日本社会に馴染めない者の、心の叫び。あなたは気づくことができますか?

主人公・紘一は帰国子女の中学生。
フランスで9年も過ごした後に、親の意向で日本の公立中学校へ転入させられました。
そこに待っていたのは、異質な者を嘲笑し吐口にする、同級生集団による容赦のない虐めでした…。

地獄の日々の中、たった一つの安らぎだった人への気持ちさえ否定され。
まだ幼い少年の人間性が、尊厳が傷つけられていく…。
涙や憤りなしには読めない作品です。
少年の、声なき慟哭に読者の心も打ちのめされます。

それでも彼は、自分の手で幸せを掴み取るために行動します。
彼を支えてくれた、数少ない大人たち。紘一にようやく、自分で自分が幸せになれる道を歩き出す時がやってきます。

そこに至るまでの、数多くの絶望。叫び。自分は何者なのかと逡巡する日々。
一人の少年が過ごした、激動の思春期のドラマ。
読み終えた時、多くのことを教えてくれる物語です。

あなたは、そばにいる者たちの言葉にならない嘆き、叫びに気づくことができるでしょうか?

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