第6話 変態は変態に吸い寄せられ何故か美少女も寄ってくる

「梨彗君よかったら私と一緒の班組まない?」

「おーい梨彗。よかったら俺と班組まねぇ?」


 僕は余りものの三人と組まされる運命なんだ。

 しかし、予想とは裏腹に僕の名前を呼ぶ声が二つ。一つは暁さんの声でもう一つは以外にも聞き覚えのある男の声だった。

 佐藤 宗三さとう むねみつ。このクラスにいる男子で彼の名前を知らないものなどいない、と思わせるほどに名の知れた男だ。そして俺の『あっしー君』なんかとは違い彼にも立派なあだ名がある。


 暁さんよりも先に僕の元に辿り着いた佐藤は僕の肩に腕を回すと、周りに聞こえない小さな声でこうつぶやいた。


「暁さんの絶対領域が撮れた」

「ふむ詳しく」

「彼女、委員長だからよく先生の雑用手伝っているだろ? 空き教室に荷物を置いた時の屈み姿勢。そこを撮ったんだ」

「今持ち合わせが無いから今朝買ったお菓子五百円分を後で渡しに行くよ」

「おっ太っ腹だね~毎度!」


 そう言い残すと彼は一歩身を引いた。


 彼のあだ名は『盗撮魔』。当然このことを女子は知らない。

 もし知られようものなら彼はこのクラスの女子から袋叩きにされ、学校側からも何かしらの罰を受けるだろう。以前なぜこんな真似をと尋ねたことがある。そうしたら、


『俺にとっての青春とはお前らとエロを語ることなんだ。その行く末が例え破滅だとしても、夢を少しでもかなえられるなら望んでこの身を投じよう』


 と、小型カメラが内蔵された眼鏡をクイッと持ち上げながら言ったんだ。


 初めは巻き込まれるのが怖くて関係を曖昧にしていたが、十八禁に引っ掛かる写真は撮らない。彼氏持ちは撮らないの精神を見ているうちに気づけば僕は心を許していた。


「梨彗君、佐藤くんと仲良かったんだね。意外な組み合わせでびっくりしたよ」


 くしゃりと、何処かぎこちなく微笑む彼女の笑顔に僕の鼓動は激しく波を打つ。


「う、うん。佐藤君は話しかけやすい雰囲気だからね。携帯でもちょくちょく連絡とってるくらいには仲がいいよ」


 まぁ話の内容は暁さん画像の売買ですがと、絶対出してはいけない言葉が出かけたのを慌てて飲み込む。


 そこでふと気づく。

 小柄の彼女の後ろにまるっと収まる更に一回り小さな女性がこちらを眺めていることに。


「梨彗君も知ってると思うけど小百合ちゃんを誘ってみたんだ。二人とも同じ係だから面識はあると思うんだけど」


 立花 小百合たちばな さゆり。彼女とは同じ数学係という小さな縁がある。

 物凄い人見知りなので会話をした記憶はあまりないが何度か二人で職員室に課題を持って行った記憶がある。


「えっと立花さん僕と同じ班で大丈夫だった?」

「私は、大丈夫。......梨彗君こそ私なんかが一緒の班で、いい?」


 彼女の声は今にも消えてしまいそうな小さな声だった。

 しかし『あっしー君』と呼ばれ、女子の敵となった僕でもいいと言ってくれた彼女はなんて優しいんだろうか。


「丁度四人いるしこのメンツで校外学習行こうぜ!」

「私は大丈夫ですよ。梨彗君と小百合ちゃんもそれでいい?」

「うん」

「......うん」

「じゃあ俺イス持ってくるから立花さんここに座ってて!」

「あ、ありがと......」

「じゃあ私は梨彗君の横に座るね」


 正面に立花さん、横に暁さんが座った。

 それぞれの筆箱が机に並び、暁さんが持っていたパンフレットも机に置かれた。


「でも、暁さんが僕と班を組んでくれるとは思ってなかったよ」


 立花さんに聞こえない声量で暁さんにひそひそと話しかけた。

 すると彼女はスッと目を逸らす。


「それはその......秘密をバラされた腹いせに私の秘密までバラされる。なんてことをさせないためにお詫びと監視を込めておりまして」

「......」


 そういうことだったのか。

 今朝彼女の例は十分に受け取っていたからすっかり忘れてしまっていたが、そりゃ出会って二か月のクラスメイトを信じろという方が難しいか。

 納得と同時に心のどこかで抱いていた僅かな期待が粉々に砕け散る。


「あ、でも。勿論梨彗君といるのは楽しいよ!」


 そういえば僕の秘密の件で有耶無耶になってしまっていたが、僕が暁さんのことを好きだということは伝わっていないんだろうな。


 初めての告白が脅迫として受け入れられ、彼女と同じ班になったことで一人、一喜一憂している自分がなんだか惨めに思えてくる。


「おっしイス持ってきたぞ。なぁ梨彗どこいくよー?」

「え、あ。そうだね。あー立花さんは何処か行きたいとことかある?」

「ふぇっ? わ、わたしは中華街にいってみた......や、なんでもないです」


 慌てて顔を隠そうとして落としたパンフレットは中華街のページが開かれていた。

 小籠包や肉まん春巻きの写真が大々的に掲載されていて、写真だけでもお腹が空いてくる。


「あ、や。これはその......あの」

「中華料理いいな!」

「うっ見てるだけでお腹が空いてくるね」

「じゃあお昼はここで食べ歩きしようか」


「立花さんもそれでいい?」


 勢いよく首を上下に振る彼女に僕たちからぷっと笑いが零れた。





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ここまでこの小説を読んで下さり有難うございます。

勢いだけで書き始めたこの作品ですが、起承転結で終わるくらいの短い作品で行こうと考えております。


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