第31話 銀髪美女と急接近

 紗雪はこの日に食べたりんご飴の様に顔を真っ赤に染める。同時に目が明らかに動揺していることを伝えている。今まで見てきた紗雪の中では一番照れていると言っても過言では無い様子だ。

 そんな紗雪とは裏腹に、蒼の目は真剣そのものだった。その眼差しは紗雪にストレートボールを投げる

 

「ちょ、ちょっと蒼君!?さ、流石の私もいきなりそんなこと言われると……焦るわよ。傍にいて欲しいって……どうゆう意味?」


「どうゆう意味って、そのまんまの意味だよ」


 逆に他にどんな意味があるのだろうかと蒼は疑問に思う。

 紗雪はやはり焦っている。体をモジモジ動かして落ち着きがないようだ。


「そうだわ!花火も終わったけどお祭りはまだまだ続くわ!そ、そうね……あ!かき氷食べましょう!かき氷!」


 分かりやすく話を変える紗雪を見て蒼は思わず微笑を浮かべてしまう。あの白崎紗雪か焦っているのだ。可愛い以外の言葉が見あたるはずがないだろう。


 蒼はここで無理に返事を聞くこうとはしなかった。紗雪に言われるがままにかき氷を買いに行く。


 花火も終わり祭りもまだ続くとは言え時間はもうかなり遅い。小中学生はもうほとんど見られず、高校生以上が多く見られる。


 かき氷の屋台に向かって歩いていると一歩前を歩く先程まであからさまに照れていた沙雪がスッと蒼の隣に並ぶ。


「沙雪……?」


 蒼が沙雪の名前を呼んだ次の瞬間、蒼は左手が何かすごく柔らかくて細くて小さいものに包まれるぬくもりを感じた。

 その瞬間蒼の心臓は一瞬にして跳ね上がった。全身が火照るように熱く何かに包まれている左手には手汗を感じる。


「……傍にいて欲しい」


「え?」


「だから……私も蒼君に……傍にいて欲しい」


 思わぬ言葉が飛んできた蒼は、追い討ちをかけられるように更に心臓の鼓動のビートを上げられる。


「傍にいて欲しいってことは……」


 蒼が信じられないといった顔で沙雪を見つめていると、沙雪も頬を赤くした顔で微笑み返す。


「傍にいて欲しいってことは……よ」


 そういうこと……

 蒼は心の怒底から感じたことの無い嬉しさをしみじみと体で体感している。


 蒼と沙雪は手を繋ぎながらかき氷の屋台へとまた歩き出した。他の人達の視線を感じて蒼はどぎまぎしているが沙雪はいつも通り澄ました顔でいつも通りに歩いている。


「あ!着いたわよ。早く食べましょう!もう暑くて暑くて仕方がないわ」


 沙雪に引っ張られるままに蒼も屋台の店主に注文をしようとした。


「メロン味のを……」


「ちょっと待った!」


 蒼が注文しようとするとつかさず沙雪が注文を遮った。


「大きいサイズのメロン味のかき氷をください」


 一つ?二人いるのに一つ?蒼は沙雪の謎の行動を不思議に思っている。


 すると一分弱で注文したかき氷が届く。


「兄ちゃんたち、ずいぶん仲良しだな!おじさんキュンキュンしちゃうよ~」


「ありがとうございます!行くわよ、蒼君」


 沙雪たちは会計を淡々と済ませて屋台を後にした。

 

 少し歩いて蒼たちはすぐ近くの橋の下にある河川敷に座り込んだ。


「暑いわね。さ、早く食べましょう!」


「あ、あぁ。てか、どうして一つしか頼まなかったの?俺はメロン味でよかったけど沙雪は好きな味食べられなくなっちゃったじゃん?」


 沙雪は蒼の質問にニヒッとした沙雪スマイルを浮かべて答える。


「これから先、お互い傍にいるんだったら互いの好きな食べ物だったり趣味を共有していくべきじゃない?だから今回は蒼君が好きなメロン味を私も味わおうと思ってね」


「それだったら二つ頼めばよかったんじゃない?一つだったら、ほら……その……」


 蒼は何だか気恥ずかしそうにしながら何か言うことを躊躇している。


「間接キス……になっちゃうから」


 蒼の発言に沙雪は思わず笑ってしまう。しかも少しツボに入っている。


「あはははは、蒼君……それは可愛すぎるわよ、はははっ!」


「だって!沙雪は恥ずかしくないのか?そういうの」


 蒼は顔を赤く染めながら必死に言葉を吐く。


 すると沙雪は笑いすぎて乱れた髪を耳に掛けてうなじを少し覗けながら当たり前のように言う。


「蒼君、いや……蒼。だって私たち……もうカップルでしょ。そんなこと全然平気よ」


 その時の沙雪は今まで見せたことの無い新しい笑顔だった。クールで大人っぽくもなく可愛らしい笑顔ではあるがいつもの可愛らしい笑顔ではない。


―――恋する女の子の笑顔だった。

 

 

 

 

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隣の席の白崎さんが俺にだけ「かまってちゃん」で可愛いすぎて困るのだが? 小村 イス @gakumamon

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