無言電話

ちゅん汰ぁ

無言電話

学生時代に多かった無言電話

固定電話あるあるの話かもしれない

そんなことを思い出し書いたフィクションである



特に長期休みの日に限って時々かかってくる

無言電話

まぁ、私も家にいることの方が多いから

そう思うのもしかたない

それに、1人でいれば電話に出ることだってある

出れないとしたら手が離せない時くらいだし

大抵の電話には出て

その内容を伝えなければならないからだ


そんなある休みの日のことである


今日も電話がかかってくるのだろうかと

そわそわと落ち着かずにいる

この無言電話には何度か鉢合わせているからだ

何度も「もしもし」と話かけるのだが

応答がないため、いつも


誰だろう?


と、疑問をもつ

気になって、気になってモヤモヤが残る

そして、こんな気持ちになるのだ


どうにかしてこの相手と話したい

暴いてみたい 知りたい


普通ならこんな無言電話なんて

気に止めないか

気持ち悪くて避けるか

そのどちらかになると思うのだが

私は違って

この受話器の向こう側の相手に

好奇心と興味を持ったのだ

どんな人がそこにいるのか


そして、私は一つの案を思いついた


もしかしたら、時々掛けてくる

無言電話の相手と話せるんじゃないか!と


バカな話かもしれない

くだらないかもしれない

話してくれないかもしれない

それでも試してみたいと言う気持ちの方が勝った


とりあえず今、思いつくことは

日時、時間を把握して

電話会社からの送られてくる

着信履歴を敢えて使わず


自力で見つけ出す!


と言う、その方向性に決めた


楽しむ為には、多少なりとも不利な状況を作り出さねば面白味がないからね!!


だが、

どのタイミングで掛かってくるのかわからない

その為、把握するにも時間がかかる………


そこを何とか解消しなければならない


それと、もう一つ

どうやって会話をするか!だ


無言電話の相手はちゃんとコミュニケーションをとってくれるのだろうか

そのまま、黙り続けてしまうのだろうか………


いろいろと疑問と不安は残るが

何とか会話をする為の方法を見出さなければならない


とりあえず、今思いつく方法は

至って簡単で

一問一答形式で相手に投げかけ、YESかNOかで

ノックしてもらえばいい、と考えた

YESの時は1回

NOの時は2回

まずは、このやり方でやってみようと思った




さて、そうと決まれば、まずは

何を質問するのか考えなければならない


いざ、二者択一の質問を考えるのは存外骨が折れるものだ

いきなり突っ込んだ質問するのは危険すぎるし

まずは、ジャブを打つつもりで軽い質問からにしてみよう


そこで、手始めに

「私のことを知っている人」なのか、もしくは

「私が知っている人」なのか

これは、どうしても聞いてみたい


知らない人ならば、今後その電話は無視すればいいし、なんなら警察にだって相談は出来る

それに、知っている人なら

多少は不気味さも消える ……?

のか、と聞かれてしまうとそれは嘘になる

少なからずとも不安はあるし、この意図してやっていることに疑問を持つ


まぁ、なんにせよ

その人の事について認識する上で

何も情報を掴めないままよりも

少しは身近に感じるだろう


そして、そこからの足がかりは

意思疎通が図れるならば、少しずつ狭めていく事だってできるはずだ


とにかく、思い付いたこの方法でコンタクトが取れるのかはわからないが

遊び半分で試してみようと思う


そう考えると次の無言電話も少しは楽しみになってくる




しかし、いくら待っても私の期待を裏切るかのように、無言電話はなかなか掛かってこなかった


前まで掛かってきた電話は、一時的なイタズラだったのか

もしくは、複数人での犯行で何か練っているのか


電話が掛かってくるまでの間、いろいろと思考を巡らせていた

それも埒のあかない堂々巡りときた

最終的には考える事に疲れ果て、半ば諦めていた



そんな数日たったある日

なんなら、私も忘れていたくらいにその時は来た


いつものように1人で留守番をしていると

私を呼びつけるかのように

けたたましく電話が鳴った


"もしかしたら…!”


と、少しの期待と不安を抱えながら

自分の部屋を出て階段を降りた


それから、リビングにある

電話の受話器をゆっくりと持ち上げた


「もしもし………」


呼びかけた私の声に返答がない


"無言電話だ”


いつもなら、ここで電話を切るはずの私だが

今日は違う

久々の無言電話に緊張するものの

前から決めていたことだ

実行しようと意を決した


「あ、あの…私の話を聞いてください……

これから、あなたにいくつか質問をします

yesなら1回、noなら2回、音を出してくれませんか?」


私は、電話口の向こう側の音に耳を澄ました

すると、


「………コン…」


と鳴った

"………………yesだ!!”


ついに、無言電話の相手と意思疎通を交わすことができたのだ


この調子で次の質問をしてみる


「あなたは、私の知っている方ですか?」


「コン…」


…yes


やはりこれは、手の込んだイタズラで

学校の誰かだろ……

私はそう思った

だから、次にこのような質問をしてみた


「あなたの事を私は、知っていますか?」


「……コンコン」


……あれ?私は知らない………??


いや、そんなことはない!

きっと面白半分でクラスの誰がやってて

私の反応を楽しんでるんだ!!

からかわれてるんだ!!

きっとそう!そうに違い!!


それに、もしそうだとしたら……!!?



何の為に…………



少し冷静になる



もし、そうだとしたら

話したことあるかもしれない


先程より少しうるさくなる

心音を落ち着かせながら

次の質問をしてみる


「私と話したことはある?」


「………コンコン」


……no


「私を見たことはある?」


「……コン」


…yes

一つ一つ紙にメモを取っていく


「それは、最近?」


「……コンコン」


……no


「じゃあ、もっと最近?」


「コン」


……yes



無機質な音のはずなのに

その音が次第に耳障りになってくる

繰り返される一定のリズムが更に

不気味さを感じて背筋が凍る

それに、ここまで聞いて引き下がれない!

変なプライドまでもが湧き上がってくる

それでも


「…3日前?」


「……コン」



繰り返す無機質な音……

鳴り止まない心音がうるさい

今すぐにでも受話器を投げ捨てたい

持つ手が震える

メモが取れない

呼吸が荒くなる


私は息を吸い、ゆっくりと飲み込んだ


「………………昨日?」


冷や汗が垂れる

声が震える


そして、意を決して恐る恐る質問をする


「…………今日?」


「コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン………………………」


今までにないくらいの無数のノック音

それと同時に込み上げてくる恐怖

鳴り止んだはずの心音が体中に

鳴り響き一気に血の気が引いた


私はすぐに投げつけるように電話を切った

興味本位でやらなきゃ良かったと

後悔した…


"これからは出ないでおこう”


そう決めて乱れた息を整える


これは、悪質なイタズラだ

今日だって家から一歩もでてないし

誰からも見られていないはず

もし、そんなことがあるなら


「今も見られていることになる……」


"いつ……!!?”


はっ!!として更に恐怖に脅えた


そんな独り言に答えるかように

玄関の扉から


コンコン………


とノックが聞こえ、静かな部屋に鳴り響いた




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無言電話 ちゅん汰ぁ @cozu-ktcya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ