20: when the boy realized that he was actually...

 桐原と柏木をテキトーにゴマかした後、俺は真っ暗な空の下駅に向かって歩いていた。

 部活帰りの少年少女が疲れなんて知らないみたいにぎゃーぎゃー騒いでいる。それを見ながら思った。あいつら、なんのために生きてやがんだ?



 俺はなんであいつが死んだ時なにも考えなかったんだろう。

 普通ダチが死ねば理由くらい考えるよな。実際、みどりと弘明はそれで俺を犯人扱いしたわけだし。俺は考えるのを避けてたのか? 無意識の内に?

 前を歩いてたバスケ部連中が俺を見てなにか言った。黙れ。 ああ、わからない。

 なにがなんだか全くわからない。 浅彦が教えてくれればいいのに。あいつは全部知ってるんだから。


『つーかおまえ気づけよ。俺、死んでんだぜ?』


 一瞬、俺は立ち止まった。そうか。 あいつもういねえんだ。もう話せない。

 

 もう切符は増えない。

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