ちょっと いいこと

 普段は穏やかな

 琵琶湖の奥、マリーナがある


 あなたは私に何も聞かず

 いつもそこへと運んでくれる


 今年は花火あるね

 そうだな。


 あなたは遠くを見る

 私はそんなあなたの

 横顔を見る。

 あ

 ちょっと待って。


 なに?

 あ、動かないでそのまま。

 私はあなたの髪の中に

 白いものを見つけた。


 これ、白いの。

 どうする?


 なんてことないさ。

 一本だけのは

 ちょっと良いことがある証。

 

 おまえさんだって

 探せばあるんだろうな。


 いやだわ。

 でもそうか、知り合ってもう

 何十年が過ぎただろう。


 いつもあなたの横顔しか見ていない 

 そんな、気がする。

 暮れなずむ 奥琵琶湖の湖畔。

 ヒグラシが鳴いている。


   了

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