴発じゃないんですか?」

「いや、今のは完璧に制御されていた。そのせいで、ほぼロスなく威力が伝わったんだ。魔力も多いから、魔力の密度が凄くて、火力が上がったってことだな。」

うーん、TNTみたいなものなのだろうか。密度が上がると比例して火力が上がるやつ。

「とりあえずお前はある程度威力の制御を覚えるべきだな。練習の為に1発打つ事にこんな威力出されてたら命と的がいくつあっても足らん。」

「はぁ、わかりました。じゃあ、どうやったら威力下がりますか?」

「とりあえず魔法に込める魔力の量を減らすことだな。多分トラウの制御能力なら、多少減ったところで魔法の崩壊は起きないだろう。」

また、新しい単語が出てきましたねぇ。

「魔法の崩壊ってなんですか?」

「あぁ、教えてなかったか。魔法の崩壊ってのは、魔法の失敗の仕方のひとつだな。魔法を起こすための魔力が少なくなった時に、魔法の起動に使われる魔力にムラが出ると起きる。魔法を成立させれずに、魔力が霧散してしまうんだ。」

「そんなことが起きるんですか。」

「ああ。ただ、魔力操作が上手ければムラはできないから起こらないんだがな。」

「じゃあ、他にどんな時に魔法は失敗するんですか?」

「例えば1つ目は、これは知ってるっぽいが、魔力の暴発だな。自分の魔力操作の範囲外の魔力を魔法に込めた時に魔法が制御できず、その場で魔力の爆発が起きる。2つ目は魔力欠乏だな。魔力が残り少ない時に、魔法を発動しようとした時に起きる。その場に魔力不足で気絶する。そんなところだ。」

「つまり、気をつけておけば発生することはないってことですか?」

「端的に言ってしまえばそういうことだ。ただ、戦闘中に常に冷静にいられる訳では無い。それを頭に入れておけよ。それが分かったらとりあえず手加減の練習だ。普通の威力になるまで魔力を落とせ。」

「はい!わかりました。」



       ♢

手加減の練習を始めてから一刻ほど過ぎた。魔力も減ってきたのでそろそろ終わりたいところだ。

「ふむ。かなりいい感じに魔力を絞れてるな。筋がいいな。それより驚きなのは、これだけの時間魔法を使い続けて魔力がもつことだ。本来の魔力消費より減らしているとはいえ、これだけうち続けれるやつは早々いないぞ。」

「ありがとうございます。」

やっぱり褒められるのは嬉しいよね。

「それじゃあ、明日は剣術の模擬戦に加えて、魔法の打ち合いもしてみるか。的に当て続ける練習も結構だが、実践の中でそれだけ集中して狙える訳じゃない。しっかりと戦いながらでも魔法を命中させれるようになれ。」

「はい、わかりました。」

そんな感じで、家庭教師が来てから一日目は終わった。

このあとは夕飯の後、寝るまでどうしようか。まだいつもの就寝時間までは二刻程の時間がある。あ、そういえば杖を作ってみようと思っていた事を思い出した。それをしてみよう。創造魔法と錬成術、錬金術の練習にもなるだろう。


そんなことを考えていると夕飯の時間になった。


「メイスの授業はどうだった?」

と、父上が聞いてきた。

「はい、剣術も魔法も分かりやすく教えてくれるのはいいんですが、かなりスパルタでした。剣術はいきなり打ち合いから始まりましたし。」

「まぁ、もう剣術で打ち合いしてるの?魔法はどんな感じかしら。」

「最初に試しに水魔法の1番弱いやつを撃ってみたら、威力が高すぎて威力制御の練習をさせられていました。」

「あら、威力が高いなんて魔法の適性はバッチリなようね。いつか私とも打ち合いしてみましょうね。」

「母上、母上の魔法が強いのは承知ですが、僕が母上に魔法を打つのは少々心苦しいものがあるので止めてください。」

「あら、大丈夫よ。そんな簡単に当たるつもりはないわよ。」

母上は如何せん魔法が強いから困ったものだ。そんな母上のステータスはこんな感じ。


名前: フィリア・フォン・フラメル 年齢:27 性別:女


job:魔導師 Lv:18 加護:魔法神


HP:272

MP:1215

魔法属性:無,音,土,木


STR:176

DEF:175

INT:636

RES:338

DEX:192

AGI:189


スキル:魔力操作 魔力感知 魔力回復速度増加 礼儀作法 剣術 料理作成


こんな感じである。ステータスはまさに魔法特化といった感じ。レベルが基本の10より上がっているのは、1年程冒険者として過ごしたかららしい。母上も勿論貴族出身なので、加護も持っている。料理作成スキルは結婚当時、父上に手料理を振る舞いたくて身につけたらしい。なんともまぁ、熱々なことで、という感想しか出てこない。最近でも時々僕がいることを忘れてイチャつく事がある。まだ兄弟が増えそうな予感がするのは僕だけでは無いだろう。因みに両親は恋愛結婚なのかと言われたらそうではないようだ。元々婚約者として決められていて、初めて会った時に共に一目惚れしたらしい。まぁ、半分恋愛結婚のようなものだろう。


そんなことを言っていると夕飯の時間が終わった。因みに、この世界の食べ物は、美味しいかと言われると微妙である。調味料や料理法の種類の少なさが理由だと思う。なぜなら塩コショウをかけたステーキはほんとに美味しかった。流石貴族だと感じた瞬間だった。つまり、素材は申し分ないのである。それでも、いまいち物足りないと感じるのは、やはり日本人なのもあるのだろう。時間に余裕が出来たらそこら辺のことも手を出していきたい。他にはこの世界は風呂という文化が無いに等しい。お湯で濡らしたタオルで、身体を拭くだけだ。それも日本人としては有るまじき事態である。更にトイレなどもボットン便所だ。上下水道も整っていないのでそこら辺の改善もしていきたい。少なくとも、自分の家の領地は改善していきたい感じだ。そんなことを考えながら身体を拭いていた。

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