第3話 中村


オランダ出身のヨハンであったが

彼はサッカーを学問と捉えるスペインへと渡り、専門学部を卒業しライセンスを取得。

その後彼は全世界のサッカーを見るために旅行をしていた。

映像でなく実際に体感することで彼の目指すべきチームへのパーツを探すことにしたのであった。

その中で彼の興味を引いたのは日本であった。



話は変わるが、

何故彼がサッカーの監督を目指そうとしたのか。

三つあり、

一つは金である。

もう一つは名誉である。

そして最後の一個はサッカーに対する愛であった。

ヨハンは元々身体も弱く、喘息持ちだった為に運動はあまりしてこなかった。

その彼がスポーツにハマったのは

彼の中での永遠のヒーローであるミッシェルである。

フランス代表の10番を背負った彼は

優雅で華麗なプレーをして全世界のサッカーファンを魅了し続けた。

そのプレーに一喜一憂していたのが

10代のヨハンであった。

そんな彼のアイドルであるミッシェルの念願であったワールドカップの決勝戦。

彼は何も仕事をさせて貰えずフランスは敗北した。

代表でも彼は別格だったため、彼のチームのようなものであった。

そのため彼の出来でチームが決まると言っても過言ではなかった。

ただ短期決戦のチームであり、彼は前年に世界最優秀選手にも輝いている。

そんな彼を使わない訳もなく、心中することを監督は選んだ。

決勝戦までの疲労、プレッシャー。

その大舞台で最後彼は輝けなかったのであった。

その時ヨハンは決心をした。

ミッシェルほどのプレイヤーでも無理なことはある。

そして勝率というものを運という不確定な要素でのギャンブルにせずに、いかにリスクを減らしてマネージメントを取るというやり方は無いのか?

そこで彼の未来は確定したのであった。



そして話は戻り日本。

彼は彼の頭の中を理解してプレーに落とし込めるプレイヤーが欲しかった。

その中で日本人の気質は合っていると

ヨハンは度々思っていた。

そしてどのプレーもある程度の水準で出来ること。

その基準をもクリアしていて、素晴らしい選手を見つけた。

それが中村であった。

23歳の左利き。

彼はチームで潤滑油の様なプレーをしていた。

奇しくも彼もミッシェルへの憧れを抱く青年であった。

彼自身はドリブルで抜くことに快感を得て、テクニカルなプレーも好むが、昨年の怪我もあり、今はリスクを減らしパススピードの方がドリブルより早いという彼なりの理念からパスを好んでいた。

ポジションはボランチを任されていた。

ボールに絡む時間が長くなるということと、全方向に気を張るので将来的に繋がるとコーチ陣が思ったからであった。

中村の守備能力は低い。

しかし彼のプレーはショートカウンターを理想とするチームにおいて水運び的な役割で必要だったのである。

彼の状況把握能力は特質なものをもっている。

それはセンスとも呼ばれるもので監督からも重宝されていた。

だが彼自身の憧れはトップ下である。

ミッシェルと同じポジションの。

その葛藤から移籍先を代理人に探させ始めたところであった。


そこで運命の出会いがあり、導かれるように

ヨハンのいるスペインへと翌年移籍するのであった。

だが彼のポジションは相変わらずボランチであったが。


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