帰国子女の孤独

主人公は9年フランスで暮らし、親の都合で日本の中学校に編入してきた帰国子女。

個人的な話だが私は所謂ハーフなので、ときどき人にきかれる。「子ども時代にそれが理由でいじめにあったか?」と。
これに答えるのは難しい。
ある意味ではもちろんノーだし、ある意味ではイエスだ。

はじめましての相手からは様々な質問が飛び交う。見た目からして外国人のハーフにとって、それは「おまえは日本人か? 外国人か?」という確認作業であったことに、大人になった今は気づく。
見た目は違えど、中身は日本人ならば、仲良くしてやろう。そう明言はされずとも、ちゃんと感じ取れるのだ。だから必死で「心は完全に日本人です」と言い続ける。そうすれば、受け入れは楽になる。

この物語の主人公は、まったくちがう。
見た目も国籍も日本人。
けれど考え方、受け取り方、感覚はどうしても日本になじめない。当たり前だ。生まれ育ちはフランスだもの。彼はフランス人なのだ。まちがいなく。

けれども日本に来たからには、尋問に付き合わねばならない。そしてうっかりまちがえた答えを返したせいで、宣告される。
「おまえはガイジンだ」と。

もう日本人と外国人を切り分けることさえやめてほしいと思う気持ちもあるのだけれど、とにかく読んでほしい。
つらいけれど、ラストはきちんと心温まるように構成されているから、どうか安心してこの物語を知ってほしい。
きっと気づきや発見があるはずだから。

その他のおすすめレビュー

みりあむさんの他のおすすめレビュー65