34.アキラ、枝を切る。

 「いくらはアレルギー、そばもアレルギー。そんな宿主が歌います。」


「18番、アキラ。特訓の歌」


ぽぉ~~~(竹笛)パラパラパーンパラパラパーン(前奏)


電気で、芝を刈るぅ~~。切れないヨー。切れないヨー。(ムリダヨー)


おじいさん、素早い。ハヤイヨー。ハヤイヨー。ヤバイヨー。


デデデ、デレデレレ(サビ)デデデデデデデデン(サビ)


おじいさんスゴーイ、素早くで切っていくぅ~~。


はぇ~~~(驚嘆)、はぇ~~~(驚嘆)。ハェェェェ(´ Д `)ェェェェエ。


と、電気をブッパせずにうまいこと、省エネで芝を切ることに悪戦苦闘しながら、低木の枝を電気を纏わせたナガサの山刀で切っていく。


「カツ、カツ、ガッ。カツカツ、バキ。」


一本の枝に大体、三コンボ位切らなきゃいけない。


おじいさんも同じように鉈で、太い枝を切っていく。


「スパパパパパッーーーン」


鉈を振りかぶれば、片手に風を纏わせ、勢いよく振り切って、数本の枝がいとも簡単に切れていく。


Wow、お見事・・・。


「これさ精霊の力を込めたちゃ出来たことだべさ。お兄さんもいずれ出来るっけ。」


と、おじいさんは言うが、出来るまでの道のりは長そうだと、僕は額の汗を拭いながら、再び精霊の力を込めてナガサを降るのであった。


おじいさんの様に片手に電力を纏わす。そして、振りかざす。しかし、おじいさんのようには切れない。だが、それでも回数こなすしかないよ。いつか、切り裂けることを信じて。


「わしゃも、最初はそんな感じだったばってん、諦めずやるっぺ。」


と、おじいさんはすぅ・・・素早く柴刈りながら、応援してくれる。そう期待されたのなら、諦めるわけにはいかない。やるしかないよ。


嗚呼、なんか初めて補助輪なしで自転車乗ろうとしてた時のようで、うまいこといくようになるまで、何度も何度も挑み続ける。


なかなかうまく乗れなくて、投げだしそうになりかけたことを思い出す。それでも、諦めず、挑み続けたっけ。そうして、気付いたら自転車に乗れるようになっていた。


「カツ、カツ、ガッ、カツ・・・」


「カツ、カツ、ガッ」


切る切る、柴を懸命に切る、切り続ける。


 そして、その時は唐突に訪れる。


何度も柴を切り続けた結果、僕は最初からナガサの山刀に電気を纏わすのではなく、切る寸前のところで纏わすことを覚え始める。


力を入れ過ぎず、でも少なすぎず。丁度の加減でナガサの刃に力を押しこみ振りおろす。


「スパァーン」


快音を鳴り響かせて、枝が切れる。


その感覚、なるほど、こういうことか・・・。


その音に、


「おおお、お兄さん。うまくいったべさー。コツさ、掴めたんだな。よかったよかったな。」


そう言いながら、おじいさんはもはや鉈をブーメランのように投げて、スゥ・・・素早く旋風つむじかぜのように木々を一瞬で切る。


例えるなら、やっと自転車に乗れた人の前を、颯爽と一輪車で横切っていくおじいさん・・・。うん、その芸当は見なかったことにしよう・・・。


気を取り直し、コツさえを掴んでしまえば、後はもうひたすら切るだけである。


「スパ、スパ、スパ、スパーン」


おじいさんより、ツーテンポ遅れるものの柴が面白いように、切れる切れる。


うぉおん、今の僕は柴刈り機だ。切るぜ、切るぜ。


と、得意げになってどんどん柴を刈り尽くすのであった。

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