第21話 あなた、どちら様?

「相良さん‼」

「なんだい? 花田刑事」

「どういうつもりです」

「なにが?」

「霧島 霧子の遺体を押収したことです‼」

「うん、そのことか…そっちか…」

「そっち?」

「いや、なんでもない」

「なんの権利があって遺体を回収したんですか?」

「権利は知らないけどさ…意味が無いわけじゃ~ない」

 スッと胸ポケットから1枚の写真を取り出した。

「今時、写真ですか…」

「そうだ、データだとマズイんでね…アナログの方が機密保護には向いている」

「この女性? どこかで……あっ‼」

「そうだ…アリス・クーパー、腐らない遺体と言ったほうが理解しやすいだろ」

「似ていると思わない?」

 親指でクイッと棺桶を指す相良。

「霧島 霧子…」

「嘘くさい名前だと思わないか? 偽名…というか戸籍も定かではない遺体、彼女…何者なんだろうね?」

「身元不明…ってことですよね?」

「辿れば、そうなるけど…辿れそうにないような気がしてね」

 花田が棺桶の窓を開ける、死化粧を施された整った顔の女性。

「よく見てみなよ花田君、彼女…何人だと思う? いや日本人に見えるかい?」

「……いや…まぁ…言われれば…まぁ日本人…ハーフかな?」

「アリス・クーパーはイギリス人だった…霧島 霧子は黒髪だし…まぁ…似ているような気がするってだけなんだけどさ」

「同一人物ってのは。無理があるんじゃないですか?」

「うん…だけどね~」

 相良が頭をガリガリと掻きむしった。

「なんです?」

「面白いもの見せようか?」

 ヘラッと笑う相良。

「コレ…押収した霧島 霧子のスマホなんだけどね…不思議なことに…アリス・クーパーの顔でロック解除できるんだわ」

「はっ?」

「不思議だろ?」

「はい…というか、どうして、そんなこと試したんです? 相良さん、そっちの方が不思議ですよ」

「うん…このスマホね…押収して中を確認したんだ、するとね彼女…霧島 霧子はアリス・クーパーが行方不明になった日…行っているんだ…龍神池にさ」

「龍神池…」

「何かあったんじゃないかな~」

「あの池で?」

「うん…あるいは…行ったんじゃなくて…来たのかもしれないんだけどね…」

「あの鏡ですか?」

「あぁ…手に余る代物なんだよな~アレ」

「霧島 霧子…どこからか来た異邦人ってとこですか…」

「異邦人…異星人ってオチはないよな~」

 ヘラッと相良が笑う。

「宇宙人ですか…可能性は0ではないですよね~」

「関わりたくないもんだね…」

「もう…無理な気がします、手遅れって感じです」

「霧島 霧子、宇宙人説はともかく、過去からの異邦人なんだろうな~たぶん」

「未来からではなくて?」

「あぁ、あの鏡は過去には遡れない…あくまで時間をジャンプするだけの転移装置だからね」

「それだけでも充分に持て余しますけどね」

「そうなんだよな~」


(まったく…)

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