第3話 抑圧



ーー早朝。


トイレも済ませ 着ているものを全て脱ぐ。


そうすると真っ先に目に入る贅肉だらけの醜い身体を見て顔を顰めた。


この贅肉のせいで着たい服も入りやしない。


床に置いていた体重計に乗ると……



ーー78.0㎏。


体重計の数値は、明らかに前より増加していた。



中学2年の頃 学校を転校し、

転校先ではうまくやろうと思ったものの

対人関係が苦手な私は結局ここでも孤立。


挙句に前の中学校で私をデブだ豚だと罵っていた同級生が転校した先の生徒とも繋がりがあったようで同じように罵られる始末。


転校して2ヶ月ほど

転校先の中学校は特に生徒も多かった為か、段々虐めや言葉の暴力もエスカレートし

それを目の辺りにしていた先生も

不良生徒を怖がる余り見て見ぬふり。

耐えきれず不登校となった私は、同級生がもう皆進路を考え始めてるその時まで外に出る事をせず、その代償はこうして数字になって現れた。



ただでさえブタやのに、、あと2キロで80㎏になるやん。。


高校では同じ過ちを侵したくない。

孤立したくない。それに、、まずは痩せたい!!!





母が 朝食が出来たと呼びに来る。


今日の朝食は


お好み焼き、ごはん、プリンーー


「……あの、ダイエットしようって前から思ってて お好み焼きならご飯はいらないし 後プリンも。」


そういうと不機嫌そうにこっちを見た母は

「余るから食べて。」と吐き捨てるように言った。



はぁ……

今回もまたダイエットできないのか……



うちの家庭は特に

ーー食べ物を残す

という事が両親とも嫌いで

テーブルに出された物は全て完食する様に強要されていた。


苦手だけど…

お腹いっぱいだけど…

食べないと怒られるし…


幼い頃から両親に怒られるのを恐れて

食卓に並んだそれらを無理してでも食べるようにしていた。


食べ物を残さないのは大事だけど

全ての食べ物を好き嫌いなく食べる事って不可能じゃないのかな?


……そんな様な事を幼いながらも疑問に思っていたと思う。




また 両親ともよく食べる方で

料理のボリュームもあり


ラーメン、ごはん、ケーキーー

肉山盛り、ごはん、パフェーー


勿論全く間食をしていなかったって訳ではない

だからこればかりが原因とは言えないけど。。


栄養の『え』の字すら考えずにただ異常なほど盛ればいいと思っている母の作るソレには嫌気がさしていた。


こんな炭水化物+炭水化物や脂質ばかりの食生活を毎日 残さず

朝、昼、晩ーー。

当然太るのは目に見えてるし

私も引っ括め うちの家族は両親、妹、弟

みんな丸い。


残すな、と 命じるのなら

もう少し考えて食卓に並べて欲しいと思っていた。




母のソレが嫌で

中学生の私は家庭科の授業で覚えた料理を作りたくて、自炊をしたいと頼んだが

うちの母親は 自分以外の者に、自分の空間であるキッチンを触られる事を過度に嫌う。


「あんた……私の作る料理が気に入らんの?」


「気分悪いな!!うっとうしい!!勝手に触らんといて!!」



こういうこともあり、母がいる時に キッチンで調理をするーー


という事を今の今までしたことがなかった。



友達はお母さんに料理の

作り方を教えてもらった

お菓子を作った

……と、自分の手作りクッキーを

持ってくる子もいたのに。




気が重くなるままに、プリンの容器を開けた。


食べたくない。。


私は基本母にどれだけ理不尽な事を言われても 反論できなかった。


ちなみに

少なくともみんな一度はするであろう

「 親との喧嘩 」というのをしたことが無い。


うちの母は機嫌が悪いと

我が子を八つ当たりの捌け口にする。

理不尽だと思い 言い返すと

今度は暴力をふるうため

それが怖くて何も言い返せなかった。

そんな自分も情けなかった。


そして

ヒヤヒヤしながら

母のか顔色を伺って生きていた。


わがままなんて言ったことない。

やりたい事だって我慢して

ただ 親の機嫌を損なわないように

ひっそりと生活していた。


理不尽な八つ当たりをされて

罵られたって ぐっと腹の虫が煮えくり返るのを耐えて堪えて黙っていた。


物心ついた時

ふと、母親を殺してやりたい

そんな衝動に駆られた事も何度もある。


夢にだって見た

母親を殺す夢。


こいつさえ

死んでしまえば

私は楽になるのにと。



ずっと

私は自分の身を守るために

自分の感情を言わずに生きていた。

……というか 暴力で子供に

自分の感情を言わさないようにしていたんだろう。



それは5歳離れた私の妹も

同じだったと思う。


妹も 母を恐れていた。

妹とは5歳年齢が離れていて

その下にもう一人、

弟は10歳年齢が離れている。


弟はうまく言葉を喋れない子で

言葉の代わりに泣いて訴えかける。

いつまでも言葉を話せない弟を

両親が心配して診てもらった所

脳のある部分が少し足らないと言われたらしい。

5歳離れた妹は普通の子だったが

あまり私達2人は姉妹仲は良くなかった。

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