第4話 伝説の、ビキニアーマー……!?

「そうだ、卵だ。あれ、食べられないかな?」


 手持ちの道具と能力が全く役に立ちそうにない事に落ち込んでいた俺は、先程「剣」の力で作り出して艦獄ダンジョンシップの甲板に置いてきた卵のことを思い出した。


 あの卵が一体何の卵なのかは分からないが、今はそんな事気にしていられない。何とか火を起こして焼いて、最悪生のままで食べれば貴重な栄養源となる。


 そう考えた俺は卵を回収するべく甲板に出た。するとそこで俺は艦獄が一人で動いて海を進んでいることに気づいた。


「艦獄が動いている? もしかして最初から動いていたのか……って、あれは?」


 海を見下ろして呟いた俺は、遠く離れた場所に小さな影があるのを見つけた。


「あれは……もしかして船か!?」


 遠くにあるので正確には分からないが、それでも影が船の形に見えた気がした俺は目を輝かせた。


 船があるってことはこの世界にも人がいるのか。何とか連絡をとりたいがこの距離だと声も届かないし、合図も見えない。艦獄は動いてはいるが俺の意思は聞いてくれないし……向こうの船、こっちに気づいてやって来てくれないだろうか? そして俺を助けてくれ。


 俺が神に祈るような気持ちでそう思っていると、願いが通じたのか船らしき影はこちらに近づいてきて、やがてその姿がはっきりと見えた。そしてこちらにやって来た船らしき影は、やはり人の手によって造られた船であった。


 船は何本のオールを漕いで進む木造のオール船だった。大きさは俺が乗っている艦獄の半分、いや三分の一くらいで向こうの船の甲板上にはこの異世界の住人と思われる十人くらいの人影が立っていた。


「あれがこの世界の人達か……。話が通じたらいいんだけど……!?」


『『………』』


 俺が向こうの船に乗っている異世界の住人達にどうやって話しかけようか考えていた時、異世界の住人達は跳躍をしてこちらへ飛び乗ってきた。


 ……って、ちょっと待って? 今何でもないように飛び乗ってきたけど、艦獄と向こうの船って高低差が5メートル以上あったよね? それなのに何で助走も無しに飛び乗れるの?


 異世界では地球の常識が全く通用しないことがあることは知っていたけど、こう非常識な光景をサラッと見せつけられると流石に驚くな……。いや、驚くのは後だ。今は何としてもこの異世界の住人達と交渉して俺の安全を確保しなければ。


「あ、あの……? こんにち……わぁ!?」


 超人のような跳躍で艦獄に飛び乗ってきた異世界の住人達に、俺は勇気を出して話しかけようとしたが、相手の姿を見て思わず驚きの声を上げた。


 俺の前に現れた異世界の住人達は、全員が十代後半から二十代の女性達だった。しかも皆、モデルかと思うくらい美人でスタイルも抜群。特に胸が凄い。最低でもFカップ以上の巨乳ばかりだった。


 こんな美女達が大勢いきなり現れたというだけでも充分驚く理由となるのだが、俺が驚く理由はもう一つあった。それは異世界の住人である彼女達の格好だ。


 なんと彼女達は全員、素肌の上に動物の革や金属で作られた水着のような防具を身につけていたのだ。そう、つまり……!


「伝説の、ビキニアーマー……!?」


 俺は異世界の住人達の姿を見て、感動と驚きで身を震わせながらそう呟いたのだった。

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