人喰いの娘と人喰いの《異類婚姻》

まだ幼いその少女は人喰いの娘だった。人喰いとして殺された母親の娘であるから彼女もまた、人喰いに他ならないのだ。
少女は人を喰らい、過酷な環境のなかでも生き延びてきた。幼い外見で人間を油断させ、後ろから襲うのだ。そうして、喰らう。喰らう。
だって彼女は、人喰いなのだから。

人喰いという題材をこれほど巧く調理し、たった五千文字の短編のなかに収められた、著者さまの類まれなる才能。言葉もございません。ほんとうに素晴らしいです。無駄のない、しかしながら場景がありありと浮かぶ文章にも思わずうなりました。
喰らう。という行動には恐怖を克服したい、という感情があるといいます。彼女もまた、そうだったのかなと読後にも想像を巡らせています。できることならば、彼女と彼がこれからどうやって旅を続けていくのか、続きを読ませていただきたい! と思ったり。

人喰い。美しき人外。少女。異類婚姻。どれかに惹かれる御方はぜったいに読まないと損です。読みましょう。
ちなみにわたしは、どれも好きです。

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