第3話(改)
納屋のリフォームは二ヶ月ほどで完了し、あの今にも潰れそうだったオンボロ小屋が見違えるようになった。納屋の二階は予定通り住居になりLDK+寝室の間取りになった。風呂は二階に作れず一階にシャワールームとなったがそこは仕方ない。トイレが別なだけマシだ。
正月に間に合わせてくれたのはありがたかった。新年を仮住まいにしていた母屋横の広いだけで何も生活設備のない離れの小屋で迎えるのはホントご勘弁だったから。年末年始とはいえこれといったイベントは全く無いから、気分的な問題でしかなかったけれど。
物置小屋の方は潰して、代わりに中古の12フィートコンテナを置いた。コンテナの外見は結構サビも目立ち使い古された様相だけれども、内部は購入前にベニヤを貼り直してくれたのでとてもきれいだった。大学時代に頑張って働いて買った愛車のガレージとして使っている。そのうち車に合う外見になるようコンテナの方もペンキとか塗ろうと思う。いつやるかは未定だけど。
母屋の方はまだまだかかるようで、あと二ヶ月ぐらいは見てくれと大棟梁に言われている。母屋の築百年近くって古さだし、おかしな増改築もあるみたいなので時間がかかるのは仕方ないだろう。
まあ、取り敢えずガラクタを処理していく手立てができたのだから御の字と言えよう。
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「マコト。ネットオークションってどうやるん?」
母屋リフォームに来ていて、休憩中の慎司が聞いてきた。
「それがよくわかんないんだよな。いままでそんな事やったこと無いし」
店を開くにあたっては、事業の届けを税務署に出したり警察署で古物商免許取得したりの細々とした手続きを納屋のリフォーム中に終わらせておいた。
幾つかのオークションサイトのアカウントまでは作ったのだが、いざ販売となるとどういう写真が映えるのかとか、どんな文章書けばいいのか、わからなかった。今更ながら自身の無計画ぶりに呆れる。
自分でも気づかないうちにかなり思考が散らかっていたようだ。
「全然だめなやつじゃね?」
「ああ、言い返すことができないな。オークションの指南本とかは結構読んでいるんだけど、小手先のテクニックじゃ売れそうにないしな」
何かを考えるように上を見たり下を見たり、目を瞑ったりと慎司が突然変な動きをして、
「なあ、まみ。あれ、あいつ。えっと、大槻さんちの坊主。あいつパソコンとかうまいんじゃなかったか?」
「まみ」と声をかけられていたのは、休憩のお茶くみに来ていた慎司の奥さん、北上まみさん。慎司とは同い年だったはずで、二人の間には未来ちゃんという二歳の女の子がいる。
「大槻さんちの子? 名前はごめん、わかんない。けど、パソコンとかは得意だったよ。うちの事務所のインターネットがつながらなかったとき直してもらったことあるし」
まみさんもうろ覚えだったようだが、大槻さんちの子が有能らしいことだけはわかった。
「そいつ、バイトで雇ってみたらどうだ?」
と慎司は提案をしてきてくれた。
いいことを聞いた。
自分でできなきゃ出来るやつを雇ってマネジメントすればいいんだ。なんでそれに気づかなかったのか。
おお、我が友よ! って、抱きついて慎司にお礼をしたら、まみさんになんか冷めた目で見返された。なんで?
ともあれ早速、俺は大槻さんちを訪れてみた。
「こんちは〜、お邪魔します、大槻さん。柊木です。」
「うわっ、マコトちゃん。ひっさしぶり〜家出て東京の方で結婚したんじゃないの?」
会っていきなり聞かれたくないことを大槻さんちの奥さんに聞かれたよ。
ざっくりと自身に起きたアレコレの経緯を説明して奥さんに涙ぐまれたあと、本来の要件を告げる。
「大翔? 居るよ。呼んでくるから、ちょっとそっちで待っていて」
ウワサの彼は
大槻さんちの縁側でお茶とお茶請けの漬物を頂きながら待っていると、高校生くらいの男の子がやってきた。ガタイのいいイケメン。どうでもいいけど。
「こんにちは、マコトさん。なにか御用ですか?」
話してみると、大翔は市内の学校に通う一七歳、高校二年の学生さん。慎司の言っていた通り、彼はインターネットに詳しく、将来もそっちの道を目指しているそうだ。世間話もそこそこに、さっきのバイトの話を相談してみる。
「面白そうですね。俺で良ければバイトさせてください」
おお!早々にバイト確保! 幸先がいい。
このあと大翔の部屋に行って、善は急げとばかりにweb販売するのに必要な機器を彼に教えてもらいながら買った。なんだかんだで数十万円の出費があったけど仕方ない。
仕事に使う道具に
「マコトさん。あ、あともう一つお願いがあるんですけど……」
大翔は突然落ち着かなくなってもじもじし始めた。
なにか大切な事があるのか? 労働環境はまだ良いとは言えないからなぁ……
あ、必要なものがもっとあるのか?
「ん? ここまで来たら何でも必要なもの買うよ」
「い、いや。買い物ではないのですが……」
「なんだよ、歯切れが悪いな。何でもいいぜ。言ってくれ」
「もうひとり、雇ってもらえませんか?」
大翔はもうひとり雇ってもらいたいということだったが理由と誰かあてがあるのかも聞いていく。
「それはそうだな。独りあそこで仕事するのも寂しいしな。俺もずっといるわけじゃないし」
「……えっと、そうではなくてですね……」
なんとも煮え切らない応答をする大翔。おっと、やっぱり何かあるのか?
「えっ、違うの? もうさ、はっきり言えよ、大翔!」
観念したというか、意を決したというかやっと何が目的なのか話してきた大翔。
大翔は編集やホームページ用の素材加工などは得意なのだが、そもそもの写真を撮ることが下手らしい。
だから、写真を撮るセンスのいい人が自分とは別に居てほしく、それで彼の知り合いを是非とも推薦したいとのことだった。
ソイツの写真は結構な人気らしい。Twitterのフォロワーが千の上いるだそうだ。それがどれくらいすごいのかはSNSやらない俺にはわからないけど。
「大翔が推薦してくれるならいいんじゃないかな。その彼は明日とか日曜日だし、面接に来られるかな?」
「おお、女の子で、す。その子は……」
「あん?ああ、大翔の彼女か」
「ち、違います!ままま、後藤田はそんなんじゃないです。友達ですっ」
大翔耳も頬も真っ赤っかである。わかり易い。
「アオハルかよ……」
彼女には明日、店の方に来てもらうように大翔に連絡してもらった。
さっき注文した機材とかも明日には大半が届くみたいだし、セットアップとかもついでにやってしまおう。
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