第4話
「あれの官位を、上げると致すか?」
今上帝はさすがに最愛なる女御の縁者が、正七位下の陰陽博士では、都合が悪いという御考えに及んだ御様子だ。
それでも陰陽師の安倍朱明は、伊織の采配で従七位上の陰陽師から、陰陽博士へと出世していた。
何せ瑞獣鸞の女御も、朱明もそっち方面に対して無欲だから、最愛なる女御が朱明と親しくするのを、一国の君主たるそれも貴き天子でありながら、物凄ーく不快としておいでなので、ちょっと朱明に対して冷遇する処があって、放置を決め込まれておいでであったが、皇子がご誕生を機に、以前より御望みの皇后とするを目前として、ハタと朱明の地位が低い事を御考えになられたのだろう。これでは身分が低過ぎて、立后の儀式にも参加できない。
まったくもって、偉大なる大物青龍を抱きし、それは尊きお方でありながら、大人げ無いというか狭量であられるお方である。
「さようにございますな」
伊織はしたり顔で答える。
本来ならば、もっと早く御申しつけあられても然るである。
女御が内親王をご出産の折とて、金鱗とかいう魚精王が居る朱明の屋敷に、里下がりするつもりの女御であったが、何だかんだと御託を御並べの今上帝によって、伊織の屋敷に里下がりとなりご出産と相成った。
全くそんなこんなで、何故か伊織も瑞獣鸞女御の縁者となった為、この屋敷は今後皇后の里邸となりかねないのだが、一人身の伊織の屋敷の対屋というのは、世間体にもよくはないから、お屋敷を建てる話しをすると、そう云った諸々が面倒な瑞獣女御は、すこぶる不機嫌となられる。だから今回も対屋のご出産と相成った。
「私も何故か縁者として頂きましたので、後見とさせて頂きますが、それでも我が一族では、皇后様の後ろ盾と致しまして、難癖を御付けになられたい方々を相手には弱いかと存じます」
「……確かに……ならばそなたの父を大臣とし、宣旨致すか?安倍も、グンと上げるか……さすれば問題はあるまい?」
余程嬉しいのだろう、簡単にできるものではないが、今上帝は大盤振る舞いである。
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