第7話 手荷物確認

「ここはどこ?」


 そう言って回りを見渡すと学校の教室位の広さの石畳の空間にいた。

 壁や天井の雰囲気はドラマやアニメで見る何かしらのお城の玉座の間に似た感じがして、赤絨毯が合いそうだ、それにしては小さいか?


 出入口は1つ、室内にはシンプルな玉座が1つとそのとなりに台座に乗った銀色のボーリングの玉のようなものがある。

 銀色のたを覗き込むとそこには黒髪でスポーツ刈りが少し伸びたような髪型でイケメンでもなく不細工でもない(と思いたい)少し眠たそうな顔が映り込んでいる。


 うん俺の顔だった。


 でも少しちがっていて、髭が生えておらず、シワも少なく隈もなくなり、高校生の頃まで若くなっている。

さらに、黒かったはずの瞳の色が右目だけ茶色になってる。

 そして顔だけでなく全身を写してみると身体の周りにもわっと何かがまとわりついているような感覚がある、夏場の蒸し暑い熱気のような感じだ、暑くは無いのだが感覚としては似ている。

 ほかにも一人暮らしの不摂生な生活で落ちてしまったはずの筋肉も若い頃に戻っているようだ。


 なるほど。


「異世界に生まれ変わったんだったな」


 さっき神様と話していたのは夢ではなかったらしい。

 生まれ変わった時にある程度の年齢で生まれ変わらせてくれると言っていたが高校時代の一番体力があった頃の肉体に若返ったんだ、瞳の色は魔王の証しかな?

 身体の周りにまとわりついているのは魔力かもしれない。


「えーっと、持ち物確認でもしようかな?」


 落ち着くためにも現状確認をしたいので簡単な持ち物確認から行う。


 自分の服装は白の長袖のシャツ、黒のフード付きでポケットの多いジャンパー、ポケットの多い紺色のチノパン、白の靴下、青と白の運動靴。

 後は黒のウエストポーチと大きめのリュックサックだ。

 動きやすさを重視しつつ沢山の荷物を待てるように積載量第一で選んだ服装だ。


「今の服装は生まれ変わる前に出掛けたときの服装のままみたいだ、服のサイズは体型の変化に合わせて微妙に変わっててありがたいな。

 ポケットの中身はスマホと財布と鍵と手帳とメモ帳とシャーペンとチューイングガムとライターか、これもそのままだな」


 スマホ、財布、鍵、手帳はいつも持っていた、メモ帳、シャーペンは買い物に出掛けていたのでリストを書き込んでいた、ガムはトイレに寄ったコンビニで買った、ライターは知り合いが煙草を吸うので持っている、たまに借りに来るのだ。

 俺は煙草を吸わない。


「ウエストポーチの中身は、無い?」


 ウエストポーチの中に手を入れてみたら物が当たる感覚がない。

 生まれ変わる前にはウエストポーチがパンパンになるくらい中身が詰まっていたはずなのに今はしぼんでしまっている。


「色々入れてはずだけどゲーム機とかは?」


 電車やバスでの移動中の暇つぶし用に携帯ゲーム機を持っていたのだがウエストポーチに入れていたものの中では一番高価なものなのでそれの紛失は勘弁願いたい。


 そうやって具体的に出したい物を思い浮かべるとウエストポーチに突っ込んでいた手になにかが当たった、それを取ると


「ゲーム機あったよ、もしかして?」


 ゲーム機の後にポータブル充電器、裁縫道具、絆創膏、電卓を具体的に意識してウエストポーチに手を入れたところ取り出せるようになった。

 ある程度のものを取り出したところで取り出し方になれてきたところで、ふと気になって武具になったという日本刀キーホルダーをウエストポーチから出そうとした。

 すると、


「大きく綺麗なってるな、あまり重く無いし武器として振り回せるな」


 日本刀のキーホルダーは全体の長さが自分の背の高さ位あって、刃の部分は地面から肩の高さ位の長さになる、日本刀にしてはとても大きいだろう。

 キーホルダーとして柄頭のところにあったチェーンが無くなっていて、チェーンが繋がっていた穴には白色の宝玉のようなものがはまっている。

 さらに全体的に剥げていたメッキは下地ごと元の色の金属になっている、そして刃のところは鋭くなっており武器としては十分に見える。

 重さは大きさのわりに重すぎず軽すぎず、ちょうど良く柄の握り心地も金属なのに滑ることなくしっくりくる。

 割れていたはずの鞘の部分はヒビすら無い。


 盾セットの方は?


「こっちも大きく綺麗になってる、盾が少し重いかな」


 盾のサイズは正面に構えると俺の胴体がすっぽり入るサイズ、一昔前の野球の審判が持ってるプロテクターみたいになる。

 盾の模様は、5角形の中央に四方手裏剣のような模様が膨らんでいて、5角形の縁も厚くなっている。そして十字の中央は丸く凹んでいるというシンプルなものだ。

 十字部分の周りから盾の縁までの膨らんでいない部分の塗装も買った当時のきれいな青色が戻っている。

ただ十字の中心にあったはずの赤い細工石は単純に赤く塗られているだけになっている。

 裏の持ち手側に斜めのベルトが付いているので持ち運ぶときは背中に背負えるようになっていて、他にも色々持ち手がある。

 セットの剣の方は幅は広いが短く、幅300ミリ、刃渡り400ミリといったところだろうか。

その剣は盾の裏に収納でき、盾を構えた時に上から下に開いている穴に剣を差し込むと刃の部分がすっぽり隠れる。

 日本刀と同じくこちらにも宝玉がはまっている、場所はもとのキーホルダーのチェーン穴ではなく盾は上の部分の真ん中に、剣の方は持ち手の少し上、刃の部分を三角形にしたとき底辺の真ん中のところに、盾には青、剣には薄い緑のものがはまっている。


「色が違うのは意味があるのかな?、他の荷物にも付いてたっけ?」


 今まで出したものを確認したが、付いていない。

 ウエストポーチを逆さにして、ウエストポーチの中身よ全部出ろと念じると口臭用タブレットやレシートなどウエストポーチに残っていた中身が全て出てきて、少しちらかった。

 この際リュックサックの中身も出してしまおう。


「あれ?リュックサックが軽いな、やっぱり直接入ってないのかな?」


 魔法の世界の物語によくある、いくらでも入って重さを感じない異次元バッグにウエストポーチとリュックサックがなっているみたいだ。


「ええい、いっそのこと俺の物全部出てこい」


 リュックサックには仕事に使う安全メガネなど借りているものも入れていたはずだがそれらをこっちに持ってこれるか不安なので、俺の私物に絞って出てくるように念じた。 


 すると俺の私物が出てきた、それによって新たにいくつかわかったことがある。

 ひとつはリュックサックの中に入っていたコンビニ弁当がまだ暖かいところからリュックサックの中では時間は止まっているらしい。

 それに、


「こんなに出るなんて思わなかった、食べ物だけリュックに戻して一度置いとこう」


 リュックから出す対象を俺の私物としたときにリュックサックの中の私物と指定しなかったので家具家電などの生まれ変わる前の自宅にあった私物を含んだ私物全てが出てくるなんて夢にも思わず、私物が俺の目の前で山のよう積み上がってしまった。


 どうしようこれ

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