第7話 ようやく始まる異世界転移
「それで話はうまく言ったのかな?」
リティスリティアは俺様にそう言って次にセラの方を見た。
「お姉さんはいいのかな?」
「はい、可愛……女神様の御頼みなら断れませんから。報酬も最低限頂いて、悪魔討伐後に教会などでお仕事でも頂けたらそれで結構です」
「そっか、じゃあ準備はいいかな?」
「あぁ、すぐにでも飛ばしてくれ」
俺様がそう言うと、リティスリティアはまたよく分からない呪文を唱え始め、エメルとセラを呼び出した光輝く魔法陣を作りだす。
その様子をエメルは舐めるように見ているが恐らくアレは真似してどうにかできるレベルの魔法ではないと俺様は直感で思った。
「あ、そうそう、いきなり町に転移させる訳に行かないから町の外に転移させるよ。北に3キロほど行けば王都が見えると思うからそこで王に会ってね。もう教会の者には全て話しておいたから」
「おぅ、それは話が早いな。それでその国はなんて国だ?」
「ドレアス王国、世界最強の軍事大国だよ」
「ドレアス王国ね」
世界最強の軍事大国ということは単純に一番兵士が多い国という事だろう。
魔法がない剣と槍のみの戦いならば圧倒的に数がモノを言う。
もちろん戦術や一人の強者が多少の不利を覆すこともなくはないが、魔法のように一撃で千の敵を倒せるわけではないのだからな。
まぁ俺様のような英雄がいるのなら話は変わってくるが俺様クラスの英雄などいるわけがないので考えるだけ無駄なのだ。
なんにせよドレアス王国がその異世界の中では兵士を多く有する国であり、兵士が多いという事は単純に考えればそれだけ人口が多い国だということ。
つまり、それだけ税を納める国民が多いから国家予算が潤沢にあるということになる。
とはいえ、俺様としてもドレアス王国一国に報奨金を払わすつもりは俺様には毛頭ない。
それではドレアス王国だけが負担を負う事になってしまい、不公平となってしまうからな。
その世界にある国々が世界を救う勇者に与えるに相応しいと思う報奨金少しずつ出し合ってもらえれば俺様はそれで満足なのである。
ドレアス王国には俺様に支払う報奨金の各国の負担額の分配決めと集金もやってもらう。
弱小国じゃ他の列強国に対して中々交渉がうまくいかないだろうからな。
そういう意味では強国だというドレアス王国は俺様がまず交渉する相手としてはうってつけと言えるのだ。
俺がそんなことを思っているとリティスリティアは少し困った表情で俺を見る。
「まぁ程々にしといてね」
「何の事だが分からんが了解だ。ではちょっくら異世界を救ってくるとするか」
その言葉を合図に俺様達3人はリティスリティアが作り出した異界転移門の中へと入って行くのだった。
そして、気づくと俺様達3人はまたも見知らぬ平原に立っていた。
「どうやらついたようだな」
「みたいね」「みたいですね」
一瞬の内に行われた異世界転移だったが、何度やっても何とも言えない驚きがある。
エメルも似たような感じを受けたのか前回のように喚き散らす事はないが、自身のツルペタな体を見回したり、あちこちをキョロキョロと見渡したりしていた。
それとは対照的にセラは前回のように目の前に美少女がいないからか落ち着いた様子である。
「今更ですけど北ってどっちなのでしょうか? いきなり飛んで来たので方向感覚が全然わかりませんね」
確かに言われてみればリティスリティアは北に3キロと言っていたが、いきなり見知らぬ土地に飛ばされてどちらが北かなど分かるはずがなかった。
コンパスを持っていたとしてもこの世界で使える物なのか分からないし、それ以前に魔界で狂いに狂いまくるそんなゴミを俺様達が持っているはずがない。
「あっちじゃない?」
エメルはそう言って地平線を指差すが、高低差があるのか町らしきものは見えない。
「ほぉ、根拠は?」
「魔力がいっぱい集まっているから。距離的にもそれっぽいし、合ってるでしょ、多分」
エメルに言われて俺様も魔力探知をかけてみると確かにエメルが言う方向に多くの魔力が集まっているのが分かる。
恐らくエメルの言う通りあそこに町があるのだろう。
「魔法が使えないと言っても魔力はあるんだな。ゴミに等しいから気づかんかったぞ」
「……アンタ、異世界にまで来たんだからこれを機に口の悪さ治したら?」
「馬鹿め、これは俺様のような強者だけに許される覇者の言葉遣いだ。2年も俺の手下をやっていてまだそれが分からんか?」
「……うん、そうね、(アンタに期待した)私が間違ってたわ」
何やら間が合った気がしたが、理解できたならいいだろう。
手下どもの間違いを正すのも偉大過ぎる勇者たる俺様の役目なのだからな。
俺様とエメルがそんなやり取りをしているとセラが俺に話しかけてきた。
「あのー、アッシュ様」
「ん? どうした? セラ」
「あそこにいるのは現地の方でしょうか?」
どうやら、セラは記念する第1異世界人を発見したようである。
俺様がセラの言う方を見ると、確かに街道のようなものが見え、そこには1台の馬車と複数の狼らしき魔獣に囲まれている1人の人の姿があった。
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