第10話ドラフト会議当日!最強チームを作れ!

―名礼祥ターン


 いつもの見慣れた光景。教室の隅、いつもの場所に集まる三人。クラスメイト達には伝わってなくても私にはものすごいワクワクが伝わってまいります!テレビ中継もない。スポンサーもない。マスコミもない。ただ、かつてないとてつもないバトルの始まりであり、歴史的第一回『ドラフト』が本日開催されるのである!!これは役得と言いますか、ナレーション冥利に尽きるとしか言えません!やっててよかった!と、一人で盛り上がってる場合ではありません。私には皆さんにこの熱いバトルを伝える仕事があるのです。早速、三人の会話を聞いてみましょう。

「アムロ行きますよお。『ドラフト』当日に言うのもなんだけどさあ。ちょっとまだ決めといた方がいいというか、この場合はどうなるんだ?ってのがあるんだけど」

「あ、あたしもー」

「僕も一点だけ言い忘れてたことがあったんだ。多分、同じ考えだと思うけど順番に。じゃあおおそうじ君から」

「だろうな。おそらくみんなが同じことを思ってるだろ。それは『枠の概念』だ。六つの作品、まあゲーム系も含めて…(う、迂闊にここからは言えねえー)。なんて言うか、そのさあ、しょじょの考えてるの先に言ってくれ」

「(このおおそうじのばかやろうーー!ここで変な言い方すればあたしの狙ってる『UNO』とかがバレる可能性があるじゃないのー!)え、えーと、あたしも後でいいから先にアムロ行きます言っていいよ」

「そう、『枠の概念』。これから選ぶそれぞれの特別な作品や能力は擬人化されていない場合もあるかもしれない。極端な例だけど『しりとり』が強いと思って選ぼうと思ってるものもいるかもしれない。けれど『しりとり』には死の概念もないし、じゃあそれをだれが操るんだっていう疑問が生じるよね」

(そ、その通りなんだけど…、こいつ…、『しりとり』って…。本当にこいつだけは読めねえー!)

(アムロ行きますはあたしの考えに辿り着いてんじゃないの?普通ここで『しりとり』を出してくる?や、や、やばーい!)

「まあ、六つ選んでそれぞれの組み合わせでバトルするのがこの『ドラフト』だ。そこは『ドラクエ』の馬車の考え方でいいと思うんだけど」

「『ドラクエ』の馬車?」

「ってあの『ドラクエⅣ』のやつ?」

「そう。六つ選ぶけど全てキャラクターが存在しないってことはないと思う。一人でもそれを使うものがいればそれでいいということで。例えるなら『ラッキーマン』が『すごろく』をするとして、『ラッキーマン』と『すごろく』で二つの枠を使うってことでいいかな?もちろん六つだから各ターンで行動回数は六回。『ラッキーマン』と『すごろく』でラッキーマンが二回すごろくをするってことだね。極端に言えば『すごろく』単体なら行動出来ないってことかな。じゃあ多数決いく?」

「お、おう。俺様もそれが言いたかったんだ。もちろんそれでいいに一票」

「あ、あたしも。それでいいわよ(うわー、『すごろく』出しやがった!これはやばいやばいやばーい!ア・ム・ロ・行・き・ま・すーーーー!これ以上余計なことを言うなーーー!)」

 なるほど!確かにそれは最初に決めておくべきことだ!!特にしょじょさんはカード系やボードゲーム系で強い作品を狙っている!しかもそれが完全にノーマークの下位指名で獲得しようと目論んでいる!それにしても『ドラクエ』の馬車の考え方とは…。分かりやすい!実に分かりやすい!!

「逆にキャラクターが多い作品もたくさんあるよね。『ジョジョ』のスタンド使いだけでも相当な人数になるし。それを同じターンで全部使われるとこのバトルは成り立たないし。解釈として何千人ものキャラクターが乗れる馬車があると考えて。自分の攻撃ターンと防御の時にそれぞれ六つまで馬車から降りると考えれば。もちろん『ジョジョ』で六回の行動全て使うのもありでいいと思う。ただもうその辺は多数決の場面が増えてくるとは思う。コピー能力で納得できれば『スタープラチナ』が二人になるのも十分ありえるし、その辺のジャッジはお互いの信頼関係ってことで」

「あ、あと一個だけ!」

「(もー、早くやりたいんだから余計なこと言うなよー!おおそうじ!)あと何かある?」

「よくよく考えたらこの『ドラフト』は第一回だからさあ。つまりプロ野球の『ドラフト』は一位指名は抽選だけど二位指名から完全ウエーバー…って分かんねえか。簡単に言うと前の年に順位が下のチームから選ぶ権利があるって決まってて。これが完全ウエーバーって言うんだがよ。一位指名はジャンケンとして二位指名の順番を先に決めとかないと揉めるんじゃね?」

「(あたしの狙ってるのはおおそうじはノーマークだけどアムロ行きますは絶対取られる可能性がある!ここはリアクションしとくべきだわね)そう!そう!強いアニメや漫画は絶対早いもん勝ちになるからそこは決めとくべきだわ!」

「そう?最初に言わなかったっけ?一位指名が最後の人が二位指名は一番最初って。まあ、一位指名が重複しないこともあるしね。それでいいかな。でも二位指名が一番最後だと三位指名は逆に一番最初だろ?まあ、早いもん勝ちで揉めそうだからそこも決めておこう。うーん。ジャンケンでいいんじゃない?」

「おっけーい(アムロ行きますは本気か?六作品だから一位は抽選として残りは五つで奇数なんだぜ。一番最初に選べるのが三つになるのと二つになるのはでかいぜ)!」

「じゃあ、やろっか(うーん?アムロ行きますは絶対に奇数で順番が重要になることに気付いてるはずなんだけど…。この余裕が…気に入らないねだわ)!」


『ドラフト』開幕!!であーる!!


「じゃあ一位指名はそれぞれこの紙に書いて見えないように折り曲げて僕に渡してくれるかな?」

「あ?紙に書く?まあ本物の『ドラフト』っぽくするならそうしたいし、俺様もそうすべきだと思うがそんなかったるいことしなくていいだろ?俺ら三人のグループラインで一斉に同時に送信すればいいじゃん?」

「あたしもそうすると思ってた」

「はい、多数決でそれでいこう。それぞれの攻撃や防御もいっそグループラインでやれば便利だし、そうしよう。ちょっと僕の頭が固かったね」

「え?俺様はそのつもりだったけど」

「あたしも。アムロ行きますは違うのを考えてたの?」

「ああ、口で軽やかに言った方がバトルっぽくてかっこいいし。でもグループラインで全てやって検証は口でやった方がスマートだしね。じゃあ改めて。スマホをお手元に。それぞれの一位指名を書き込んでスタンバイね」

「俺様は準備オッケーだぜ」

「あたしもオッケーだぜ♪」

「じゃあ、僕もオッケーだぜ、で」

「なんだそれ?」

「フフフ、じゃあ、アムロ行きます。よろしく」

「よーし、では記念すべき第一回『ドラフト』各一位指名を送信!」

 三人がグループラインのメッセージ送信ボタンを同時に押す。

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