Student War

あっきー

第1話 始まりの日

輝、見てごらん。

この地図に載っている4つの島があるだろう?

周りの小さい島々と合わせて、昔は1つの大きな国……そうだな、大きな学園都市みたいなものだったんだ。


今、また争いの絶えない世界になってるけどな、俺はいつかたくさんある学園都市を統一して平和な世界を作りたいと思ってるんだ。


そんな世界をお前やお前の子孫たちにも残してやりたいからな。


父親はよくそう言っていた。

父親もまた学園の軍人だった。


その勇猛さは遠く離れた学園都市にも伝わるほどで、志も高く素晴らしい人間だった。


しかし、その父親も先の大戦闘に出征して亡くなった。


詳細はわからない。

だが、断片的な証言をつなぎ合わせると、陣を張っていたところを何者かに急襲されたようだということは分かった。

若い子達の逃げる時間を稼ぐ、とか何とか言って所謂殿のようなものをし、多勢に無勢。死んでしまったようだ……


あれから5年。

家にある仏壇に手を合わせる。

フォトと呼ばれる機械で生前に撮った写真を飾っている。


学園が発明している文明の利器は素晴らしい。

父親の生きていた頃の姿をありありと保存してくれている。


そんなことを思いながらカバンを手にして家を出る。


坂道を駆け上っていく。

長かった寒い冬が過ぎ、多くの生き物たちが顔を出し到来を喜ぶ春である。


春の朗らかな陽気の中、坂道を駆け上がる。

ここ、三緑市は三緑学園を中心として形作られた学園都市である。


2000年代のテロの脅威、

2020年代の疫病の脅威、

2040年代の共産主義の脅威、

2060年代の過去にない経済危機、

2080年代の軍拡競争。

度重なる政情不安に対処してきた国際連合も、経済危機の頃には組織が形骸化した。

ついには軍拡競争、侵略主義の隆盛を抑えることができず、

2100年、ちょうど400年前に第三次世界大戦が勃発した。


2100年に起きた第三次世界大戦は2次元でのサイバー攻撃、3次元での新兵器使用による攻撃が使われて、

各国の経済、インフラ、行政は完全に破壊される。


歯止めが効かなくなった各国は文明を破壊するレベルにまで争い続け、犠牲者は50億人を超えた。


戦死したもの、自殺したもの、餓死したもの、兵器に殺されたもの。


死屍累々とした状況であった。


そんな中生き残った人の多くは、戦地に送られず、所謂内地にて研究をしていた学者たち。

そして、徴兵されなかった子供たち。


学者たちは文明を復興させるために様々なものを開発していった。


また世界中で数多くの学園を作った。


教育こそが平和を作る第一歩だと信じて。


三緑学園はその初期に作られた7つの学園のうちの1つである。


学園の数は次第に増えていった。


調べによると現在ではおよそ100の様々な規模の学園があるようだ。


それぞれが、多くの人口を抱えるようになり町が形成されていく。

俗に言う学園都市だ。


そうなると各都市が食料や限りある資源を求める。

都市ごとの共同体意識も強く、多くのいざこざが起きる。


こんなことが積み重なり、ついには争いに発展する。


この繰り返しで、今100ある学園都市は互いに抗争を繰り広げている。


ーーーーーーーーーーーーーー

2500年度三緑学園入学式


そう書かれた看板が目に入る。


緑が生い茂る丘の上。

春風の吹き抜ける小道。


校門をくぐると傍に大きなーー樹齢何百年もの木なのだろうーーがある。


プレートには、先の戦火にも焼かれずに生き延びた木だと書いてある。


500年前には普通に存在していた種のようだか、今生えているのはこの一本だけだそうだ。


「何の種類に分類すれば良いかもわからずただ御神木のように唯一無二の存在として扱っておるのじゃよ」


振り向くと髭を伸ばした老齢のおじいさんがいた。


「あなたは?」


「なに、通りすがりのものじゃよ。

君は今年の入学生かい?」


「はい!!

安藤輝っていいます!!」


「安藤家の輝くんか……そうか、あいつ、君くらいの歳の子がいると言ってたな……」


「父とお知り合いだった方ですか?」


「ああ、そんなところじゃよ。

それよりほれ、早く行かないと入学式が始まるぞ?」


時計の方を見ると、入学式が始まるまであと10分ほどしかなかった。


まずいっ!!!


おじいさんの方に軽く礼をして式場である体育館に急ぐ。


入学早々遅刻は良くない。

悪目立ちしてしまう。


そんなことを思いながらかけて行った。


途中に見える広大なグラウンドの奥には去年までいた学園中等部。


高等部に進学するわけだが、こちらの丘の上の方に来たのは初めてなのである。


見える景色の広さに、上級生となったことを感じながら走る。


体育館には多くの人が集まり、そして、たくさんの旗がかけられ、祝福ムードである。


その人混みをかき分けて入学生の席へと向かった。

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