第5話 そう言えば

俺の朝は剣を振ることから始まる。


剣を作るのだ。そのためには剣というものをよく知らなければならない。

だから毎日色々な剣を振り、俺は色々な剣をよく知ろうとしている。


今日は異世界からの剣。刀を振ってみる。

刀身は細長く薄いので折れてしまわないか心配だ。


元来、剣というのは切り裂くというより、叩き切るイメージで作られてているがこの剣は切り裂くというイメージらしい。試しに竹を切ってみたが今までとは違い、スっと切り下ろす事が出来た。

すげぇ。


作り方も特殊らしく、玉鋼という鉄を使う。

その玉鋼も砂鉄から作るらしく、どうすんだよ!?と俺は思った。

そしてその鉄を何度も折り返し作るらしいのだが、その詳しい方法が本当に気になる。


ああ!異世界に行って教わりてえな!

本当にこの剣には惚れ惚れする。作ってみたいものだ。


おっと。こんな事してる場合じゃないな。

俺は倉庫に向かう。


デュラルシャインは倉庫の壁に立てかけておいたはずなんだが…

おっ。あった。デュラルシャイン。

左右両方の腰にデュラルシャインを下げる。


さてと。行くか。


「おい!アヴォルフリード!」


「ふぁー。ん?なんだ?」

ひょこっとアヴォルフリードが顔を出した。

まだ全裸なん?お前。ここ外だぞ?


「お前行くのか?」


「あー。何か手がかりが掴めるかもしれんしな。行くとする。」


おい。ならさ。


「服。着ろよな。」


「えー?我服きたことないんだが。」

だろうな。


「アリシアの服でも着させてもらえよ。」


「おー。そうするか。」


「剣に戻ってくれ。」


本当に。頼むから。カッコイイんだよ!あの剣!


「断る。」


そう言ってアヴォルフリードは家の中に入っていき、すれ違って今度はアリシアが来た。


「兄貴ー?皆いいってさー。」

え?


「それってマ?」


アリシアは頭を少し上下に振る。


「兄貴?あんま強すぎる剣出さないでね?

って何その剣。」


「あー。ここだけの話だぞ?村の近くに山あるじゃん?あそこの主で作った剣。」


「やめろ。今すぐやめろ。」

何で!?


「兄貴。あんたチート級の力持ってるの分かってない?」

なわけねえだろ。


「こんなの普通だってー。ははは。」


「それが普通だったらこの星消滅すると思うのは私だけ?」


お前だけだよ。


「おかしいのは私なのか?」

おーい。アリシアがブツブツ言い始めた。

今日のアリシアは少しおかしいみたいだ。


「終わったぞー!」


「お、おお!」

似合っている。アリシアが着るとイケてる女子って感じがするがアヴォルフリードが着ると少し清楚に見える。

美少女って何を着ても似合うの?おかしくない?俺なんてマネキン買いなのに。

あっ。そういや美少女じゃなくて龍だったわ。


「音速魔法っと。」


俺とアヴォルフリードの体が光り始める。


「準備はいいな?」


「ああ!」


「じゃあ行ってくるなー!」

俺達は村を後にするのだった。



よっしゃ。着きました。王都。 一日ぶりだ。

「そう言えば試験とはどんなものなのだ?」


「それはな。1つの大きな会場があるんだが、

そこにここの王都7大学院の学院長と側近が集まるんだ。その人達の前で披露する。

戦闘科だとタイマンでバトルをするらしい。目に止まった奴はその場で各学院長に

指名されるんだと。

そして俺の鍛冶部門なんだが、その場合はそこで剣を見せ、性能で決めるらしい。」


「ほぇー。分からん。」


「だろうな。所でお前はどうすんだ?」


「我も受けるとするかの。試験とやらを。」


「やめろ。人が死ぬぞ?」

皆!逃げて!アヴォルフリードちゃんが会場を血祭りにあげちゃうわ!


むー。と頬を膨らませるアヴォルフリード。

ちょっと可愛いと思ってしまったのは内緒だ。


そこでアヴォルフリード。何かに気づいたようで、いきなり目を見開いた。


「なあなあ。我ら七星龍と言うのはな。

一定の近くによると魔力でどこにいるかが我らどうしで分かるんだが、ここの王都にもいるぞ。気をつけい。」


ええ?!

「なんて奴だ?」


「地球龍。アースクルーガーじゃな。

確かアースクルーガーも人を恨んでおったはずじゃ。アイツのモチーフとなった星の環境が壊されているらしい。」


封印剣は今のところ持っていないし、あまりもない。


それからの話を聞くとアースクルーガーも子を奪われ必死に探しているらしい。

そして、単純な火力ならアヴォルフリードの方が上らしいが、アースクルーガーは胞子らしき物をまき、幻覚を見させ、自殺させるらしい。

怖っ。


アースクルーガーの見た目は木っぽいと聞いたことがある。この王都では目立つ気がするのだが。


「火が弱点とかないのか?」


「ないな。何せ相手は星だ。攻撃が入ると言ったら強いてならば我ら七星龍か?

後は二代天魔か。あっ。それなら何故お前攻撃を入れられたんだ?」


知らない。スルーする。


「そう言えば二代天魔ってどんなもんなんだ?」

俺は二代天魔と言うものが聞いたことがあってもどんなものなのかは知らなかった。


「ヘルとヘブン。悪魔と天使を絵に書いたようなやつだ。

人間の女の時も有れば男の時もあるし、

モンスターな時もある。

その事からアンノウンか正体不明とも呼ばれるな。」

へー。そうだったのかー。(興味なし)

自分で聞いといてなんだが思った以上にどうでもよかった。


「まっ。何とかなんだろ。」


「そうじゃなー。」

彼らはアホだった。


「ちなみにその剣は何で作ったのだ?」


「デュラルホーンの素材で。」


「ええ?あの変態鹿を倒したのか?

大変な事をしたぞ?あの鹿マゾだからな。

倒す位の痛みを与えた奴を逃がすとは思えん。

確実に惚れてるぞ。あの変態。他の女と一緒にいると殺しにくるぞ。多分。

俗に言うヤンデレってやつだな。

ちなみに我はデュラルホーンに勝てるのか分からんから助けには入らんぞ。」


確かに。あの鹿攻撃当てると喜んでたなぁ。

えっ?もしかしてアイツ探してるのって俺?

ヤヴァくね?そして今のお前人間の女に見えるからヤヴァイなぁ。おい。どうすりゃいいんだよ!


「捕まったら神秘の雫使われて不死になってから監禁されるぞー。忠告したからなー。」


まあ?こっちには?勇者パーティの?

モカさんが居るもんね!


「その女は成長すれば強くなるとは思うが…

成長したとしても、ぶっちゃけお前の方が強いと思うぞ?」


「いやいや笑。んなわけねえって。

ならなんで俺に勇者パーティの誘いこないんだって話。まあ。やんないんだけど。」


「別に力を隠してたって訳でもないんだろう?」


「まあ。そうだな。本気で剣を打たないなんて

武器への侮辱だ。」


「だよなぁ。」


と歩いているうちに大きなコロシアムが見えてきた。そして、大きな巨神兵らしき石像が4体。剣、盾、杖、槍をそれぞれ持っていた。


「おお!あそこだ!早く行くぞ!アヴォルフリード!」

俺は走り始める。


だがアヴォルフリードは走り始めない。

「ん…?この、魔力は?でもアイツとは少し違うか…」


「おい!置いてくぞ!」


「おお、すまんすまん。」


コロシアムの中に入る。


アヴォルフリードは薄い扉の前で止まっていた。開いてんじゃん。ドア。

「なんなのだこの薄く透けた扉は。」


「科学って言うんだと。自動ドアつって、人が通る時に自動で開くらしい。」

今ではジェットパック?が付けられた武器なども出てきて、しかも科学は魔力を入れなくても動くらしいのだ。それこそチートだろう。


周りを見渡すとスーツを着た係員らしき人物がおり、その周りには多くの人だかりが出てきていた。どうやら受付のようだ。


「すみません。受け付けに来たんですけど。」


「そうなのですね。お名前とご所望の科を仰り下さい。」


「スコール・ガーライルです。希望は鍛冶科。

で?お前は?」


「我の名前はアドじゃ。戦闘科じゃ。」

だよな。名前。変えるよな。流石に。


「分かりました。ですがスコールさん。

貴方どの剣で受けるつもりなのですか?」


「これですけど。」

そう言って俺は腰に下げたデュラルホーンを持った。


「ハッハッハッハッハ!笑わせる気ですか?

モンスターの素材を使っても刃が切れないですよ?何世代前ですかww」


「あ?」

知らねえのか?最上級火炎魔法エクスプロージョンで熱せばモンスターの素材って色々な効果見せんだぞ?デュラルホーンの場合は聖属性付与だったな。

村長が一般常識だって言ってたぞぉ?おい?


「落ち着け。死人が出る。」


係員はぶん殴る。何も知らねえのな。ぶっ潰してやる。


「あっ!まさか生贄役の方でしたか!それはそれは失礼しましたw。」


生贄だぁ?試験でわざと落ちて他の人達を不安にさせるって役のヤツか?居るとは聞いていたけどほんとに居たのな。


「マインドブレイク。」

俺は小声で唱える。

これは簡単に言うと脳みそ破壊するやつだ。

てめえを廃人にしてやんよ。


「やめろ!頼むからぁ!」

ん?どうしたんだい?アヴォルフリード?


「お前絶対前世魔王だろ。

後係員!いいな!もう行くからな!」


「わっかりましたァw。」


ごめん。アヴォルフリード。アイツ殺せない。

だから退けてくれ。


「ほら!行くぞ!」

そう言ってアヴォルフリードが俺の服の襟の部分を掴んで引っ張っていく。


「ええ!?俺身体強化(神)使ってんだけど?

力負けすんの!?」


「そんなの我も使っとる!早く行くぞ!

って?え?神?」


まあ。そうか。七星龍だもんな。自力が違うのはしょうがねえか。

後、係員。夜道に気をつけろよ?


そう心から思ってこの場を後にするのだった。


コロシアムのロビーに着いてから。

「はぁ。マインドブレイクしたかったなぁ。」


「軽々しく人の人生壊そうとするお前。凄いと思う。さては前世魔神だな?」

何言ってんだ。失礼なヤツめ。


「で?戦闘科は午前中だったかの。もう始まっとる。

鍛冶科は午後か。そしてお前の幼馴染とやらはどこだ?居ないようだが。」


「あー。居ないな。わっかんねえわ。どこだろうな。」


『モカVSシャギワ!開始します!』

実況者らしいやつの大きな声がコロシアム中に響く。マイクと言うやつでこれも科学らしい。科学ってすげぇ。


「行くぞ!モカってやつが幼馴染達の1人だ!」


俺はアヴォルフリードを引っ張り観戦出来る場所へ走る。だがすごい人混みだ。中々前に進めない。


「しょうがねえ。浮遊魔法。」

そう言って俺は俺達の体を浮かせる。

おっ。やってんな。シャギワと言うやつは剣の名家の出身らしく剣が強いらしい。

だが彼女は銃剣士。遠距離攻撃も可能なので有利なはずだ。


あれ?なんか観戦で集まってるやつが俺たちを指差して驚いてる。何故に?


「浮遊魔法だよ。恐らくそれに驚いておる。」

なんかアヴォルフリードさん。呆れてね?


そしてこっちをすごい眼力で見てくる7人の人。

あれは確か7大学院の学院長か?


1人はセリア学院の学院長。

アイオス・ヴォルガ。剣のエキスパートらしく、噂では七星龍を退散させたこともあるらしい。そしてイケメンだよ。ふざけるな。


「それはな。その七星龍が腹痛くてな。トイレしに逃げただけじゃよ。」

はい。伝説壊れました。


ライガ学院の学院長はエイアス・ナイラ。

貫禄のあるおじいちゃんで昔はバリバリの武闘家だったらしい。昔、七星龍に1つの技を教えて貰ったらしい。


「それ。我じゃな。あの坊主こんなに衰えたのか。確か教えたのは氷龍拳だったの。

正直。あれ覚えられんの?とビビったの。

という訳でそれからはアイツを人外と呼んでおる。」

良かった。伝説潰されなかった。


ライブ学院のドロイアス・アル。

罠のスペシャリストだとか。なんか雰囲気が暗いなあのオッサン。ほんとにスペシャリストか?


フォーン学院のセルカ・アルカ。

魔法のスペシャリストでロリっ子。

っとぉ?なんか殺気が飛んできたな。


ワマル学院のヤミカ・イェーガー。

スパイをやっていたらしくなんかこの国の重大情報に触れただかなんだかで情報漏洩の対策のため史上最年少で無理やり学院長になったらしい。現在まだ20歳。

あっ。こっち見てっけど可愛くね?いや綺麗系か。黒髪のクールビューティってヤツか。

あっ視線戻した。少し面倒くさそう。

やりたくないのにやらされたんならそうなるよな。


フンド学院の学院長。カンタ・アヤノ。

異世界人らしい。チート持ちかぁ。

そして、こちらもまだ20歳らしい。ヤミカを狙っているらしく、イケメン。ぶっ殺すぞ。


そして最後はロー学院の学院長。

オルガン・バルカン。めっちゃムキムキのオッサン。傭兵やってたんだと。火炎魔法が得意らしい。


全員この国の最大戦力達だ。生ける殺戮マシーンか?なんかオーラがパない。


「あれが学院長か。なんか強そうだな。」


「それな。あっ。ポップコーン食う?」

俺はアヴォルフリードに、ポップコーンを差し出す。

この試験は国のイベントにもなっており、

多くの人で賑わっている。出店もあるぞ!


おっ。下の戦闘場でモカを応援してんのは他の幼馴染達だな。次なんだろうか?


おっ。モカがこっち見た。手振るか。

頑張れよってえ?なんかモカが立ち尽くしてる?気のせいか目に光がない。


おい!シャギワがここぞとばかりに攻撃しようとしてんぞ!なんか剣光り始めたし!

「やばくないか?モカってやつ。やられそうだぞ?」


「あ、ああ。頼む!頑張れ!」


「うるさい。黙れ。」

たいして大きな声で言った訳でもないのだが。

なんかこっちまで聞こえてきたんだが?

そして声質が冷たくね?


そう言ってモカはシャギワに剣を一振。あっ。シャギワ吹っ飛んだ。場外に。痛そう。


『え、えっと。しょ、勝者!モカ!』

会場もあまり湧かない。てか何をしたのか見えなかった。動体視力強化付与しとけばよかったな。


ドゴォン。と下で大きな音がした。

そして誰かに襟を掴まれる。これ今日2回目。

ってええええええええええええええ!


一瞬で地面に押し倒された。誰かが俺に跨ってる。土煙で前が見えん。身体強化(神)使ってなかったら死んでたぞ?


土煙が開けるとそこには。

表情が完全に無な、モカがいた。


「ねえ?浮気?あの女誰?死ぬ?死んじゃう?うん!一緒に心中しようね!大丈夫!一緒だから!」


そんな楽しそうな声で言ってるけど、顔。笑ってないよ?


「「お前!何やってんのぉ!?」」

おっ。幼馴染達よ。お久。どうにかして。

頼んます。


「女?誰が?」


「あれっ!」

そう言ってモカは上を指さした。


「えっ?我?」


「えっ?アド?」


そう言って指をさされたのはポップコーンのバケット片手にむしゃむしゃ食べてるアヴォルフリードだった。

一応偽名使ったんだが。


「ああそういう事か。ポップコーンの食いかすが落ちてくるってことね。そりゃ悪いことしたな。」


「う・わ・きでしょ?」


いやいやアイツは龍だぜって。


「「あっ。」」

俺とアヴォルフリードの声が重なる。


そういやアイツの見た目。女じゃん。


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