第3話

 全身全霊をかけて愛しておられ、当然の如くその愛情をお返し頂いている、世に稀なる王家のご夫婦の形であろうと伊織は思う。

 高貴な身分のお方は、相思相愛のご夫婦は稀であるし、存在したとしても、政治の渦の中で心無い臣下達に、掻き乱されるがオチであるのは、歴史の中で物語っている事実だ。

 瑞獣女御は後宮で勢力を持たぬ女御となっている為、寵愛を独占するのは困難だが、そこは瑞獣のゴニョゴニョで今迄は来たが、これが皇后ともなれば話しは別だ。第一皇家や大臣意外の后妃が、立后したのは遥かいにしえの事だ。大臣を始め、廷臣達が納得するはずがない。

 天子はその尊い血を繋げて行き、この国を平安に治めなくてはならない。その為には、妻である皇后の実家の強固なる権力で、廷臣を上手く纏めて貰わねばならいからだ。

 いくら瑞獣女御が、いにしえの天子を父と兄に持っていようと、尊き皇家の姫君様だとしても、現在いまの御立場は、後ろ盾が無いに等しい女御だ。皇后となっても、宮廷内の風当たりは厳しい。

 だが大神が御寵愛の女神と神が母と兄であり、それは尊くスケールが半端ないお方がバックについている。瑞獣女御が望めば、たとえ先例を引き合いに出して難色を示せども、今上帝が最愛なる身分の低い女御を皇后とする事に、横槍が入る状況になるはずがない。

 そしてその女御は、今上帝のそれはそれは巨大な青龍を抑えていて、それ程の力を今上帝が、女御を愛して与えているというのだから吃驚だ。

 だって言うまでも無いが、デカ過ぎる物を抑える力とは、計り知れない力が必要で、その力を瑞獣鸞ずいじゅうらん女御にょうごは、今上帝の愛を糧としてエネルギーにしているのだから……。今上帝の御寵愛恐るべし……である。

 そのの在処を疑うとは、瑞獣鸞の女御の独占欲には、開いた口が塞がらない伊織である。


 ……しかしあの女御の事だから、を望まれるとは思えない……


 内裏に御還り頂いたら正式に立后となるのだろうが、実に気が重い伊織である。


 ……またまたお二人の間に挟まれて、いろいろ大変なのだろうなぁ……


 今上帝の御気持ちは解り過ぎるが、気の重い伊織である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る