第13話 いくらなんでも仕事が早すぎないか?

「とりあえず電話しておくか」


 俺はどうやってアルテー達に再びビキニアーマーを着てもらうか、もうヴィーマーに戻るかどうかを考えるのは一先ずおいておくことにして、まず家族に連絡をすることにした。


 俺の家族は父さんの転勤に付き合って今は別の県で暮らしている。俺は雹庫での暮らしが気に入っていて一人残っていたのだが、それが艦獄長ダンジョンマスターになっめ一年間行方不明になり、帰ってきたら裸エプロンハーレムを築いていたと知ったら家族はどんな顔をするだろう?


 ……うん。やっぱり今のアルテー達の姿を見せられないな。ここは家族に生きていると電話だけをしてヴィーマーに戻ることに……?


 家族に電話をしようとスマートフォンを手に取ると、突然スマートフォンから着信音が聞こえてきた。画面には「非通知」と出ていて怪しかったが、とりあえず俺は電話に出ることにした。


「はい。誰ですか?」


『玉国龍人さんですね? 私は艦獄長ダンジョンマスター管理局の白部といいます』


「……!?」


 スマートフォンから聞こえてきた女性の声に俺は絶句した。


 艦獄長管理局。


 名前の通り全ての艦獄長を管理する政府直属の機関。龍骨が宿り艦獄長となった者は、この艦獄管理局に登録することが義務付けられている。


 艦獄管理局に登録した艦獄長は「公式艦獄長」と呼ばれ、登録した後は基本的に自由なのだが、艦獄長の力を解明するための実験や龍骨が宿って異世界に転移した他の艦獄長の救助を政府から依頼されることもあるそうだ。


 そして以前にも話したことがあると思うが、所有者の生体エネルギーをバッテリーにしているこのスマートフォンは、艦獄長の位置を知るための発信器でもある。だからこの世界に帰ってきたら政府に俺の存在が知られるのは知っていたが、いくらなんでも仕事が早すぎないか?


『単独での異世界からの帰還、お疲れ様です。玉国龍人さんは現在我が国が交流している七つの異世界、そのどれとも違う異世界へ転移したのが分かっていたので、その帰還に注目していました』


 艦獄長管理局の人……確か白部さんって言ったか? 彼女はスマートフォンから感情が見えない声で話しかけてきて、それを聞いて俺は納得した。


 ああ、なるほど。確かに仁本と交流がある七つの異世界に転移したのだったらスマートフォンの電波も届くから、そこから俺が電波の届かない場所、つまり未知の異世界に転移したと考えるのは別に不思議じゃないよな。それで未知の異世界に転移した俺がこうして帰ってくるのを、白部さん達艦獄長管理局はずっと待っていたというわけだ。


 ……しかし不味いな? こうなると家族に電話だけをして、すぐにヴィーマーに戻るというわけにはいかないぞ?


 理由は様々だが、公式艦獄長となり政府の管理下におかれることを嫌う艦獄長は少なからず存在する。そしてその中には艦獄長管理局の呼び出しを無視して登録もせずこの世界と異世界で好き勝手に行動する者もいて、政府は彼らは指名手配犯として扱っている。


 このままヴィーマーに戻ったら俺も指名手配犯扱いになるかもしれない。それは避けたいのだが、アルテー達の裸エプロン姿を見られたら社会的に死んでしまう。ここは艦獄管理局の人達がこちらに来る前に、何としてもアルテー達に再びビキニアーマーを着てもらうよう説得を……。


『今私達は玉国さんの登録手続きと艦獄の調査のためそちらへ向かっています。ですのでどうかそのまま艦獄を動かさず待機していてください』


「……………えっ?」


 スマートフォンから聞こえてくる白部さんの言葉を聞いて俺が艦獄の下を見ると、一機のヘリコプターがこちらへ向かって飛んでくるのが見えた。


 だから、いくらなんでも仕事が早すぎないか?

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