第8話 後に伝説となった試合

「ふざけんのもいい加減にしろよ?ガキ????????」


何だか猛獣の居る檻に何も持たないで入った気分だ。え?俺が悪いのか?


「あのー。スコールは鍛治科希望ですよ?」

恐る恐ると言った感じでモカが言う。

少し目には涙が溜まっていた。

だよな。怖いよな。ちびりそうになるよな?


「ハル!」

突然オルガンさんが大声を出す。


「は、はいぃ!」

意気消沈していたのに。一瞬でビシッと姿勢良くなったよ。凄い。けど分かる。


「ホントか?」


「ホントです!そしてこいつは剣好きの馬鹿ですぅぅ!」


オルガンさんがはぁ。とため息を着き頭を抱える。どったん?そしてモカの姉?てめぇ?お?お?


「ハルが言うから本当みてぇだが。マジで?損するぞ?」


「す、好きな事やって何が悪い!」


あっ。やべ。焦った!そして敬語ォ!


「ハッハッハ!そうか!そうだよな!」

オルガンさんが面白可笑しそうにゲラゲラと笑う。何がそんなに可笑しいんだ!


「よし。行くぞ。」

と言ってモカの姉の首根っこを掴む。


「グェッ!」

なんかカエルみたいな声を出し、

そしてそのままビュンと自分の席に飛んで行った。

おー。飛んだなぁ。


「じゃあ俺らもって、モカはまだ途中か。」


「あー。うん。そうだね!バイバイ!またあとでね!」


ブンブンと思っきり手を振るモカ。

風圧で壁にヒビが入ってると思うのは俺だけ?

うん。俺だけじゃないね。観客が目を見開いてるよ。


「浮遊魔法はよ。」


親鳥を待つ雛鳥のようになっているアヴォルフリード。お前。本当に七星龍?


「ねぇ?兄貴。私。忘れてるよね?てかはよ。はよ。帰させろ。」


これはキレてる。アリシア的にキレ度は80%位か。ちなみに100になるとしばらく口聞かないっていう特典付きだぞ。お得だな。


「少し見て行ったらどうだ?観光でもしてみてもいいんじゃないか?」


「ん?おお。兄貴のくせにナイスアイデア。分かった。行ってくる!」


ピューと効果音が聞こえてきそうな去り方だった。変わり身が早いのはいい事だ。


良かった。今帰られると家の壁ぶっ壊れてっから殺されるとこだったんだよね。

危ない危ない。


『で、では!学院からの指名を行います!

シャギワ・メタ!前へ!』


あっ。あの秒殺された人か。なんか強そうだったが…


今は目が虚ろになっていてシャキンと背筋が以前は良かったが今はもう丸まっていた。


「可哀想としか言い様がないな。というかあやつはそれなりに強かったのか?」


疑問そうに聞くアヴォルフリード。周りの観客達もそうらしくザワザワとしていた。そしてこちらをガン見していた。見せもんじゃねえぞ!



「そりゃあ。勇者パーティ候補の相手だしな。まあまあ名を馳せてるやつだとは思うんだが…」


と。思った瞬間。セリア学院の学院長アイオス・ヴォルガが手を挙げた。


おおお!と会場が湧く。シャギワにも目に光が戻った。


「まぁ。これから光りそうなやつではあったしな。最後の技だ。何気にあれ強いぞ。多分。

ただ隙が多いだけだな。」


「ん?そうなのか?よく分からん。」


お前ならそんなの気にしなくても強いから関係ないか。


『続いて!モカ・オーラ!前へ!』


モカがこっちに手を振りながら前に出る。流石にこの時くらいやめたら?


「絶対皆挙げるだろ。」


うん。それね。


アヴォルフリードの予想は当たり全ての学院が手を挙げた。

これは珍しい事らしく会場がおお。と感嘆の声が観客から漏れる。


「えっと。スコールがいる所がいいんですけど…」


「「「大丈夫。指名する(わ)」」」


えぇぇ…


「まあ。当たり前じゃな。お前1人で多分国潰せるしな!」


えぇぇ…


「な、なら!保留でいいですかね?」


会場がザワつく。係員達がどうなのか?と話し合いを始めている。するとOKのサインが。


『これはぁ!強者と強者がどちらも取れるバーゲンセールだぁ!』


要らない。そんなバーゲンセール。


そして言えない。友達作って青春を送ってみたかった。ラノベみたいに。なんて言えない!


ちなみにちなみに。他の幼馴染達はもう試験終わったみたいだ。後でどこ受かったのか聞いてみよっと。


「えっと?次はアドVSハク?誰?」

アドは分かるけど。ハク?聞いたことない。


「流石に負けんよ。七星龍じゃぞ?」


ふふん。と胸をはるアヴォルフリード。


「それもそうだな。」

確かにそれもそうだ。


「ねぇ!スコール!私達も私達も!」


おっと。下から幼馴染達の声が聞こえる。

だから浮遊魔法をすかさずかけた。


おお!と幼馴染達は驚いている様子だ。

確かに最初は慣れないよな。


俺の所まで幼馴染達が上がってきたので上がるのを停止させた。


「本当に!ヒヤヒヤさせないで!」


ポカポカと殴ってくるセリカ。ちなみにポカポカと可愛らしい音が出てはいるが。骨がバキバキと洒落にならない音を立てているのでやめていただきたい。


「いやー。あいつ龍だからさ。女の姿なのそう言えば忘れてたわ。」

ハッハッハと笑う俺。そして目を点にする幼馴染達。


「な、なぁ。スコール。じゃあ対戦相手は大丈夫なのか?なんて龍だ?」

なんだよ。ガイル。そんな目向けて。


「七星龍のアヴォルフリードだ。大丈夫。大丈夫だって。」

あいつは絶対に勝つ。なんてったって七星龍だからな!


「あのね。スコール。相手。相手死なない?」

おいおい。どうしたんですかモカさんってあ。


「ま、まぁ?大丈夫だって。」

冷や汗が止まんねぇよ!どうしようどうしようどうしようどうしよう。


「アヴォルフリードって相手に手加減しない龍で有名だけど。どうするんだい?」


\(˙◁˙)/(俺の顔)


「自暴自棄にならないでくれ…」


おっ。対戦相手が来た。なんかドレス着てね?

ん?どこかであの魔力見をぼえが…

でもあんな白髪の清楚な美人。忘れる訳がないが…

実際この会場の男子の殆どが目を奪われていた。それはアヴォルフリードにも。なのだが。


なんかアヴォルフリードが震えだしたぞ?


ん?口パクで何かを伝えようとしてるアヴォルフリード。タ?ス?ケ?テ?


?????????????????????


目が潤んでいる様な気がするのは俺だけ?


なんかあのハクって人がこっち見てるんだが…

あっ。目が合った。

ニッコリと笑いかけてきた。


清楚なイメージを持たせるその笑みは何故かどこかねっとりとした印象を持たせる。

なんか目が?ちょっとおかしくないか?


なんか俺も体の震えが止まらないんだが?


なんか肉食獣にターゲットロックオンされた草食動物の気分。


『では!試合開始です!』


スタートした瞬間。目にも止まらぬ速さで連撃を喰らわせるアヴォルフリード。あの一撃一撃が必殺技みたいなもんだがハクと言う人にはあまりきいていないみたいだ。


もしかして?化け物?


「おいおい。なんだ。あの化け物は。スコール?知り合いか?」


「全く知りません!聞いたことも無いです!」

ビビっております。俺。


アヴォルフリードは連撃をピタリといきなりやめた。


そして戦闘場内を走り回り始める。

何かブツブツ呟いているみたいだが…詠唱か?

まぁ。あんなに固いならな。分かるけど。

てか、やめい。


一方のハクというと何もしない。ただ立っているだけである。

あっれ?あの戦法どっかで…


『コキュートス!』

俺が思い出す前にアヴォルフリードの詠唱が終わったようだ。出すのはコキュートス。確か最上位の氷結魔法だが…ハクには効かなかった。


神々しく光る拳を出しただけ。それだけで凄まじい冷気の暴風だったコキュートスは見る影もない。華々しく散っている小さな氷の粒。そして冷気が上へ上がっていく。


「あれでもダメか…化け物だ。」


「ちなみにスコールだったらどう?」

おいおい。モカ。そんなこと聞くなって。


「断罪で1発だな。」

そんなの普通にできるぞ。俺は。舐めてもらっちゃ困る。


アホらしい会話が終わった。その刹那。

戦闘場に見える。白い粉のようなもの。


「なんだありゃ。雪、か?」


「本当にそうか?どう考えても季節外れだ。」

ガイルの言う通りだが。なんで闘技場の戦闘場だけ?


「ふっ。ふふふ。フハハハハ!引っかかったなぁ!ハク!」


「「「は?」」」


「なんですか?この雪がどうかしましたか?触っても何もなりませんが?」

ハクが不思議そうに聞いた。


「あのな。コキュートス位ならすぐ打てる。

詠唱していたのは他の魔法だ。」


「雪を降らせるだけの魔法ですか?天候を変える魔法というのもなんとも規格外ですが。雪を降らしただけで私を倒せるとでも?」


「雪が降ってるのはコキュートスを破られた時の冷気じゃな。あれで冷やされただけじゃの。」


「ねぇ?スコール。どういう事?コキュートス?」

そのままの意味だが。ハルマ。


「コキュートスで詠唱なんて。おかしいと思ってたんだよな。何か裏があるとは思っていたんだけど…本当にあったのか!」


「おーい。そういう事じゃなくてさ。」

なんだよ。うるさいな。


「始まるぞ。そろそろな。」

幼馴染達は俺の言葉に驚き、そして息を呑む。


「そしてな!魔法は今完成した!行くぞ!

『氷結の花』だ!」


アヴォルフリードが空に放った魔法陣が光だしたと思ったら雪が美しい花びらとなった。


それにハクの右腕が触れる。その瞬間ハクの右腕が花びらの触れた部分から徐々に凍り始めた。


「焦らしプレイですか?良いでしょう!」

ハクが歓喜に染まった表情になる。

声もどこか弾んでいる。


プレイじゃねえよ?多分。


「ねぇ。気になったんだけどね。」

その間にもハクには花びらが当たり続け体の箇所が凍り始める。これなら。勝ちか?


「ん?どうした?セリカ。」


「アドさん。あれどうやって避けるの?」


「いやー。それはなんとも不思議な力で花びらが避けていくんだよ。スコールさんはそう思う。」


流石に自分の打った技に当たるはずが無い。


「あっ。やらかした。」

おーい?アヴォルフリード?何やってん?


1枚の花びらがアヴォルフリードに当たる。

バキン!と凍った音がした。


「うふふふふふ!素晴らしい!素晴らしいわ!

この快感!この痛み!焦らしプレイに羞恥プレイ?最高よ!」


おい…自分から当たりにいってるぞ?

そしてキャラが大渋滞。ヤンデレに?バカ?そしてドM?なんじゃそりゃ。まさにキャラの玉手箱。

そして闘技場は混乱の渦に飲み込まれる。


「痛い!痛い!助けてくれ!スコール!」


「アハハハハハハ!最高!」


頼むから…辞めてくれ!子供もいるんだぞ!

横にって痛ァ!セリカ!ごめん!ごめん!

だから黙って脇腹手刀で指すのやめて!痛い!


そして先に凍ったのは。

恍惚とした表情で氷漬けにされたハクだった。


世界一いらない氷のオブジェが出来ました。

約1マイルから落札可能です。貰ってくれるのならゼロでも可。


「か、解除!」


その瞬間氷がバキン!と割れ元に戻る。


「最高だったわ…またお願いね?あの子よりは全然ダメだったけどね?」


「うるさい!変態!近寄るなぁ!」


絶世の美女が抱き合っている(ハクが一方的に)

のを見たら眼福なのだろうが…あれを見てもなを眼福って奴がいるのなら見てみたい。


『し、勝者。アド、!』


誰も湧かない。だろうね。


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