⑫ユメの残骸

厄介な客が来たな。

「なんで泣いてるのよ。ちょっとちょっと」

女の子。たぶん、同世代。

「小間、みぃちゃん。さっきの新作持ってきて」

仕込み途中だったが、しかたない。このギャン泣きしてる女の子で試すか。

「小間、はやくしろ」

「小間遣い荒いんだからもう」

「持ってきましたっ」

美田と小間が走って現れる。新作のお菓子。ロールケーキ。

袋を破って、泣いている女の子の口にぶちこむ。

女の子。

音が、止まった。

「あれ」

「喉に詰まってないですか?」

「いえ、大丈夫です」

美田の見立て。

「お、大丈夫だ」

「よしありがと。ふたりともたすかった」

「いえいえ」

「じゃあ仕込みに戻りますね」

「おねがい」

さて、どうしたものか。

目の前の女の子。

「あの、どうしてここへ」

「ごめんなさい帰ります」

「いやいやいや。帰るなよ。気になるよ。教えてよ?」

「おかし」

「ん?」

「さっきのお菓子をもう少しください。それが条件です」

がめついなこいつ。

「いいよ。食えよ」

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