第6話 運命の歯車

ついに来た金曜日。

昨日ゆかに色々やってもらって。

それでもドキドキが止まらない。

駅までの道。

気のせいか人とよく目が合うような。

キョロキョロしすぎなのか?

ゆかに教えてもらった化粧も、髪型も、自分なりには昨日と同じにしたはず。

見た感じも昨日と一緒。

大丈夫!

自分にそう言い聞かせる。

待ち合わせ10分前には着いた。

まだセイヤは来ていない。

っとその時。


セイヤ「あれっ!?かすみちゃん?」

かすみ「こんばんは。」

セイヤ「うわーっ、驚いたー。」

かすみ「えっ?」

セイヤ「あっ、まずお店入ろっか。」


カランッ


小さなお店だが、洋風なお店の中はまるで異国のようだ。

古い柱時計にアンティークなテーブルやイスも、まるでおとぎ話の世界。

この空間だけ時間が止まったような、朝方にみる夢の中にいるような。


かすみ「うわー、素敵なお店。」

セイヤ「嫌いなものある?」

かすみ「いいえ。」

セイヤ「じゃあ、おまかせで大丈夫?」

かすみ「私はなんでも。」

セイヤ「すいませ〜ん。Aコース2つ。」

かすみ「コース料理?」

セイヤ「そんないっぱいじゃないし、そんなに高くないし、誘ったからおごるし。」

かすみ「そんな、悪いから払うよ。」

セイヤ「いいの、いいの。気にしない。」

かすみ「でもー。」

セイヤ「ご馳走させて下さい。」

かすみ「は、はい。ありがとうございます。」


初めての男性との食事。

そしてセイヤの紳士的な対応。

ドキドキしていると。


セイヤ「ごめんねー。迷惑だった?」

かすみ「いいえ。私でよければ。」

セイヤ「かすみちゃん彼氏とかいるの?」

かすみ「いいえ。いないです。」

セイヤ「えー、こんなに綺麗なのに?」


…綺麗?私が?


セイヤ「いつもは自然な感じでそれも良くて、お化粧したら超美人だし。」

かすみ「私、そんなんじゃないっ!」

セイヤ「いや、素敵だよ。」

かすみ「えっ!?私が?」


『お待たせいたしました。』


次々に運ばれてくる料理。

どれも美味しい。

普段は食べないがなんか懐かしい。


セイヤ「どう?美味しい?」

かすみ「うん。とっても。」

セイヤ「よかったー。」

かすみ「お店も素敵だし。」

セイヤ「デザートはどっちにする?」

かすみ「私はこっちで。」

セイヤ「あれ?イタリア料理好きなの?」

かすみ「えっ!?」

セイヤ「よくデザートの名前だけでわかったなと思って。」

かすみ「あっ、あのっ、こっちかなって、あの、名前可愛かったからっ。」

セイヤ「ハハハッ、面白いねっ。」

かすみ「あっ、すいません。」

セイヤ「いや、なんか新しいかすみちゃんを見れた気がして。」

かすみ「あ、はー。」

セイヤ「かすみちゃんっ!」

かすみ「えっ!はいっ!」

セイヤ「僕と付き合って下さいっ!」

かすみ「えっ?どこにっ?」

セイヤ「そーじゃなくてっ。」

セイヤ「僕の彼女になって下さいっ!」

かすみ「えーっ!!!」

セイヤ「いきなりだけど、前から素敵だと思ってて、自然な感じとかが。」

かすみ「あっ…」


いきなりの告白、人生で初めて人から告白されて頭は真っ白。


セイヤ「かすみちゃんの事大切にします。」

セイヤ「だから僕と。」

かすみ「私、そんな、根暗だし、無趣味だし、地味だし、そのー、」

セイヤ「そーいうところ全部良くて。」

セイヤ「お互いまだ知らないとこ沢山あるけど、大事にします。お願いしますっ!」

かすみ「えっ?私なんかでいいんですか?セイヤさん素敵だし、私なんか。」

セイヤ「かすみちゃんがいいんです。」


…こんな私でいいのかな?


かすみ「本当に私でいいんですか?」

セイヤ「もちろん!」

かすみ「こんな私でよければ。」

セイヤ「じゃ、オッケーって事?」

かすみ「うん。」

セイヤ「あっ、じゃあ、今日からかすみちゃんは彼女って事で!」

かすみ「はいっ。」


初の彼氏。

しかも告白されてという大快挙。

信じられない。

何もかもが急に訪れた感じで。

21時すぎにはアパートに帰ったかすみ。


コンッ

窓に何かぶつかった。


ゆか「おーいっ!」


ガラガラ


かすみ「あっ、ゆかちゃん!」

ゆか「今大丈夫?」

かすみ「うん。大丈夫。」

ゆか「ねー、こっち来ない?それとも行っていいなら行っちゃうけどっ!」

かすみ「よかったら来るー?」

ゆか「あっ、行くーっ!ちょい待ちっ!」


なんかホッとする。

ゆかとは昨日から仲良くし始めたばかりなのに、声を聞いただけで安心できる。


コンコン


かすみ「あっ、はーいっ!」

ゆか「おじゃましまーすっ。」

ゆか「へー、綺麗にしてるね。って、物無いなー、この部屋。」

かすみ「うん。必要最低限あれば。」

ゆか「でもなんか、そのソファー!すっごいのあるねー!」

かすみ「あっ、一人暮らしする時に親が買ってくれたの。このテーブルと。」

ゆか「これーっ!?」

かすみ「えっ?このテーブル?」

ゆか「うんうん。凄い…」

かすみ「私よくわからないの。」

ゆか「なんとっ!でも、かすみちゃんらしいねー。興味ありませ〜ん、って感じが。」

ゆか「あっ、そんな事よりどーだった?」

かすみ「ゆかちゃんに色々教えてもらったとおりにやったら勇気でた。」

ゆか「んでっ、その人とは?」

かすみ「付き合ってって言われた。」

ゆか「えーっ!!」

ゆか「んでっ!?」

かすみ「付き合う事になった。」

ゆか「はーっ!?いきなり〜?」

かすみ「いい人だし。」

ゆか「そんな簡単で大丈夫ー?」

かすみ「うん。多分。って言うか付き合うの初めてだし、よくわかんない。」

ゆか「は〜、そっか。」

ゆか「まっ、でもおめでとうっ!」

かすみ「ありがとう。」

ゆか「先越されたぁーっ!」

かすみ「ゆかちゃん彼氏いないの?」

ゆか「いませんが……なにか?」

かすみ「えーっ、可愛いのにー?」

ゆか「性格…じゃないっすかっ。」

ゆか「それよか、どんな人?」

かすみ「そこの川沿いあるでしょ。そこで散歩してて偶然会った人。」

ゆか「散歩〜??」

かすみ「言ってなかったっけ?私、散歩が唯一の趣味なの。」

ゆか「ふーん。散歩かー。」

ゆか「私もしよっかな〜、散歩。」


初めて彼氏ができて、友達もできて、少し綺麗にもなって、順調そのもの。のはずが…。

運命の歯車は大きく動きだしていた。


第7話に続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る