今日のできごと

白野 音

2020年6月22日

 ああ、疲れた。足がパンパンだ。今日は顧問がいなかったけど部活は結構ハードだった。ふくらはぎと背筋を結構痛め、明日は休みたいくらいに頑張ったと思う。

 胸のポケットに入っているスマホにイヤホンを刺し、左耳に押し込む。いつもと同じ音楽が流れる。死んでるような毎日、同じ毎日で飽き飽きする、そんなことを考えながら自転車をこぎ続ける。そういえば将来の夢がテーマのエッセイを26日までに書くんだったと思い出し、ショッピングモールに寄ることにした。


 昨日も親と来たんだから原稿用紙くらい買えば良かったなと思いながら100均で原稿用紙を買った後、夜食を買おうとスーパーに寄った。

 さて飲み物を買おうかと飲み物のコーナーに進んだとき、ある女性が目についた。間違いはなかった。完全にあの子だと思った。

 ぱっつんで少しすいてある前髪、綺麗に整えられたポニーテール、メタリックなゴールドの小さい丸眼鏡。それを見ていたら棚の奥に隠れてしまった。ストーカーじみているとは重々承知しているが俺はあの子だと確かめたかった。冷凍食品を見ているふりをしてその子を見てみる。

 人差し指で親指の付け根を押す手癖、ぎこちない笑い方。あの子だった。俺の初恋の人だった。小学6年のときに恋をしたあの子だった。


 今日学校があったはずなのにピシッと綺麗に伸びているシャツに形の整った十字の入ったスカート。それに対して俺は袖口はよれていて、左足の裾は少しほつれている。分かるだろう、逆だ。彼女と俺は逆だった。

 正直声をかけたかった。もしかして○?覚えてないかな、小学生のときに児童会長をやった○○なんだけど、と。

 でも声をかけられなかった。小6のときと同じだ。あの卒業式のときにしっかり好きだと伝えられなかったときと同じだ。

 逃げるように2Lの烏龍茶を買い、その場を離れる。住んでいる世界が違うような感じがした。綺麗な彼女と汚れた俺。空の住人と地の住人のように。


 自転車までのながい道のりを歩いている時に色々と思い出した。仲良しの男子に告っちゃえよーと煽られていたこと。中高一貫に進むんだって、高校入学でそこ行っちゃえば?と女子に言われたこと。そして彼女の色々なこと。

 今となっちゃ告れば良かったなと思う。



 俺の人生では二つの大きな後悔をした。

 一つは君に好きだと伝えられなかったこと。

 もう一つはこの高校を選択したこと。


 一つ目は今日消化できたのにな。色々俺は知りすぎて汚くなったよ、君はどう?将来の夢は?いくらでも質問が出てくる。

 君はあの頃より綺麗になっているよ。俺は違うけどね。君は変わったね、笑い方なんかは変わってないけど。

 俺は変われてなかったよ。あの時と同じ臆病者だ。



 雨の降りそうな空模様の中、自転車で走る。

 いつもと同じ、だけど違う気がした。




 雨が振りだした。

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