第26話 邪神
「無礼者! ここをどこだと思っている!」
俺様が玉座の間っぽい部屋へと入ると開口一番、王らしき者の正面に立っていた偉そうな50くらいのジジイが喚くように言ってきた。
「無礼者? ジジイ、まさかとは思うがそれは俺様に言ったのか?」
どう考えても俺様に言ったように見えたので俺様が一応確認の為に尋ねると偉そうなジジイは再度喚きながら俺様を睨みつけてくる。
「当たり前だ! ユーディーン陛下の御前だ! 今すぐ頭を——」
「——よい。ベルゼス」
「いや、しかし陛下」
「よいと言っている。余の言葉が聞けぬというのか?」
俺様がここの連中は喚かないと会話ができないのかと思う中、玉座の前に立つ見るからに王っぽいやつがジジイの言葉を遮った。
言葉使いとジジイの反応から見て、このユーディーンとかいう王っぽい奴がやっぱり王なのだろう。
あの馬鹿王子ルシードと同じ金髪でどことなく面影があるような気もしなくもないので多分間違いない。
偉そうなジジイを黙らせたユーディーンは俺様へと視線を戻す。
「それでここに来る途中に騎士団の者達がいたと思うが騎士団の者はどうしたのだ?」
「ん? あぁ、あのよわっちい連中の事か。うるさかったが今は眠っているぞ」
俺様がここに向かう途中、奇声を上げながら俺様に挑んできたので無礼な連中がいたので多分そいつらの事なのだろうと俺様はそうユーディーンに返した。
俺様のそんな言葉の何が面白かったのかユーディーンは小さな笑みを浮かべこう言った。
「くくっ、よわっちかったか。あれでも我がドレアス軍の精鋭なのだがな。レイに勝ったという話を先程聞いたのだがそれも本当の事か?」
「ん? あぁ、剣聖の事か。まぁまぁ強かったが、偉大なる勇者である俺様の敵ではなかったな。まぁ魔法を覚えればもう少し使えるようにはなるだろう」
剣聖がまぁまぁ強かったのも事実だし、俺様の敵ではなかったのも事実だ。
今はたいして使えないが、魔法さえちゃんと習得すればかなり強くなるのも間違いないだろう。
まぁそれでも俺様のような偉大過ぎる勇者に届くことは一生ないのだがな。
俺様の言葉を真実と受け取ったのかは分からないが、ユーディーンは更に俺様に疑問を投げかける。
「……そうか、レイが負けたか。それで貴様の本当の目的はなんだ? 余を殺しに来たものとばかり思っていたが、未だに余の話に付き合っているという事はそれが貴様の目的ではないのだろう?」
そりゃそうだ。
何が楽しくてそんな面倒な事をせにゃならんというのか。
俺様じゃなくても単純に王を殺すだけの目的でここまでやってきたのなら、とっとと実行に移していなければおかしな話である。
流石にそれが分からないほどこいつは馬鹿ではないようだ。
とはいえ、察しが悪すぎて俺様は少し違和感を覚えるが、別にそこまで急いでいるわけでもないのでじっくり説明してやる事にした。
「これからやってくる悪魔共の話とそれを撃退した時の報酬についての交渉に乗ってやろうと思ってな。あとはついでに挨拶と言った所だな」
主な俺の目的を伝えるとユーディーンはなぜか不可解そうな表情で俺を見返した。
この期に及んで惚けているのだろうか?
「本当に何の話だ? ドラゴンならまだしも悪魔だと?」
何を言っているんだ? と言わんばかりにユーディーンはそんなことを言う。
話がユーディーンまで言っていないかと俺様は周囲にいる臣下らしき奴らにも視線を向けながら更に続ける。
「あの駄女神から聞いていないのか?」
「ダメガミ?」
「そうだ、女神リティスリティアが教会に伝えおくと言っていたが?」
ここまで言ってもユーディーンは何もピンと来ていないのかただ俺を不思議そうな表情で見つめるばかりである。
そんな中、ユーディーンの臣下の一人が俺様に驚愕の表情を向けながら一歩を踏み出したかと思うとこんなことを言いだした。
「き、貴様、なぜその名を……?」
その男は臣下らしき者達の中でも一際年老いた老人だった。
どうやらボケて大事な報告を王であるユーディーンに上げていなかったようである。
そんなジジイにユーディーンは興味深そうに問う。
「エンデ、何か知っているのか?」
これでようやく話が始められそうだと俺様はエンデと呼ばれたジジイとユーディーンの会話を眺めようと決めたその時エンデが大きな爆弾を投下した。
「……えぇ、知っておりますとも。陛下、この者の話を聞いてはなりません。リティスリティアはかの邪教団が崇める邪神です」
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