ほたる

そろそろらしい

あなたが言う

いつもの川に行こうと決めた


天気予報は毎日雨で……

紫陽花がたくさん咲いている

地味な場所に行こう


ほら、

やっぱり雨じゃない

人も多くなったねえ。

私が言うと

頬をつねる。


じゃあ、もう来年から

やめだ。


その横顔の向こうに

緑の明かりが浮かんでは消える

蛍だよ

あなたの肩を持つと

川面に向ける。

今日はそんな話したくない。

あなたは膨れた顔をして

眼鏡を拭いた。


ほら、

あそこにたくさんいるよ。

私を

どうしても右に置かないと

だめなのね、あなた。


つないだ手はそのままに

あなたの後ろから回り込んだ。

座る場所を探しても無駄。

だから雨だって言ったじゃない。


あなたの膝の上に座った。 

来年は晴れるといいね、

来年があるだろうか、

それでいいよ。

蛍は口実で

ただ

会いたかっただけ。

お互いの顔色ばかり見ている。

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