第9話 本当に何なんだよ、アイツら?

「………え? ちょっ、あの……?」


「フフッ。安心しろ。まずはあの大海蛇を倒して肉を手に入れるのが先だ」


 アルテーの口から出た子作りという爆弾発言に俺が固まっていると、彼女は笑いながらそう言って仲間の戦女達を連れて艦獄ダンジョンシップの中へと入っていった。


 ……いや、そこは「冗談だ」と言うところじゃないのか?


 俺が内心で呟いてからアルテー達に続いて艦獄の中に入ると、艦獄の中のダンジョンでは既に戦いが繰り広げられていた。


 戦っているのは先程ここへ吸い込まれた大海蛇、そして頭部にドラゴンのような角を生やしている俺が「剣」の力で作り出した恐竜。


 しかし大海蛇と戦っている恐竜は一匹ではなく全部で六匹いて、六匹の恐竜は大海蛇を取り囲んで連携を取りつつ戦っていた。


「………!? リュウト、あの竜は一匹ではなかったのか?」


 大海蛇と戦っている六匹の恐竜の姿を見て戦女の全員が驚き、同じく驚いた表情となったアルテーが聞いてきた。


「あの恐竜は俺の『剣』の力で作った卵から生まれるもので、昨日新しく卵を五個作っていたんだ」


 昨日、このダンジョンの奥にある銀の杖の魔宝を確認した俺は、龍骨によって植え付けられた本能に従って、魔宝の守りを固めるべく恐竜の卵を五個作っていた。それがこんな形で役に立つとは思ってもいなかったが。


 それにしてもあの恐竜って本当に何なんだろう? 卵を作ってすぐに孵化したかと思ったら、あっという間に大きくなるし、昨日アルテー達に分けてもらった干し肉を上げようとしても一口も食べない。今更だけど生物として色々と矛盾していないか?


『『……………』』


 アルテー達はまさか恐竜の数が増えているとは思っていなかったようで、突然の光景に驚いて動けず、俺達は恐竜達と大海蛇の戦いをただ見学している状態になっていた。


「……!」


『『………………!』』


 恐竜達は囮役と攻撃役に分かれて、囮役が注意を引き付けているところを攻撃役が死角から攻撃を仕掛けるという連携攻撃を行っていた。恐竜達の牙や爪は大海蛇の鱗を容易く貫いて切り裂き、その度に大海蛇は苦悶の鳴き声を上げて身をくねらせる。


 俺は戦いどころか喧嘩すらろくにしたことがないのでよく分からないが、結構強いんじゃないか? 俺の恐竜達?


「あの竜達、強いな……」


 大海蛇を取り囲んで一方的に攻めている恐竜達を見てアルテーが呟く。


「アルテーから見ても強いのか、あの恐竜達?」


 アルテーの呟きを聞いた俺が尋ねると彼女は即答した。


「強いな。大海蛇は決して弱いモンスターじゃない。私達アレネスの戦女でも油断したり少数でかかれば逆に喰われることもある。しかしあの竜達は明らかに一匹一匹が大海蛇より格上だ。……リュウト、あの竜を産む卵はまだ作れるのか?」


「え? ああ、最大でいくつ卵を作れるかは試してみないと分からないけど、まだ何個かは作れるぞ」


「そうか。……そうか」


 俺が質問に答えると、アルテーは一つ頷いてから何かを考えるような表情となった。


 何だ? アルテーの奴、さっきから何を考えて……………っ!?


『『……………!?』』


 アルテーに何を考えているのか聞こうとしたその時、俺は……いや、俺だけじゃなくてアルテーに他の戦女達のこの場にいる全員が、大海蛇と戦っている恐竜達のとった行動に驚き目を見開いた。


 ……本当に何なんだよ、アイツら?

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