解答編
私は調査の結果を一通り説明した。職員室で担任を持っている教師をまわったこと。調査の結果、クラスには同じ誕生日のペアが必ず存在すること。
「で、結論は?」と
「クラス編成は教師はやっていない」
「え、じゃあ、誰がやってるんですか?」
小林君がメモをすばやく取り出した。
「そ、それは、謎の組織が……」
「……」
「……」
全員無言だった。こんな重い沈黙生まれて初めて経験した。
「はん!」と
「
「え、僕ですか?」
自分に振られることをまるで想定していなかったかのように、小林君はきょとんとして私の
「えっと僕は、そのー」と小林君が言う。
「聞き込みしたんですが、結局何もわかりませんでした」
ボキッと大きな音がした。何事かと思ってみると
「各教室回ったんですけど、みんな部活にいてあまり人がいなくて。残っていた何人かに聞き込みしたんですけど、みんな友達の誕生日を知らないんですよ。男子なんて特にそうですね。別にプレゼントを贈りあったりもしないし。しょうがないんで部室に帰ってきました」
「ということはだ。君は自分の仮説の理由を探るどころか仮説の証明すら出来なかったこと言うことか」
わなわなと
私は
「よし
「
○○くんと呼ばれた小林君は絶望的な顔をした。
「今後、君のことは○○くんと呼ぶ」
「
「ふん、まあ、いい。どうでもいい。こいつの
ダイオウグソクムシでも見るかのように小林君を
「結論から言おう。クラス替えは教師の仕事だ。実は昔、教師に聞いたことがあるんだ」
聞いたことがある。え、そんなのありなの?と私は思った。この短編は仮にも推理ものなのに?という疑問があったが、よく考えれば私も教師に聞けばよかった。クラス替えって誰がやってるんですか?と。
「まあ、早まるな。問題は誕生日の件だろ。コレには流石の私も少しだけ考えた。まあ、5分ほどな。そして思いついたよ。これは単なる数学の問題だ」
はあ、と私と小林君は顔を見合わせた。
「ちょっと頭をひねればわかる確率の問題だ。ホワイトボードがあればちょちょいのちょいだ」
「50人いるクラスに同じ誕生日のペアがいる確率を調べる。そのためにはまずは逆を考えればいい。つまり誕生日が誰も一致しない確率を計算するんだ。まず1人目と2人目が一致しない確立は364/365だ。次に3人目が最初の2人に一致しない確率は364/365×363/365だ。これを50回繰り返す。そうすると50人のクラスに誕生日が誰も一致しない確率が計算できる。そうするとほら」
ホワイトボード上で暗算していくのを私と小林君はただ黙って見ていた。
「ほらほら!出た。3%だ。50人が1人も誕生日が一致しない確立は3%。つまり97%の確率で誕生日が同じペアが存在する。要するにそこに教師の意図も偶然も存在しない。誕生日が同じペアが存在するのは必然というわけだよ」
証明終了、といって
私と小林君は顔を見合わせる。
「どうした?あまりの鮮やかさに恐れ入ったのか?」
「いや、確率とか言われても」
私は
「僕、まだ数学で確率習ってません」小林くんがきっぱりと言った。
バキッとまた大きな音がする。半分に折れたマーカーをさらに半分に折ったのだ。
「お前らは……!」
ちょうどそのとき、きーんこーんかんこーんと上手い具合に鐘がなった。
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