第3話 コンビニで隣の席の女の子に出会った。

「いらっしゃいませ~」


 コンビニ店員の声を聴きながら俺はコンビニへと入る。


 今日は部活がいつもより長くなってしまったから、ここで軽く夕飯を買って食べて、少し早いけど塾に行こうと思っていた。


 俺はジュースとパンを持ってレジに向かう。


 さっきチラッと見たけど、ちょうどホットスナックのチキンが揚がってたんだよな。どうせなら買っちゃおうかな?


 俺はそんなことを思っていると、視界の中でここ最近よく目にする女の子がいることに気づいた。あれは松田さんだな。なにしてるんだろう? 話しかけてみるか。


「こんばんは松田さん。 松田さんも夕飯とか買いに来たの?」


「あ、春名くんこんばんは。 まぁ、私もそんなとこかな」


 俺が話しかけると松田さんはこっちに体を向ける。


 前は私服だったけど今日は制服だ。


 もしかして、松田さんも部活が長引いたんだろうか?


「あ、春名くんそのパン買うの? 私も好きなんだ。美味しいよね」


「松田さんも好きなの? これ安い割には味も良くてボリュームもあるから好きなんだよね」


「そうそう。 部活終わったあととかはそれ食べると、結構お腹いっぱいになるんだよね!」


「わかるはそれ」


 俺たちはそんな話をしながらレジへと向かっていく。どうやら松田さんもお目当ての物を見つけたので、お会計をするみたいだ。


 あっ……ついでにあれも買っとこ。


 俺は松田さんにレジを先に譲り、待っている間にあるものを籠に入れる。


 戻ると松田さんはもう会計をしていたので、俺もそのまま会計を済ませた。


「どうせならさ、一緒にイートインスペースでご飯食べようよ」


「えっいいの?」


「いいよいいよ。 一人より二人の方が美味しいもん」


 俺は店員からレシートを受け取ると、少し離れている松田さんからお誘いを受けたので、二人でイートインスペースに向かう。


 うわっ……とんとん拍子でここまで来て、今更女の子と二人っきりでいることに緊張してきた。


 しかも、二人で一緒にご飯を食べるだなんて……。


 ……あれ? なんか少し心臓がドキドキしてきたぞ。


「あっ! 春名くんチキン買ったんだ! 私も好きだよそれ」


「揚げたてだったから食べたくなってね。 松田さんはサンドイッチ買ったんだ」


「そうなんだよ。 これ最近私の中でブームが起こってるの! これ美味しいし、量もいい感じだから小腹が空いているときには案外いいんだよ?」


「へぇ~俺も次はそれ買ってみようかな?」


「うんうん。 それがいいと思うよ」


 俺たちは夕飯を食べながら、お互いのオススメなコンビニ商品などについて話していく。


 案外、好きな物や買ったことがある物が被っていて驚いたし、それのおかげで少しだけ緊張がほぐれた。


「あぁ~案外春名くんも色々買ってるんだね。 まさかコンビニの商品でこんなに話せるとは思わなかったよ」


「それは俺もだよ」


 俺たちは夕飯を食べ終わるとコンビニを出て、塾に向かう準備をする。


 どうせこの後は同じ先生の授業を受けるんだから、一緒に向かうことになった。


 松田さんが自転車に乗る。俺も自転車に乗ろうとしたが、その前に渡すものがあったことを思い出したので、松田さんにある物を渡した。


「あ、松田さんこれあげるよ」


「えっなになに?……わっこれ当たりつきの飴だ! でも、なんで私にくれるの?」


 俺は袋から飴玉を一つだして渡す。 松田さんは喜んでくれたが、なぜ私に飴をくれたの?と不思議がっていた。


「ほら、初めての授業の時、お近づきの印って言ってイチゴミルク味の飴くれたでしょ? そのお礼」


「え、やったありがとう! 授業終わったらさっそく食べるね」


「うん是非食べてよ。 あと、遅くなったけどあの時飴くれてありがとう。 あの時、女の子と同じ授業を受けることで緊張してから、飴貰ってほっとした気持ちになったし、すっごく嬉しかったよ」


 俺は松田さんの顔を見てしっかりお礼を言う。 


 どうせならもっと早く言いたかったんだけどな。


「……ど、どういたしまして」


 お礼を言うと松田さんはなぜか顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。


 ……どうしたんだろう?


「あ、春名くんそろそろ本当に急がないと授業始まっちゃうよ! 急がなきゃ!」


「あ、本当だ」


 俺はスマホを見る。確かに松田さんが言うように、急がないといけない時間になっていた。


 俺と松田さんは自転車を漕いで塾へと向かった。


 そして、苦手な数学を勉強してこの日はおしまいになったのだった。


 ちなみに、家に帰って俺は女の子と二人で一緒に塾に行ったこと、お礼の気持ちをドストレートに言ったことに気づき、その晩一人で枕に顔を埋めることになったのだった。

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