11駅目 代々木

 色鮮やかな色打掛。それを纏った華やかな笑顔を見せるお嫁さん。愛おしそうにお嫁さん見つめる旦那さん。

 明治神宮では、和装結婚式が行われていた。そこにいる全員が2人の幸せを願い、祝福する。私の親友が結婚したのだ。

 そう、親友が。


 失恋して私の家に来てはわんわん泣いていた親友は、いかにも誠実そうな男を見付け、結婚を決めた。

 そんな親友のことを私は好きだった。

 そう、親友を。


 私も親友の幸せを祈らない訳では無い。むしろ、誰よりも幸せになって欲しいと願う存在。私の幸せを削ってでも。


「亜紀ちゃんも2次会くるでしょ?」

 そう言われ、明るくもちろん!と答える。

 2次会とやらは、あの2人らしく派手な披露宴などはせず慎ましやかな小洒落たレストランを貸し切り行われた。


「亜紀、来てくれてありがとう。」

 親友が急に真面目な顔付きで言う。そんなところが好きだ。でも、もう私の場所はどこにもない。

「当たり前でしょ、私たち親友なんだから。」

 そう、親友だから。


 2次会も後半に差し掛かり、酒で気も声も大きくなった人達が楽しげに語らう。私はそっと抜け出し夜風に当たりながら歩く。秋口に入り、少し肌寒いが酔い覚ましには丁度いい。


 特にあてはなかったが、「代々木八幡宮 250m →」という看板に目が止まり、向かう。昼間には何度か来たことはあったが、夜に来ると灯りなどはなく、よく作り込まれたホラーゲームのような雰囲気に足が竦む。でも、歩くことを辞めず中を探索する。


 夜目に土の塊が映る。いや、建物か。しかも昔の。あー、これが代々木八幡遺跡か、と納得し近付く。竪穴式住居なんて教科書でしか見た事ないが、こんな都会のど真ん中にあったかと思うと案外身近に感じる。


「昔から恋愛は男女でするものだったのかな。」

 急に横から声がして思わずはね返る。声の主は、同い歳くらいの女だった。

「驚かせてしまってごめんなさい。」

 女は謝るが、そこに申し訳なさは微塵にも感じない。

「ああ、大丈夫です。男女が恋愛してきたから私達がいる。だから、昔から恋愛は男女がするものだったと思います。」

 至って普通の答えに自分自身で傷付く。


「そんなこと誰が決めたんですかね。神様ですかね。アダムとイブが女同士、男同士だったら違ってたんじゃないかな。でもそれを決めたのも神様か。だとしたら、神様はつまらない存在ですね。」


 女はふふっと笑い、私を見る。特別美人という訳では無いが、ウルフカットのロングヘアが良く似合っていた。


 女が私の手をとる。どちらも話さず、その場を後にし、ちょうど良さげなHOTELに入る。ドアを閉め、どちらからともなくキスをして、2人でシャワーを浴びる。


 決められたように私が下になり、女が上に跨る。女は私の膨らみをやわやわと撫で、突起物の周りを指でなぞる。触れそうになるとまた離れてを繰り返す。

 焦らされておかしくなりそうになった瞬間を見計らい、きゅっと指で掴まれ、思わず身体が反り返った。


 女の手が私の秘部へと伸びる。下から上へと何かを探るように滑らせていた。触れて欲しい場所をかする度に甘い声が漏れ、十分に満たされていた。


 女の顔が触れていた場所まで下がるとぴちゃぴちゃと音をたて舐め回す。私は堪らなくなって限界を迎えたが、それでも女は辞めない。私も奉仕したくなり体勢を変え、互いを舐め合う。


 たとえ、この空洞が埋められなくても構わない。埋められなくて上等だ。それが私なんだから。


 気持ちは盛り上がり、一気に2人で登り詰める。ベッドに並んで眠りについた。


 目が覚めても女が隣にいることを願って。

 私と君の幸せを祈って。

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