第4章 ろくばんめのつばさ_その4


    〇


 これは正しい行いだったのだろうか。慣れない手つきでハンドルを握りながら、フィリスは何度も自問自答する。助手席と後部座席ではミソギとアッシュが転がっている。

「ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」

 くくり、マスター、ウェイトレス。三人を置き去りにしてしまった。

 オートマチックのレイスは、慣れさえすれば運転そのものは難しくなかった。幹線道路に乗り、とにかく安全な場所を探す。

 そういえばカーナビとかは無いのだろうか。土地勘がまったくないフィリスはどこへ行けばいいかもわからない。思いつくままにナビのタッチパネルを操作していたら何をどう間違えたのかカーラジオを付けてしまう。

『──速報、速報です! ヤードセールのトップから今、驚きの発表がありました! あっ、わたくしDJフルソマですどうも皆さんこんばんは!』

 いきなり男が騒ぎ立てる。何かと思えば、ミソギがひいにしているラジオのようだ。なんでもとうきようのローカルニュースを取り扱う情報番組のようで、報道の早さには定評があるとか。

 慌てふためくDJの話を聞いて、フィリスはがくぜんとした。

「……なに、それ」

『えー速報はとりあえず以上です。すぐに正式に情報が出るとか。まるで西部劇のような出来事ですが、彼らはとんでもない悪人だとかで──』

 ネオンがまたたく光の街。街頭のデジタルサイネージは画面いっぱいに独立放送局テレビとうきようの情報番組やCMを踊らせており、レイスが走り抜ける中で突如、待ち構えていたようにすべてのチャンネルを変えた。

 映し出されたのは、二人の男の顔だ。

 この戦いの直後から、とうきようじゅうの掲示板や街頭モニター、クローズドネット上などにとある手配文が掲載されることになる。内容は以下の通り──




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