33.アキラ、泥味を感じる。

 バ、バババババーン。ババババーン。


レッツ、アナワルクッキング。


今回の料理はサケっぽい魚のお料理です。


材料です。


1、新鮮なサケっぽい魚の切り身(適量)。


2、水。


3、水辺に生えてた山菜(黄色と緑)


4、黒い粒みたいなきのみと何かの葉っぱ(適当)


以上となります。


 では、工程です。


まず、水をよぉーく沸騰させます。絶対に沸騰させてください。妥協したらすなわちピロリンを意味します。


次にそこへ切り身をダイヴ、そこに彩りを添えるかのように山菜。


後は蓋をしてじっくりと煮ます。で、その間に黒いきのみをこん棒のようなもので、リズムを刻んでビートを奏でます。


桃太郎さんほどのテンポが適切でしょう。


大体、激しく熱唱しはじめる変化が出てきた頃、料理の完成です。


白身魚の水煮ですね。わぁーーー、すごいシンプルでこれぞ「男料理」って感じ、これは味でごまかしが効かないからまずい時はまずいぞぉ・・・。


と、僕は内心これから待ち受ける。世代間による味覚の違いを危惧する。しかし、おじいさんの熱い眼差しを受けてしまっては食べるしかない。


そして、一口めを食べます。


「パク」


うーーーん、何と表現すればいいのだろう・・・。魚の脂と山菜のうまみ、泥味の苦みを感じます。例えるなら、遠いの方で苦味と旨味がこっちに近づこうとしている味です。


現代っ子には、考えられない味の薄さ、素材の味と言えば、聞こえはいいが・・・。


ちょっと、微妙。うん、おいしいはおいしいけど、もうちょっとアクセントが欲しい味ですね。


おじいさんは、僕の微妙そうな顔に気がつき、


「お兄さん、くろっこと一緒に食べれ。」


と粉砕された黒い粉と葉っぱをつけて食べるよう促す。


「パク。」


あ、スパイシーっぽい感じの味で、あっ、おいしい。


これ好き、おいしい。これ、すごくうまいと久しぶりの男飯に食が進み、食べる食べる。そうして、鍋にあったすべての食材をほとんど平らげてしまう。


「おお、ええ食べっぷりだ。うみゃかったけ。」


おじいさんの問いかけに僕は頷き、


「ちょっと、泥くさかったけどおいしかったです。」


そう思った通りの感想を述べると、


おじいさんは鼻に手を当てて、照れながら笑う。


「口に合ってよかったさ。さて、腹も膨れたことやし、片づけをすまして特訓でもすっけ。」


と、言いながら、どっこいしょ。とそんな感じに立ちあがり鍋を片づけた後、ツリーハウスの外へと出る。


「そいだば、ただ特訓してもしょうがねぇだば。少し柴刈りしながらやるべさ、ついてけれ。」


と、おじいさんと森へ柴刈りに行くのである。桃とか出てきそうと、僕は野暮なことを考えながら、これから行われる特訓に籠を背負って臨むのであった。

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