第4話 俺様の異世界手下召喚
お互いに納得できるいい交渉だった。
リティスリティアは異世界を俺様に救ってもらえるし、俺様は2人の手下を得る。
まぁよくよく考えれば俺様ならば容易いとはいえ異世界に人間1人を送り込んで「世界を救え」などとは頭がおかしいとしか言いようがない話である。
普通の人間ならば発狂してもおかしくはない案件だ。
そういう意味ではリティスリティアは最善の選択をしたのだろう。
俺様以上に強く、俺様以上に人々を思いやる人間などどんな世界を見渡したとしても存在する訳がないのだからな。
そんな事を思いつつ俺は何やら一人佇んでいるリティスリティアの後ろ姿を眺め見る。
今なら背後からサクッと一撃殺れるんじゃないだろうか?
まぁ成功したとしても失敗したとしてもロクな未来が待ってなさそうなので、実行には移さない。俺様は利口なのである。
「そんなことを考えている時点で利口とは思えないけどなぁ」
俺の思考を読んだのかリティスリティアは振り返ることなくそんなことを言う。
ふむふむ。姿が見えなくてもリティスリティアが人の心を読むことができるらしい。
まぁ特に役に立ちそうにない情報だが。
リティスリティアは俺様にそう言った後、ブツブツと何かを唱え始める。
これが俺様をこの異世界の草原に呼んだ例の魔法かと思い、耳を澄ませて聞いてみるが、言語自体違うのか何を言っているのか俺様にはさっぱり分からなかった。
そして数秒後、リティスリティアの前方の地面が突如として光出す。
それは巨大な魔法陣だった。
巨大な魔法陣は更に一際大きな光を放ち俺様の視界を遮った後、光と共に魔法陣は消え去った。
そして、その代わりに残ったのは俺様が見知った2人の女共だった。
「なによぉぉぉ! これぇぇぇ!」
そう状況が理解できず見苦しい叫び声を上げた色々とちまっこい赤髪女が賢者エメル。
それなりに魔法が使えるのでいろんな場面で重宝した女だが、金に意地汚い守銭奴だ。
それにしても仮にも俺様の手下だった者がなんとも情けない限りである。
俺様のようにスマートには出来ないものだろうか。
一方、もう一人の女は目の前にいるリティスリティアに気付くと、何の警戒心もなくリティスリティアへと駆け寄っていき——。
「きゃー! なんですの! この子! こんなかわいい子が世界に存在したなんて!」
そんなことを叫びながらリティスリティアの慎ましい胸に顔を埋めて、スーハースーハ—と俺様の所まで聞こえる音を上げて、リティスリティアの香りを楽しんでいる無駄に乳のでかい水色髪の変態女が聖女セラである。
世が世なら即刻牢獄行きな案件な気もするが、ここは何もない平原でそれを取り締まる衛兵はいない。
見苦しく取り乱すエメルとリティスリティアの香りを楽しむ変態女セラがいつまで経っても俺様に気付かないので、仕方なく声をかけてやることにした。
「おいっ、女共。いつまで遊んでいる気だ?」
俺様がそう言うと、エメルが驚いたように、セラはリティスリティアの肩から覗き見るように俺を見る。
「なっ、アンタ、生きてたの?」
「だから言ったではありませんか? アッシュ様がそう簡単に死ぬはずがないと。そういえばガイン様がいませんね。どこへ行ってしまったのでしょう?」
どちらかといえばどこかへ行ってしまったのは俺様やお前らの方だが、ガインの事などどうでもいいので、無視して俺様は話を前に進める事にする。
「おめでとう、お前らはめでたくもまた世界を救う俺様の手下として選ばれた。光栄に思うがいい」
「はぁ? 何よ、それ? 魔王は死んだし、四天王もいなくなった。世界はもう救われたじゃない」
どうやらこの状態を見ても状況を理解できていないらしい。
まぁこいつらはあくまで凡人に毛が生えた程度で偉大過ぎる勇者である俺様と比べては酷というものなのかもしれない。
「はぁ」
俺は呆れから溜息を吐く。
面倒だが説明してやる必要があるようだ。
そう俺が思ったその時、変態女の無駄に大きな胸に埋められたリティスリティアがセラの縛めから逃れ——。
「それは私から説明するね」とそう言った。
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