旅立ち

僕らは武蔵野の森をさまよっている。

「どうやら迷っちゃったみたいね」と美和子が呟く。

何かが踏み均したような獣道だが、脇には清らかな小川が流れていた。

やわらかな黒土に青々としたしだ類、岩には苔がむしている、その岩にかなヘビが一匹。

「あっカナチョロだ!」僕が声をあげるとかなヘビはチョロチョロと岩陰に隠れた。

空を見上げると、アレ?空を見上げると、アレ?未確認飛行物体が浮いていた。

「なんだあれ?」僕は美和子に指をさしうながす。

「なんか十字架みたいなのがたれてるね!UFOかな?」

その白い球状の物体は中空で静止していた。

「あっち行ってみようか?」

僕らはそちらに向かう…

近づくにつれ何処からともなく風が強まっていった、丁度真下ふきんに着く頃には、と言うか真下では、つむじ風が起きていた。そのつむじ風の中心に健史が居たのだ、健史を見たことはなかったが僕にはなぜだか彼が健史だとわかった。

つむじ風はどんどん大きくなり竜巻になった。僕らは必死に近くの木にしがみつく。

「きゃ~」と美和子

僕と美和子は一本木を囲うように手を繋いでしがみつく。

「健史~~!」と僕は声をあげた。

健史はこちらを見て微笑んだように思えた。そして竜巻に溶け込み土を巻き上げあの物体へと上っていった。

嵐が収まる。僕らは猛烈に泣いている。

「あれ…健史くん?」しどろもどろに美和子が言う

「うん多分」



帰り道に僕らは、少女の失踪の事や、健史の中学の遠足の地がこの森だったのではないかと言うような話をした、そして初恋の女の子が失踪した少女である可能性についても…



翌朝、親のとっている新聞に、案の定健史の事がのっていた。



…森下健史君(19)は昨日の…付近は突風が発生し…警察は関連を調べるとともに捜索を続けています。

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