1年 〜秋〜

体育祭編

第25変 体育祭に近づく時

「もう少しで体育祭がある」


 体育祭。

 十月に行われる、大きな行事の一つだ。学年全体が一同となって奮起しあう。


「体育祭があるわけだが、応援団に入る人を二人決めないといけない。まずは応援団の説明だが……。あー、洲本、説明を頼む」


 ホームルームで体育祭の説明を受けていると、先生が急に説明を丸投げしてくる。説明をするのがめんどくさくなったか。

 俺は席を立つと、教卓の前に立つ。みんなが俺を見ている。この光景はやっぱり慣れない。


「えー……お、応援団は各色別14人で形成されます」


 説明が書いてある紙を見ながら、たどたどしく説明を始める。


「1年から3年まで、各クラスで2人ずつ選びます」


 3年、2クラス×3人

 2年、2クラス×2人

 1年、2クラス×2人


 と黒板に書く。

 ちなみに全学年ともろく組まであり、それぞれ赤、青、黄に組ずつ分けられる。俺らのクラスは黄組であり、一年でもう一つの黄組は隣の三組だ。


「他の黄組のクラスも、それぞれ代表者を決めて、その代表者で応援団を組みます。それで、応援団は体育祭で演舞をするので、放課後残ったりして練習したりします」


 そう言った瞬間、クラスが騒がしくなる。

 放課後残るのがだるいやら、部活で忙しいやら。


「そ、それで、このクラスからも二人決めないといけなくて。……その、誰かやりたい人とかいますか?」


 誰も手を上げない。

 そりゃそうだ。こんなの誰もやりたくないはずだ。もちろん、俺もやりたくない。


「あ、総理くんがやればいいじゃん!」


 陽キャが大きな声で叫ぶ。


「確かに委員長だし。いいじゃん」

「私もいいと思う!」


 賛成の声が教室を飛び合う。

 ……え。


「おいおい、それじゃあ洲本が可哀想だろ」


 今まで傍観していた先生が、急にイスから立ち上がる。

 初めてこの先生のことを見直した。


「公平にくじ引きだ」


 はあ、このようなことをくじ引きで決めていいんだろうか。やっぱり、この先生はこうなんだな。

 次々とくじを引き、みんなが引き終わると一斉にくじを開ける。

 俺の首には赤い丸が書いていた。……まさか。


「赤丸が書かれている紙が当たりだ。当たった人は手を上げてくれ」


 冷や汗が出る。

 何度も紙を裏返したりしてみたが変わらない。


「裕様、もしかして……」


 久保が話しかけてくる。


「……最悪だ」


 俺はそう呟いた。そして、ひっそりと手を上げる。


「お、結局、洲本なのか」


 先生は笑いながら言う。

 腹が立つ。何だよ、くじ引きって。


「総理くん、かわいそー!」

「頑張れー」


 クラスのみんなが騒ぐ。

 みんなの顔から嬉しそうな気持ちが伝わってくる。


「もう一人は誰だ」


 先生がそう言う。すると、もう一人の人が手を挙げる。


「……小倉さん?」


 その瞬間、クラス中が大騒ぎとなる。


「おい、総理くん、変わってくれ!」

「嘘、小倉さん!?」


 さっきまでとは一転し、今度は嫉妬の目で見られるようになった。

 何故だろうか? 勝ち誇ったような気持ちになる。が、少し傷つく。


「それじゃあ、洲本と小倉が応援団員な。早速、今日から練習があるそうだから、行ってくれ」


 ……今日?

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