白雪姫症候群

羊草

第1話

ある日、世界を滅ぼす隕石が落ちてくるという予言があった。予言を現実にしてしまう前に、創造神が一つだけ失えば隕石を消滅させると言った。勿論、世界が滅ぶくらいならと何処の人もそのお願いを聞き入れた。神の言うお願い、これが何を示すか聞く前に誰もが納得した。人々は神に感謝し、何を失ったかさえ解っていない。神は世界中の17才の少女を眠りにつかせた。神が願った一つだけ失うもの。それは全17才の少女の人生を失うというものだった。17才の少女以外の女性はこの創造から逃れた。これから産まれてくる女の子は皆、17才になる。つまり、逃れた女性の死によって人類破滅の危機を向かえる。創造神の狙いはそこにあった。その神はつくることは出来るが、壊すことは出来ない。破壊神を呼べば良いものをと思うかもしれない。だが、人類を破滅に追いやるには人々の信仰が高い創造神がこの役目に抜擢された。眠りについた少女達は死なず、衰えず、永遠の眠りについた。この言葉は死を表すわけではない。そのままの意味だ。単純に眠っている。隕石落下の予言から30年の月日がたった頃、運命の女神がそろそろ人の誕生が見込めないと嘆いた。女神は人に運命の出会いをさせる働きも何千年と行ってきた。女神は運命という定めを送るには多くの生き物がいないと存在が危うくなる。人々の嘆きと女神の嘆きが共鳴し、30年の月日を眠る少女達に運命の出会いをさせることで目覚める事が可能となった。世界中の青年達は自分と少女の運命を探すため、あちこち冒険するようになった。そして、一つの国の王子が森にたどり着いた。森のなかでひっそりと眠る一人の美しい少女。王子は少女の美しさに目を奪われ思わず、自分の唇と少女の唇を重ねていた。その少女は30年の長い眠りから覚め、衰えぬ美しい容姿のままを保っていた。その少女の名前を白雪と言った。少女は最初に眠りから覚めたことを報告された。少女のハッピーエンドは後世にも伝わり、17才の少女の永遠の眠りを白雪姫症候群と呼んだ。

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白雪姫症候群 羊草 @purunn

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