14 さぁ、これからどうしようか





「あれ、信太?」


 名前を呼ばれて後ろを振り向くと、そこにはあのソルがいた。


「ん?あれ、ソルじゃん!え、知り合いだったの、シンタ……ってあれ、いない?」


 隣にいたライアンがソルを見ながら、俺に問いかけた。が、俺は既にライアンの隣ではなく、ソルに詰め寄っていた。


「ソ~~~ル~~~~!!」


 俺は般若のような形相でソルを睨み付ける。


「やだな~どうしたの、信太♪あ!そう言えば、どうだった?僕の元気モリモリ精r……モゴ…… 」


「あ~あのドリンクね?栄養ドリンク!うん、とっても良かった良かった!むしろ、効き目ありすぎってくらいだったわ!」


 俺はソルの口を押さえて、大きな声を出してソルの発言を遮った。そしてソルに対して、小さな声で耳打ちをした。


「ちょ、ソル!!余計なこと言わないでよ!」


「え~ごめんごめん。それで、結局はどうだったの?誰かをムリヤリ襲……」


「ってないから!」


 思わず俺は大きな声を出して、再びソルの言葉を遮った。ソル、全然ごめんって思ってないでしょ!?


「どうしたんた?」


 俺たちの後ろでライアンが首を傾げた。ソルは顔を背けて口に手を当て、笑いを堪えながら肩を震わせている。


「あ!もしかして、シンタもソルの特製ドリンクを飲んだのか?」


「ぅえ!?信太#も__・__#って……も、もしかしてライアンも飲んだことあるの?」


「おう!俺もソル特製筋肉ハッスルドリンクを飲んだことあるぞ!なんだか前よりも筋肉が引き締まった気がするぞ!」


 ライアンはそう言って、二の腕の筋肉を見せびらかした。


「な、なんだ……そっちか。え、てかソルって……そんなドリンクも作ってるの?」


「うん。まあ、なんか……色々だよ☆」


 ソルはそう言って、爽やかな笑顔を俺に向けてきた。なんかこの爽やかな笑顔に恐怖しか感じないんだが、どうゆうことなんだ。おい。


 俺がそんな風に怪しんでいると、ソルはなにかに気が付いたように、俺の顔を突然じっと見つめてきた。


「え、ななに?なんかついてる?俺の顔?」


 そう聞くと、ソルは俺の顔をペタペタを触りだした。


「……?!ちょ、っ?!?!な、なななに?!」


「……なんか今日……いや、昨日も少し思ってたんだけど、僕のドリンク効きすぎたせいかな。もしかして寝不足だったりする?」


 ソルが少し真面目な顔で聞いてきた。


「あぁ。まあ……そのドリンクのせいでもあるけど。最近、変な夢のせいで寝不足が続いてるってのもあるかも」


「変な夢?」


「うん、なんていうか……どこかで溺れる夢っていうか……なんか息苦しい感じの夢?かな」


 ソルは俺の言葉を聞くと、なぜか顔を曇らせた。ライアンは腕を組んで、不思議そうな表情を浮かべてして口を開いた。


「う~ん、何でなんだろうな?」


「さあ~……まあ、大丈夫だよ!」


「………」


「……ソル?」


 なにか思い詰めたまま黙っているソルに、俺は声を掛けた。しかし、ソルはすぐにいつもの笑顔に戻った。そして、大きなバックの中から青い小瓶を取り出した。


「これ、試供品だから少ししか入ってないけど、あげるよ。安眠剤。今日寝る前に飲んでみて」


「え、あ、ありがとう!いや……待って。これ本当に安眠剤だよね?」


 俺は思わずソルに訊ねた。俺はもう同じ過ちを繰り返したくないんだ。


「ははっ、今度はちゃんとした薬だよ。はい、どうぞ」


 ソルはそう言って、青い小瓶を俺に手渡した。


「ありがとう。でもなんで薬なんか持ち歩いてるの?」


「今日はブランさんにこの薬を届けにきたからね、営業も兼ねてだよ」


 そう言って再び大きなバックから、白いチューブに入った塗り薬を取り出した。チューブには「腰痛!すぐ効く!すぐ治る!」と書かれていた。


「おお!!これだよ!これ!最近特に酷くてな……いつもありがとな、ソル!」


「いえいえ。あ、良かったらさっき信太に渡した安眠効果のある薬も、ぜひお試しください。これ試供品です」


 ソルはそう言って、俺のと同じ青い小瓶も白いチューブと一緒にブランさんに手渡した。


「おお!ほんとありがとうな、ソル!」


 ブランさんがそう言って、ソルの前で涙ぐみながら拝み始めた。


「ソルの薬は、白魔道師の中でも一番効くからな~」


 ブランさんがソルに拝みながらそう言うと、ライアンも腕を組みながら、ウンウンと頷いた。ソルってそんなにすごい奴だったんだな。


 その後、俺はショットガンなどの代金を払い、3人とも武器屋を後にした。



 ******



「いや~良かったなー!シンタもやっと、武器が手に入ったな!これでいつでもダンジョンに行けるぞ!」


「ははっ、そうだな」


「あ、なんならこれから行ってみる?ダンジョンに」


 ソルはそう言って、ダンジョンの方向に指を差した。


「いやぁ~今日か……どうしようかな……」


「まあ、初めて行くなら誰かと一緒の方がいいよね」


「うんうん。あ!でもこの後、姫様の護衛があるから今日はちょっと行けないな……別日にあらかじめ言ってくれれば行けるぞ!」


 ライアンはそう言って、俺に親指を突き出した。


「そうなんだ。まあ、ライアンがいたら安心だよね。モンスター全部薙ぎ倒して行きそうだし。僕も治癒魔法が使えるから、行くときは誘ってよ」


 ソルはそう言いながら、俺に微笑みかけた。


「誘う誘う!今度、3人で行こう!」


 なんだかダンジョンに行くの楽しみになってきたなぁ。俺がそんな事を考えながら歩いていると、どこか見覚えのある姿が目に入ってきた。


「あれ、リリィ?」


 と、友達なのかな?知らない女の子と一緒にいる。


 ん?もう一人……黒いローブを羽織った男に、リリィが絡まれてるような様子だ。リリィが迷惑そうな顔を浮かべている。てか、あの赤髪に赤い瞳の男どっかで見たことある気が……あ!!


 俺は急いで、リリィの元へ駆け寄った。


「あ、おいシンタ!?急にどうした!?」


 俺の後ろでライアンが叫ぶ。


「……っおい、何してるんだよ!嫌がってるじゃないか!」


 俺はライアンの言葉を無視して、黒いローブを羽織った男の肩を掴みながら睨みつけた。


「あ?なんだおめぇは?」


 俺に肩を捕まれた男は不機嫌そうに振り返り、俺を見下ろすように睨みつけてきた。俺よりも背が高いせいか、威圧感が半端ない。それに血のように赤く光る瞳が威圧感を増長させている。


 睨みつけてみたものの、俺そんなに喧嘩強くないんだよな……でも、リリィが嫌がってそうなのにほっとけないし。


 必死に睨み付ける俺だか、実はもう、足が若干震え始めている。な、情けねぇ。


 さあ、ここからどうしようか__



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