最終話

 訂正

 第十四話(前話)にて最後数行をまるっと消しました。

 本来のストーリーとはそぐわない内容をあげてしまい誠に申し訳ないです。



 ーーーーーーーーーーーーーー



「......ただいまー」

「......おじゃまします」


 どこか他人行儀に自宅のドアを開ける。

 この時間だと弥美が帰っているはずだが、何故か明かりはついていない。

 自室で寝ているのだろうか。

 リビングに向かおうとして暁さんに声を掛けられた。


「梨彗君この靴って弥美ちゃんのじゃない?」

「ほんとだ。てことは寝てるのかな」

「なら静かにいかないとだね」


 廊下を歩き、一度リビングへと向かうがそこに弥美の姿はない。


「と言うことは自室か。暁さんはここで待っててもらっていい?」

「わかった。仲直り頑張ってきてね!」

「ありがとう」


 階段を上り弥美の部屋の前に立つ。

 コンコンとノックをするが返事はない。流石に寝てるところを起こすつもりはないので、一旦あきらめようと思い背を向けた瞬間、弥美の部屋とは反対。つまりは僕の部屋から何か物音がした。


 ドアを開け明かりをつける。

 しかし、何かが落ちたり倒れたりした様子はない。

 まさか、幽霊がーーなんて考えたところで、ふと違和感を感じ歩き出す。


 そこにあるのは明らかに膨らんだ僕の布団。

 もしかしてと思い、布団を捲るとやはりそこにはパジャマ姿の弥美が身を縮こまって眠っていた。


「なんでここで寝てんだ」

「ん......」


 部屋の明かりが眩しかったのか、眠っていた弥美が薄っすらと目を開けた。


「おはよ」

「......なんで兄さんがここに?」


 寝ぼけ眼で僕を見つめる辺り、自分が今どういう状況かまだ理解していないんだろう。


「弥美こそどうして僕の布団で寝てるの?」

「ふぇ? ......っ!!」


 ぼうっと僕の部屋を見渡し、最後に僕の顔をもう一度見ると飛び跳ねる勢いで起き上がった。瞬く間に顔が赤くなり服の裾を押さえる。

 あわあわと手を振り目を回し、と物凄い慌てようだ。


「弥美」

「に、兄さんこれは違うんです。私は好きで入ったのではなく、ただ匂いを嗅ぎたくなったわけでーーじゃなくて」

「昨日はごめん!」

「だからーーってふぇ?」


 僕はベッドの上に座る弥美と同じ目線くらいまで頭を下げた。


「誤って許されることじゃないってことはわかってる。けど、ほんとにごめん」

「あ、頭を上げて兄さん! あれは私が原因なのは分かってるから」

「ちょっとまって! それなら一番悪いの私じゃない!?」

「暁さん!?」

「あの時の......!」

「だって、梨彗君はただの被害者だし、弥美ちゃんは可愛い悪戯をしただけだし、私が間違えなきゃよかったんだよ!」


「「......」」


 とつぜんやってきた暁さんに僕と弥美は言葉を失う。

 下で待っててって言ったのに。


 暁さんの言葉を最後に静まり返ったこの状況で誰かが話し出すのかと思えば、以外にもそれは弥美だった。


「ぷっ......あはは! 兄さん暁さんだっけ、面白い人だね」

「あ、あぁ」


 弥美は笑い、僕と暁さんは状況が読み込めず口を半開き状態だ。


「普通兄弟げんかの最中に私が悪い! って言いだす人いませんよ」

「それは確かに」

「えっ、えっ!?」


 ひとしきり笑った弥美が僕の名前を呼んだ。


「兄さん。私は兄さんが好きだし、できるならずっと二人で居たかった。けど、当然そんな願いは届かないのは分かってたの。だから暁さん? ならいいよ」

「え、まじで?」


 そもそもまだ告白前の状態なのだが、この際それはよそに置いておこう。

「えっえっ」と慌てる暁さんが可愛い。


「それに......」


 ベッドから立ち上がった弥美が部屋の前でオロオロする暁さんに飛びついた。


「私前々からお姉ちゃんに甘えてみたかったの」


 何故だか分からないが先に外堀を埋めることに成功してしまった。

 少し前まで暁さんのことを邪険にしていた弥美と今の弥美とは比べ物にならない。まるで別人だ。


 弥美と仲直りができて嬉しい反面。

 誰に似てこんなにちょろいのか不思議な反面。


 まぁいいか。

 こうして僕は暁さんともし付き合った場合のボスを飼いならすことに成功した。



 ☆彡



 夜道を歩く二つの影。

 数メートル単位にあるいくつかの街灯だけが彼らの姿を捉える。


 時間はすっかり遅くなってしまい九時を過ぎようとしていた。

 というのもあの後、自宅に帰ろうとした暁さんが母さんと遭遇。せっかくだからと晩御飯を取ることになり、弥美と二人で話していた結果この時間になったわけだ。


 そして今この状況。誰にも邪魔されることなく告白するまたとないチャンスである。


「あの、暁さん」

「......はい」


 緊張で手が汗ばみ。

 彼女もまた同じなのか返事が少し硬いように感じた。


「今日......と言うより、この一か月間ずっと言おうとして言えなかったことがあるんだけど、聞いてもらってもいいかな?」

「......うん、聞かせて」


 すーーー。はーーーーっ。


 鼻で沢山息を吸って、口からその分吐き出すと少し落ち着いた気持ちになれた。



「暁さん、あの。よければ僕とーー










 お友達から始めてもらってもいいでしょうか!」








「はっ?」


 あっ。やってしまった。


 空気は最悪だ。

 暁さんは言葉も出ないといった様子で震えている。

 先ほどまでのしんみりした空気はどこへいったのやら。


 慌てて訂正しようとして暁さんの言葉に遮られる。


「そういえば今日学校で席替えがあったんですけど、私と梨彗君の席は真反対です。

 友達になりたいなら、当然話しかけに来てくれますよね?」


 はっ!? 席替えって嘘でしょ......?  


「ちなみに先生が『他校の不良生徒に喧嘩を吹っ掛けるような奴はちゃんと見ないとな』って言って教卓の真ん前の席に梨彗君なってましたよ」


 ......教卓の真ん前。


 膝から力が抜けてその場にへたりこむ僕をおいて、暁さんはスタスタと歩き始めていた。



 その時の彼女の顔色が真っ赤だったことなど、当然僕に知る由など無かった。





『この写真をばら撒かれたくなかったら。』 ~完~

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この写真をばら撒かれたくなかったら。 世良 悠 @syuumatudaidai92

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