第21話 女子力

 何気に今日は収穫があった。

 意外とかずくんはしっかりさんだったのは嬉しくもあり、残念でもある。


 ここは年上の女子力を見せつけて、少しでも私に懐いて貰いたいのだけれど、家事全般できて、見た目と違い頭の回転も早い。

 案外、物静かな性格だが腕っ節は強い。とても!



 しかし、しかしだよ。

 あんなんじゃ、私の出番無いじゃん……。

 攻め所を見つけたかったのに、鉄壁の防御を見せつけられたような気がする。

 いわゆる、要塞というヤツね!


 手強い、手強すぎる。

 お母さん、あなたの作戦は私の心を砕きましたよ。ええ、ほんとに。


 さあて、あの要塞を攻略するならどうしよう、地道に好意を持ってもらえるように、可愛い女子として接するか、それとも年上の私も多少はか弱いところを見せつけて、自分が隣に居なければ、と思わせるか?



 ……どちらも併用しましょう!

 2つも案がでたじゃん。

 さすがは私!

 なら、明日のお弁当から始めましょう。


 早速、LINEで明日のことを伝えよう。

 あいつはたまに弁当を持参するらしいから。

 夕飯の残りをリメイクしているとのことを誠二から聞いていたけど、やはり男子の割に女子力が高い。高すぎる。

 私のハードルを吊り上げるほどの女子力というか、生活力よね。


 まあ、家事が全く出来ない男の子よりはとても好感持てるけど、もしかして割によりも生活スキルが高いのだろうか?

 もっと探らなければならない。

 ああ、心の中がもやっとする。


「はあー」


 これで何回目だろう。

 ため息が止まらないよ。

 かずくん、責任とってくださいね?



 ☆


 んっ、スマホ鳴ったかな?

 えーっと、ああ九重先輩からか。

 事件かな?

 ここのところ、平和だったからそろそろなんか起きてもいい頃だ。

 いや、ホントは良くないけどね。


 えっ、明日のお弁当を用意してくれるのか。

 なら、目の前のものはどうしたらいいかな?

 断るか、いや、人の好意が今の自分を支えてくれたことを忘れたら、空の上の母さんから怒られてしまうだろうな。


 これはチルドに入れておけば明日の夕飯にできる。

 そうしよう。

 仕方ない、いや少しは嬉しい。


 さっさと返事をしよう。


『九重先輩、楽しみにしています』

『えへへ、頑張ります♪』


 片言だけだが、少しだけ心の中が温まる。

 と、いつ頃から九重先輩を苦手では無くなったのだろうか?

 自然体で接してくれるからか?

 それともパートナーだからか?


 ……まあいいか。

 いい人だとは思うし、話すことができる数少ない女子だし、やはり可愛いし、それに楽しい。


 なんか意外な感情も含まれているが、それは間違いではない。

 恋愛とはまだ遠いのだろうが、少しだけ高校生という実感を与えてもらえた気がする。

 九重先輩と田中にはこれからも協力しよう。

 俺の生活に潤いをもたらしてくれる友人達、今のところはバイクの次に大切なものだろう。

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裏生徒会の副会長 のののなの! @nonono1011

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