第6話模擬試合!え!?マジかあ!?

―名礼祥ターン


 教室のいつもの片隅でいつもの三人がいつもとは違う表情を見せている。

「アムロ行きます考えてきた?」

「考えてきたあ?」

「だから何で僕に言うんだよ?」

「いやあ、『何を選ぶか』はいろいろ考えたんだけどさあ…」

「あたしも…」

「で、僕が自分に有利なことを考えるとか思わなかった?」

「いや、とりあえず話を聞いてから考えようと、な」

「あたしも、ね」

「僕もそんなに考えてないよ」

「何ぃ?」

「えー?」

「それだよ。まあ、この三人ってのがまず一番いいかなっと。多数決の原理が通用する。判断に困れば基本、多数決だ」

「多数決?」

 おおそうじ君としょじょさんが同じ言葉を同じ表情で言った。

「そう。一人が意見しても残る二人のうち、どちらかが意を唱えてももう片方が納得すればその意見は通るってこと」

「えっとー」

 しょじょさんが額にグーを押し付けて考え込む。

「例えば誰かが無茶な意見を言ったら、二人ともそれは通らないと言うはずだろ?」

「なるほど!その能力が通用するかのジャッジメントはそこでされるってこと?」

「そう。誰かが『パーマン』と『ジョジョ』を選んだとしよう。承太郎がコピーロボットの ボタンを押せば承太郎が二人になる。さあ、これはどう?」

「ありじゃねえ?」

「うーん、ありだと思う」

「じゃあ、それはありなんだよ。次に、『ドラゴンボール』を選んだやつが神龍を二回続けて使おうとしたら?」

「無条件で?」

「そう」

「それはダメでしょ。原作では一年待たないと使えないし、ナメック星の神龍でも三か月だろ?選んだ能力でそれを納得させるものがあれば別だけど」

「あたしもそう思う。『ドラえもん』のもしもボックスとかで制限なしとか理由があればありだと思うけど」

「だろ?こうやって一人が意見しても二人ともが納得しなければそれは通らない。それがまず大前提であり、このバトルのルールのほぼ全てだと思う。あとはいくつか決まり事を決めておけば大丈夫でしょ?」

なるほどなるほど!このバトルは一体どうやってやるのだろうと思っていたがアムロ行きます君の提案でルールはほぼ決まったようだ。これは第三者から見ても分かりやすい!私もナレーションに困ることはないだろう。

「決まり事?」

「まず『アメコミ』禁止」

「『アメコミ』禁止?」

「まあ、これも二人のどちらかが意を唱えれば禁止にはしないけれど。調べれば『アメコミ』はやたらチートキャラが存在するらしい。ま、いいんだけど。そんなに詳しいの?おおそうじ君やしょじょさんは?」

「いや、知らねえ」

「あたしもー。まあ、調べれば強いのはたくさんいたけれど」

「まあ、それは次の機会。そうだね、『ドラフト第二回』の時にやればいいんじゃないかな?まず国内最強を決めてさ」

「だな。国内だけでもすごいキャラや能力がゴロゴロいるからな」

「記念すべき『第一回ドラフト』ってわけね。いいじゃんいいじゃん!国内限定で」

「でも洋ゲーはありでいいと思うけど。どう?『グラセフ』とか」

「ゲームはいいんじゃない?有名どころ多いし」

「そ、そうそう。ゲームはいいんじゃない(あっぶなーい!私の『UNO』って確かメイドインジャパンじゃなかったわね?)!」

 なるほどなるほど!これも私には大助かりである!私も『アメコミ』には疎い。ゲームなら大丈夫である。しかし、このルールで一番助かったのはしょじょさんではないだろうか?うっかり名案である『UNO』を封じられるところであった。

「あとはキリがないから最初に選ぶ、つまり『ドラフト』で指名するのは一人六作品、六つまでとする」

「え?一人六つ?それは『ジョジョ』ならシリーズ全てを一つと勘定するってこと?」

「そう」

「六つって、別に漫画やアニメじゃなくって…、ゲームでもいいってこと?」

「そう」

 ボードゲームもカードゲームもゲームである。なるほどなるほど!これはしょじょさんが上手く言質を取ったとも言えよう!

「大体さあ、『ジョジョ』だけでも能力なんて百超えるでしょ?それでも単体だけじゃあ意外な弱点であっさり負けることも大いにあり得るからね。二つや三つじゃあ少ないし、六つぐらいがちょうどいいんじゃないかな?」

「ちょっと待て。それはいいんだけどさあ。俺様からそのルールに付け足してもいいか?」

「いいよ。最初にしっかりと決めておく必要があるからね。しょじょさんも言いたいことは今のうちに全部言っておいてね。それで、おおそうじ君の付け足しとは?」

「プロ野球では『ドラフト』でチーム編成を行う。そしてシーズン序盤で補強を大体どのチームも行うじゃん?言って見ればこの三人は新しいチームをそれぞれ作るわけじゃんか?実際にやってみると『あ、ここがうちのチームは弱い』ってのが見えてくると思うんだよね。保険という意味で『補強』の概念を最初に決めておきたい。実際のプロ野球なら『トレード』と『助っ人外人獲得』だ。これを入れておきたい」

「なるほどね。それはいいアイデアだと僕は思うな。しょじょさんはどう?」

「え?どうゆうこと?『トレード』?『助っ人外人』?『アメコミ』禁止じゃないの?」

「『助っ人外人』ってのは例えだよ。プロ野球でも使えない外人を二軍に落として新しい外国人を取ってくるだろ?確か…六月末だか七月末だか?ようは最初に選んだ六つの作品で枠を使っているとして、決められた回数だけ入れ替えることが出来るルールを入れたいってことだよ。『トレード』も同じく。俺様が選んだ作品としょじょが選んだ作品でお互いが合意すればそれを交換するのもありにしようってことだよ」

「『助っ人』は一回まで。『トレード』はお互いが合意するなら制限なし。これがベストだと思う。『助っ人』もそう何人も取ってくるチームはないだろ?それをやると最初に『ドラフト』で選ぶ意味がなくなる。『トレード』もお互いが合意することもそうそうないだろうしね」

「え?え?あたしに分かるようにちゃんと説明して」

「だーかーらー、しょじょが最初に選んだ作品の組み合わせ六つの中で実際にやってみてさ、『あれ?やっぱり別のものを選んでおけばよかった』と思うとするじゃん?そういう時に一回だけそれを認めるってこと。それが『助っ人補強』な。『トレード』は俺様の選んだ作品がすげえ強くていいなあって思うだろ?その時にしょじょが選んだ作品を一つ出して『これを出すから交換してください』ってお願いすること。もちろん、お互いの合意が条件だから俺様が納得しなければ断ることも普通にあるってこと。分かった?」

「はい、質問!」

「はい、しょじょさん」

「『助っ人補強』は分かったわ。それで『トレード』。これはお互いの合意で成立。これも分かった。そこで、あたしが『トレード?いいけど、その作品一つとじゃあ割に合わないけど二つ、もしくは三つとなら交換してあげてもいいかな?』ってなるとどうなるの?」

「なるほど。おおそうじ君さあ、実際の『トレード』にも一対三でやることもあるよね?」

「よっぽどの大物なら何年に一度あるな。過去には『無償トレード』もあったからなあ」

「まあ、『無償トレード』はあり得ないけど、その辺はお互いの合意の上ならありでいいんじゃあない?」

「おう、いいんじゃないの?」

「オッケー!了解!」

 なるほどなるほど!このおおそうじ君のアイデアも実際に使う場面が出てきそうである!『助っ人補強』一回に無制限の『トレード』。最初の『ドラフト』で指名漏れされた思わぬ能力が発掘される可能性大である!そう言えば過去には『三角トレード』と言うものもあった記憶が…。まあ、お互いの合意というルールの基ならそれも行われるかもしれない。

「あと大事なことが一つあった。これは最初に言うべきだったね。『漫画神ハイデガー』、これはジャンプの漫画『サクラテツ対話篇』って作品の中の能力って言うか、登場人物なんだけどこのキャラは漫画と現実のはざまに存在して全ての漫画を支配してしまうキャラなんだけどこれは禁止ね」

「なになになに?全ての漫画を支配?どうゆうこと?」

「『こち亀』の両さんとかさ、アイデアが出ない作者に自分の都合のいいように描かせる話を昔にやってるんだよ。それはとても斬新なことだけど今それをやっちゃうとなんでもありが違う意味で単純な無敵になっちゃう恐れがあると思うんだよ。例えば『ジョジョ』の『ヘブンズドアー』で攻撃されて行動を書き込まれて自分の意図しない行動をしてしまうのはありだよね?」

「そりゃそうだろ?そういう能力なんだから」

「それを制限なしで好き放題やれちゃうのがそういう能力なんだよ。それはやっちゃうと面白くないから禁止ってこと」

「オッケー。あとは?」

「(これはあたしのアイデアはセーフってことよね…)こっちもオッケー♪他は?」

「まあ、多数決のルールでほぼ秩序は保てると思うんだよね。あとは…、勝敗の決め方だね。これはもう『こいつには逆立ちしても勝てない』と一人が残る二人に認めさせた時点で決まりでいいよね。まあ、そんなに短時間で終わるとは思えないし、面白かったらさっき言ったように『第二回』をやればいいわけだし。最後にルールはターン性ね。僕たちの退屈な休み時間は午前中に三回、あと昼休みと午後に一回。放課後はキリがないからやらないってことで。あんまりダラダラするのもよくないし。ほら、ゲームでも二人同時プレイや複数人でプレイするやつでも『お前、考える時間長えよ!』って時あるじゃん?」

「あるある!」

「分かるわー」

「まあ、十分ほどの休み時間が一日四回と長い昼休みが一回。トイレとか次の授業が体育で着替えとかで流れることもあるし。それでも一人一日一回はターンが回ってくるでしょ?昼休みにターンが回ってきた奴はラッキーと言うことで。単純にラッキーでもないかな?攻撃側も防御側も考える時間は同じだからね。一回の休憩時間でそいつはそのターンを終わらせること。どうせ授業中も熱心に教科書や先生の話を聞いてる訳じゃないだろ?十分の休憩時間なら前以て選んだ六作のそれぞれの行動を考えておくことね。そしてそれを休み時間にそれぞれのキャラ、六つの行動を発表。それをみんなで検証しながら判定し、攻撃として成立したらその能力は発動。多数決の決まりで却下されたらそのキャラの行動はなしってことで。『ドラクエ』をイメージしてみれば分かりやすいかな。自分でそれぞれの行動を選択するでしょ?その時、相手も勝手に行動を選んで攻撃してくるじゃん。それを基本一人一日一回は自分の攻撃する順番が回ってくるってことね。攻撃された側はそれに対する防御や対策を考える。それもそいつが行動を発表した休み時間内に考えること。防御する策やその能力による攻撃を理論的に防げなかったり、時間内に思いつかなかったらダメージを受けると。この場合、特殊な能力が多いからヒットポイントっていう概念はないと思っていた方がいいよ。『デスノート』にヒットポイント一万だろうと一だろうと意味ないでしょ?あと、判定は多数決が基本だけど、意外と全員が知らない作品や能力を選ぶ奴もいるだろうからそこは『スマホ判定』。まあ、これはおおそうじ君なら分かるんじゃない?」

「プロ野球でいうとこの『ビデオ判定』だな!」

「そう」

「まあ、『スマホ判定』は確実だわね。ウィキペディアやグーグル先生は公平なジャッジの基準になるわ」

「『スマホ判定』とお互いの『多数決での判定』があれば大丈夫でしょ?あと、自分の持ち駒がなくなればその時点で負け決定ね。まあ、それはないと思うけどね。あ、そうそう、あとは作中のキャラは存在するならどれも選べるってことね。『ドラゴンボール』を選んだ奴はスーパーサイヤ人の悟空だろうと幼少時の悟空だろうと使えるってこと。『ジョジョ』のエコーズもACT1だろうとACT3だろうとオッケーってこと。以上かな。それに二人とも自分の熟知したとっておきの六作を選んでくるでしょ?明日まで一日あるし、昨日もそればっかり考えてたんでしょ?」

「まあな(俺様に秘策あり!)」

「そうねえー。でも大体同じやつを選んじゃうんじゃないかなあ?えっと、被ったらジャンケンだっけ?」

「そうだよ。じゃあとりあえず一回練習の意味でやってみる?」

「え?」

「今から?」

「そうだよ。練習試合だよ。この場合『オープン戦』っていうのかな?」

「じゃあ、俺様は『ジョジョ』」

「あたしは…『ラッキーマン』で」

「ふーん。じゃあ、僕は『キン肉マン』を選ぶよ」

「ア、アムロ行きますよ…。お前『キン肉マン』だと?いくら悪魔将軍だろうとパーフェクト超人だろうと俺様のカーズに勝てると思ってるのか?究極生物だぞ。スタンドを出すまでもないぞ。あ、練習試合だからって負けていいと思ってるだろ?舐めてるだろ?」

「僕が負ける?負けていいと思ってる?おおそうじ君は一体僕と何年付き合ってきたんだい?」

「あたしの『ラッキーマン』にも勝てるっていうの?」

「しょじょさんもだよ。じゃあこうしよう。勝った奴が明日一番に好きなのを選べるってことにする?」

「……。いや、お前の負けず嫌いはよく知っている。何か考えがあるんだろう…。とりあえずそれはやめとく。ジャンケンで決める。あくまでこれは練習試合だ…」

「アムロ行きますのこういうところって不気味なのよね。あたしも同意見」

「じゃあ、バトル開始だ。『ジョジョ』を一番最初に選んだおおそうじ君の攻撃から開始。次のターンが二番目に『ラッキーマン』を選んだしょじょさん」

「お、おう。じゃあ様子見で承太郎の『スタープラチナ』でアムロ行きますを攻撃!時を止める!」

 お!お!いよいよ練習試合だが夢のバトルが始まった。正直、ルールを細かく説明されるよりも実際にやって見せてもらうのが一番分かりやすい!私も本番に備え、ナレーションという大役の準備をしておこう!

 おおそうじ君が『ジョジョ』から空条承太郎の『スタープラチナ』を選択!時を止めてアムロ行きます君を攻撃!これに対して『キン肉マン』を選んだアムロ行きます君の行動は?

「『キン肉マン』からザ・ニンジャを召喚!『順逆自在の術』で攻撃をそのままひっくり返す!しょじょさん、『スマホ判定』よろしく!」

「えっとお、『キン肉マン、ザ・ニンジャ、順逆自在の術』でいいのね?」

「そう」

「検索っと。えー、あのねー。超スピードにより技の受け手とかけ手を瞬時に入れ替える術だって」

「承太郎は拳銃の弾を掴めるんだっけ?ディオは散弾銃がスローに見えたんだっけ?」

「これは…、あたし判定では承太郎が時を止められてる状態だわね」

「え?マジで!?」

「多数決の決まりだろ?二対一で今、承太郎は攻撃をそのまま入れ替えられた。時を止められて止まっている状態だ。そのままおおそうじ君のターンは終了。次、しょじょさん」

「へえー、『キン肉マン』強いじゃん。でも『ラッキーマン』にはちょいと通用しないんじゃない?」

「『ラッキーマン』は攻撃するの?」

「まあ、無敵だけど基本相手の攻撃をラッキーでカウンターかなあ。何もしないを選択っと」

「じゃあ僕は『キン肉マン』のステカセキングを発動!『超人大全』で『ラッキーマン』を再生!おおそうじ君、『スマホ判定』よろしく!」

「『超人大全』?ステカセキングね。いたよなー。これは調べるまでもないわ。アムロ行きますは『ラッキーマン』と同じ能力のキャラを一人作り出したってことだ」

「えー!嘘ぉ!?」

 スマホで検索して愕然となるしょじょさん。

 これは私も驚いた!なるほどなるほど!

「じゃあ次は僕のターンだね。でも『キン肉マン』単独では『ラッキーマン』も『ジョジョ』も倒せないね。『ラッキーマン』を攻撃してもカウンターを食らって負けるし、今の承太郎を倒しても『ドラクエ』のザオリクで復活するだろうしね。『生き返る系』の能力をみんな選んでくるだろ?どうせ。『ジョジョ』の大きな能力である『スタンド』自体を無効にしてしまう能力は『キン肉マン』単独ではないね。あくまでも僕は承太郎の『スタープラチナ』に対してザ・ニンジャの『順逆自在の術』を使って攻撃をかわしたまでだ。理論上で相手を倒さないと勝敗はつかない。僕がこのターンでおおそうじ君を、そうだね、火事場のクソ力のキン肉マンで攻撃しようが悪魔将軍で攻撃しようが物理的な攻撃は『ジョジョ』なら簡単に防いでしまう能力がたくさんあるだろうね。ヴァニラ・アイスや『マン・イン・ザ・ミラー』あたりで簡単に封じられるかな?」

「まあ、ボスキャラや主人公クラスのスタンドを使わなくても防げるぜ。俺様は『ジョジョ』のスタンドは全て把握しているからな。それにしても…。まさか『キン肉マン』と引き分けるとは…。これはガチで六つをどう選ぶかだな…」

「あ、あたしは練習試合だからとりあえずあまり考えずに選んだんだからね」

「お、おう。俺様もだ。」

「おおそうじ君の『ジョジョ』はガチだろ?まあ、明日の『ドラフト』で獲得出来ればいいね」

「(やっぱりこいつは一筋縄じゃいかねーわ。ジャンケンにしといてよかったあー)分かんねえぜ。明日の『ドラフト』で俺様が何を選ぶかは分かんねえだろ?」

「(『キン肉マン』も調べとかないと。あっぶなーい)あたしだってとっておきがあるんだからね!」

「だろ?これは結構楽しめるんじゃない?それでさあ。勝者にはなんの特典をつける?」

「お、それ大事だよな。『ドラフト』自体おもしれえけど、勝った奴には特典がないとな」

「何か、賭けるってこと?」

「そうだね。じゃあそれぞれの『命』を懸けるかい?」

「い、命!?お前、本気か!?」

「冗談だよ。冗談。おおそうじ君の口癖でいつも言ってるじゃない?」

「『俺たち、ジョジョ立ちだろ?』か?」

 私にこれを説明させるのかー!?まあ、ナレーションなので仕方ない。これは「俺たち友達だろ」のダジャレらしい。ちなみにおおそうじ君はこういった発言が多いそうだ。他にも「早起きは十六文キック」、「人間賛歌は強制参加」、「できるやーん、デビルマン」、「水曜どこでしょう」。最近は「岸部露伴ダイエットいけるんじゃね?康一君が最初に『ヘブンズドアー』で攻撃された時に家で体重計に乗ったらめっちゃ痩せてたんだよね!」と熱く語っていた。単純なようでかなり頭は柔らかい。

「おおそうじは寒いのよお」

「うるせえー!お前は『俺たち、しょじょ立ちだろ?』」

「それもう百万回聞いたから。で、何を賭けるの?命はあり得ないけど、やる気が出るようなのがいいなあ」

「とりあえず勝った奴の言うことをそれぞれが一つ聞くってことでどう?」

「まあ、その辺が妥当かな。俺様が勝てば…。フフフ…」

「えー、エッチなことはやめてよねえ。あたしはフォーエバーしょうじょなんだから」

「う・る・せ。お前相手にムラムラするかあ!」

「まあまあ、じゃあそれでいいね。勝者の言うことを敗者は一つ聞くってこと。じゃあ『ドラフト』は明日ってことで。ルールは大体分かったよね?」

「『多数決』と『スマホ判定』だろ?まあズルはしねえよ。ってか、これはいかにズルをするかってバトルだな」

「そういうこと」

「りょうかーい」

 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。運命の『ドラフト』を明日に控え、普通のようで普通じゃない三人の十七歳の高校生がいつものようにアムロ行きますの机から散らばっていく。

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