第3話 鹿の頭骨

動物の骨を集めるのが趣味の学生の話です。


 私はその日、四国で登山をしていました。目的はただただ自然を楽しんでのんびりするというもので、目的もなく山を散策していました。山を歩いていると何やら開けた場所にたどり着きました。それは廃村で、草生した村の入り口と傾いた民家と散策していて飽きない場所でした。かなり古いカレンダーや昔の漫画、壊れたブラウン管テレビなどを見て歩いていると、一軒の民家の前に何か白いものが落ちていました。「鹿の頭骨だ。」動物の骨をコレクションしていた私はすぐに飛びつきました。動物の骨の中でも頭骨が手に入るとやはりうれしい。近くにほかの部位の骨がないかしばらく歩き回りましたがそれ以上の骨は見つからず、頭骨を上着でくるんで下山しました。

 帰ってさっそく鹿の頭骨を出して眺めてみると、妙なことに気が付きました。側面に小さな穴が3つ開いていたのです。また、振るとからからと音がして中に何か入っているようでした。注意してみていると頭骨に小さな隙間があり、そこから何かが入っていたようです。きっとなんかの拍子に小石でも入ったのだと思いそれ以上は深く考えませんでした。


 後日、インターネットで四国の鹿について検索していると、一つ気になる記事を発見しました。民俗学に関するそのサイトに書かれていたのは鹿の頭骨を使って人を呪う儀式に関する内容でした。儀式の詳細に関しては不明な部分が多かったのですが、なにやら鹿の頭骨に人間の髪の毛と米、椿の種を入れて儀式を行うらしく、側面に並び方が違うものの見覚えのある3つの穴もありました。私が登山した隣の県で盛んにおこなわれていた儀式のようで、少なくとも戦前まで残っていた文化のようでした。

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山の話 創作民話 @donan3301

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