第16話 美味しい昼食

 裏、表の生徒会メンバーの女生徒を守るように指示をしたが、後々その内容を悔やむことになった。


 指示した内容に間違いはなかったのだが、対象を限定してしまったのは失敗だと伝えた後で気づいたのだ。


 生徒会メンバーでなくてもこの学校の生徒なら誰もが危険な目に遭う可能性は高いということに気づかなかった。 


 いや、昔ほど頭が回らなかったから起きたミスだ。


 俺の立場的にはメンバーだけでなく、全てのケースを予想しながら動くことが求められる。


 だからミスではなく、やはり大失敗だ。



 生徒会メンバーのリスクが高いのは当然のこと。

 だが、一般生徒までもが危険な目に遭う可能性が高いことは生徒会メンバーに大きなリスクとなる。


 再度、指示をすべきか悩んでいたところ、ポケットのスマホが震えた。


 九重先輩からメール。


「皆さん、しばらくの間は1人だけの行動をしないよう、各クラスのHRで話してください」


 一般生徒を対象として各学年の各クラスの学級委員長と風紀委員あてにメールの一斉送信してくれていた。





 ……た、助かった。

 内心、かなりホッとした。

 嫌な汗が体から染み出すような感じだ。



 九重先輩には礼を言わないといけないな。

 そう思っていた矢先、再び手に持ったスマホが震えたと思ったら、その当人からこ連絡だった。


「お昼ごはんを一緒しようよ。2人分用意してるから学食じゃなくて、中庭で待ってるね」


 戸惑いはあったものの、お礼を言う機会と割り切り、OKと返事をしたのだが……。




 何故こうなった?

 コの字型の校舎の中庭、そこには愛妻弁当みたいなで作られたハート型のおにぎり。

 玉子焼きも、斜めに包丁を入れ、片方を裏返したハート。

 ウィンナーにもハートの切り口を入れて……


 ──これでもか!


 ってな具合だ。



 学校のマスコットからそんな物を渡された日には、俺が狙われる。

 学校のあちこちから噂話がこれみよがしに聞こえて来る。


「九重先輩、あんたは大丈夫なのか? 俺と噂になって損するのは、間違いなく先輩だぞ?」


「あら、私に気を遣ってくれるのね。うふふ、なんか嬉しいな。あとね、私は気にしない。だって、あなたは私とはペアであり、パートナー。だから私達はお互いが大切な人!」



 えっえっ、えー?!

 こんな時にそんなん言う?

 仕掛けやがったな!


 しかも、マスコットの声を聞くために周りの奴らもシーンとなってるし……。



 これって、なんて言うんだろう?

 ああ、あれな!



 そう、俺はその言葉を知っている。






『詰んだ!』

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