第2話 部活の朝練後。

「あ゛あ゛―! 朝からきっいわこれ!」


 朝学校に着いた頃は少し肌寒かった風も、今となっては火照った体を冷やしてくれる心地よい風となっていた。ただいまの時刻は朝の8時前。


 俺は所属している陸上部の朝練に参加していた。今は練習も終わり、ストレッチも終わったので後は教室に帰るだけだ。


「足重っ~! これ授業中寝ちゃうパターンだろ」


 俺は教室に向かう前に友達と一旦分かれて、水飲み場へと向かう。


 今日の一時間目ってなんだったっけ?……うわっ数学じゃんまじ最悪。


 俺は憂鬱な気持ちになりながらも水飲み場で水を飲む。


 走って喉がカラカラだったから水が美味しい。ついでに頭にも水ぶっかけて汗流そうかな?


「あれっ春名くんも朝練? お疲れ様!」


「あ、松田さん。 お疲れっす」


 俺が頭に水をぶっかけようか悩んでいると、少し離れたところからジャージ姿の松田さんが話しかけてくれた。


 まだ松田さんには大きいのか、ジャージが少しダボダボしているように見える。


 まあ、俺も母さんに大きくなるからって、大きめのジャージを買って貰ってまだ少しダボダボしているので、あまり人のことは言えないんだけどな。


「春名くんって陸上部だったんだ。 短距離なの? それとも長距離とかハードルとか?」


「俺は長距離だよ。 松田さんも朝練? えっと……何部なんだっけ?」


「あはは私はバドミントン部で、春名くんと一緒で朝練だったんだよ!」


「そうなんだ。知らなくてごめん。」


「全然いいよ! 私たちクラスも一緒になったことないし、前塾で初めて話したんだからしょうがないよ」


 そう言ってサバサバと笑う松田さん。確かに言われてみればそうだな。


「そう言ってもらえて助かるよ。 松田さんも朝練終わったところ?」


「そうなんだよ。 今日は朝から筋トレでさー嫌になっちゃうよ」


「それは俺も分かる」


「おっ! 春名くんも今日は筋トレだったの?」


「筋トレだったよ。 しかも、顧問がいたからサボることもできなかった」


「うわ~朝からそれはしんどいね。 うちは顧問がいなかったからそこそこの筋トレだったよ」


 俺たちは水飲み場で部活について話をする。


 あれっ? 塾の時はあんなに緊張したのに案外話しできるぞ? 学校だからか? それとも朝練だった者同士なんかシンパシーとか感じてるのか?


「あっもうこんな時間だ。 そろそろ着替えないと」


「そうだね」


 俺たちが話していると案外時間が経ったようで、学校が始まる10分前を告げるチャイムが鳴り響いた。


 早く着替えないとこれはホームルームに間に合わないな。


「じゃあ、私着替えてくるからまたね!」


「うん。 またね」


 松田さんはショートボブの髪を揺らしながら更衣室へと走っていた。


 さて、俺も戻って着替えないとな。俺も小走りで教室へと戻っていく。


 教室に戻るとそこそこの生徒がいたが、こんなことはしょっちゅうなので素早く服を着替えた。


 友達からは水飲みに行っただけなのになにしてたんだよ?と聞かれたが、松田さんと話していたことを言うと好きなのか?彼女か?とからかわれるのは目に見えていたので、はぐらかすことにした。


 こうして、いつもとは少し違う朝を迎えたが、その後はいつもと同じようにその日は過ぎ去っていったのだった。


 ちなみに、俺は一時間目から爆睡してしまい、みんなの前で先生に怒られるという恥ずかしい目にあってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る