第7話 怒りで人は強くなる…ってか

 ブンッ…

 鈍く空気を斬る音、JCが躊躇いなく振り切ったゴルフクラブは空振った。

 オニィが後方に飛び退ったからだ。

「チイッ…」

 舌打ちするJC

 JCが場を荒らし数秒後の混乱を察したドライブがタイプ2へ乗り込む。

 4秒後…

(大混戦だな…おい)

 レーダーが海兵に囲まれ、足元にはブッシがしがみ付く様にしゃがんでいる。

 少し離れたところでオニィとJCが殺り合っている。


 ズザザザ…

 タイヤを焦がすほどに車体を横滑りさせてタイプ2がレーダーの真横に滑り込む。

「無茶するね…おい…」

 当然のようにレーダーを囲んでいた海兵が数名、跳ね飛ばされる。

「ホント…無茶するね」

 助手席に乗り込んだレーダーがドライブに向けて肩をすくめる。

 ガラッと乱暴にサイドドアを開けてブッシが転がり込む。

「生きた心地がしなかったぜ」

 額の汗を拳で拭ってパッパッと払う。

「死ぬ前にしか味わえない感覚なんだがな…と…後はアレか…」

 レーダーがオニィと交戦中のJCを指さす。

「むしろ、押してるんじゃねぇか」

 ブッシがコーラを飲みながら後部シートにドカッと座って観戦モードに入った。

 ポップコーンでもあれば、劇場でアクション映画を観ているようだ。

「武器を持っているぶん、有利なんだろう…けどな…」

 ドライブはJCを回収するタイミングを計っている。

「にしても…心が痛むわな~」

 レーダーが煙草に火を点ける。

 当然、車を停車している状況ではない。

 海兵を跳ね飛ばしながら、タイプ2を操っているドライブ。

「残りは…大佐だけか…」

 真正面からタイプ2を大佐に突っ込ませる。

「Who do you think I am?俺を誰だと思っていやがる?

 サー・イェッサー大佐は両手でタイプ2を受け止める。

「化け物だな…おい」

 ドライブがアクセルをベタ踏みする。

 ジリジリと押してはいるが、大佐の表情には余裕が伺える。

「均衡を崩せばいいんだろ?」

 後部シートのブッシがレーダーにコーラを渡す。

「そういうことだな」

 レーダーが受け取ったコーラを思いきっり振る。

 助手席から身を乗り出してレーダーはコーラを大佐に向ける。

 ブシュッ‼

 勢いよく噴き出すコーラが大佐の顔面で弾ける。

「Shit! 」

 大佐が思わず両手で顔を覆う…当然のように…

 ドムッ‼

 大佐は跳ね飛ばされ崖下に消えた。

「さて…後はアッチなわけだが…」

 少し離れたところで、乱打戦を繰り広げるオニィとJC。

「割って入る度胸はねぇな~」

 レーダーが頭をガリガリと掻く。

「アレだけ強けりゃ…なんで逃げてたんだ?」

 ドライブがハンドルに顎を乗っけて不思議そうな顔でJCを見ている。

「1対1なら…逃げなかったのかもな」

 レーダーがボソリと呟く。

「どういう意味?」

 ブッシがレーダーに尋ねる。


(怒りで人は強くなる…ってか)

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