第10話 何故か凄く怖い!

「今日は宴だぁ!」


『『おおーっ!』』


 その日の夜。艦獄ダンジョンシップの甲板上で戦女の一人が高らかに叫び、他の戦女達がそれに続いて声を上げる。


 今この艦獄には肉が大量にあり、戦女達はその肉を焼いて宴……焼肉パーティーを楽しんでいた。そしてこの肉はもちろん今日俺達の前に現れた大海蛇の肉である。


 あの後、結局恐竜達だけで大海蛇を倒してしまい、俺とアルテー達はその様子を見学するだけで終わってしまった。


 ……と言っても、俺は元々恐竜達に倒してもらうつもりだったから予定通りなんだけどね。


 しかし意外だったのは恐竜達は大海蛇が死ぬと、すぐに大海蛇から興味を無くして自分達が仕留めた獲物の肉を一口も食べなかったことだ。


 まあ、そのお陰で俺達は大海蛇の肉を全て食べることが出来たのだが、恐竜達ってば昨日から何も食べていないんだよな。特に腹が減っている様子も見せないし……もしかして作り主の俺から生命エネルギー的なものを吸いとって、それを栄養源にしているとか?


 ちなみに恐竜達はやはり焼肉パーティーには興味がないらしく、艦獄内のダンジョンで銀の杖の魔宝の警護をしている。


 そして大海蛇の肉だが、俺が食べたどの肉よりも美味かった。


 味は牛肉に似ていて味付けは塩だけだったが、噛むごとに濃厚な旨味と肉汁が溢れ出てきた。もし仁本でこれと同じくらい美味い肉で焼肉パーティーなんかしようと思ったら、必要な金はそれこそ何万円どころの話ではないだろう。


 うん。確かにこんな肉が食べられるのだったら、戦女達が喜び勇んであの大海蛇と戦おうとする気持ちも分からなくもない。


 そんなわけで突然のご馳走に戦女は大喜びして、大海蛇を仕留めた恐竜達の作り主である俺はこの焼肉パーティーの一番良い席に座らされて、大勢の戦女達から礼を言われながら彼女達の手で大海蛇の肉を食べさせてもらっていた。


 いやぁ! 転移した異世界で、ビキニアーマーを着た巨乳の美女美少女達に囲まれて美味い肉が食べるだなんて、まるで夢みたいだ。艦獄長ダンジョンマスターになって良かったと初めて思ったよ!


「楽しんでいるようだな、リュウト」


 俺が戦女から大海蛇の肉を食べさせてもらっていると隣に座っていたアルテーが話しかけてきた。


「え? ああ、まあな。でも、ここまでいい思いをさせてもらったら少し悪いかなぁ……なんて」


「そんなことはない。お前のお陰で私達は快適な船旅が出来る上にこうして大海蛇の肉にありつけたのだ。せめてこれくらいのもてなしはしないとな」


 俺の言葉にアルテーは首を横に振ってそう言ってくれて、周りにいる他の戦女も彼女と同意見のようでこちらに笑みを向けてくれていた。


 最初は何の役にも立たないと思っていた「剣」の力恐竜達「牢」の力艦獄だったが、こうしてアルテー達の役に立てたのは嬉しい限りだ。……まあ、「鞭」の力はまだ微妙な感じだけど。


 そんなことを考えていると……。


「それでリュウト。子作りはいつするんだ?」


「………!?」


 アルテーの突然の発言に思わず吹き出しそうになった。


 こ、子作りって、昼間のあの話か!?


「あ、アルテー!? あれは冗談だったんじゃ……!?」


「何を言う、私は本気だぞ? 私はこの船を自在に操り、あの竜達を作り出せるお前が本当に欲しいと思っている。お前がアレネスのものになるのだったら、妻となってこの体を捧げても族長も納得してくれるだろう。私だけで満足できないのだったら、この場にいる彼女達と子作りをしてもいいのだぞ?」


『『………』』


 中々にとんでもない事を口にするアルテーだが、彼女と周りにいる他の戦女達は真剣な表情をしており、冗談を言っている感じではなかった。


 こ、怖い! まるでハーレムもののエロゲみたいな嬉しい状況のはずなのに、何故か凄く怖い!


「リュウト。逃げられるとは思うなよ?」


「……!?」


 真剣な表情から肉食獣のような笑みを浮かべるアルテーを見て、俺は自分が完全に詰んでいることを理解した。






 その後、俺はこの異世界ヴィーマーで色々な意味で、良くも悪くも刺激的な日々を送ることになり、元の世界に帰還できたのは一年後のことだった。

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