第42話 守護の魔導禁書

未だ意識の無いまま放出し続ける一ノ瀬の魔力により、魔族の王が行使した幻惑魔法からベルトレとクラインを含めた八人が目を覚ました。一ノ瀬の姿を確認したベルトレはかつてアダムとイヴが魔導禁書を発動させた時とは違う現象に、困惑していた。










「何だあれは!?魔導禁書に取り込まれる処か、何故使用できているのだ?!」








ベルトレの呟きにセリスが返した。








「主殿の無属性魔法は、全ての術を使用可能だと以前授けたと思うのだが?先程空で言い合いをしていたソナタ達に鐘を落としたせいか?」








セリスの言葉に不服な表情を見せるベルトレを他所に、クラインがセリスに問いた。








「ですが、一ノ瀬さんは未だ意識が無いように思うのですが?!いずれ魔力が尽き、魂ごと消滅してしまうのではないのですか!?」








焦るクラインを横目にセリスは応答した。








「枠が無く放ち続ければそうなる可能性もあるであろう。だから魔導禁書を魔力放出のストッパーとして発動させた。だがそれは意識の無い主殿からすれば無作為に敵も味方もなく魔法を放ってしまう。それを抑止するためにかの王達とわらわで三重に結界を張っておる。要は主殿の魔法の発動が終るのが先か、わらわ達の魔法が破られるのが先か?決着はそう長くはないであろう。」










セリスが話す中、部屋の入り口であった場所でリムが目を覚ました。その事に気付いたエリアスとロゼッタはアテナの背後で声を上げた。










「リム!気が付きましたか。良かった。」






「大丈夫?!傷はエリアスが魔法で塞いでくれたけど、痛んだりする?」








二人の問いかけにアテナも目を覚ましたリムに気が付き声をかけた。








「リム気が付いたか!?しかしよくあの一撃を耐えたものだ!」










アテナ達の矢継ぎ早な問いかけに、未だ覚醒しきれてない頭を持ち上げ、リムはゆっくりと言葉を発した。








「、、そう言えば切られたのでした。私の半分はゴーレムですから、恨めしくもそのおかげで命に至らなかったと思います。処でこの光は何なんですか?、、、て!?一ノ瀬さんが光ってる!?」










リムの言葉を皮切りに、一ノ瀬から放たれていた魔力が急に収まり、魔導禁書と共に空中に浮かんだ。その瞬間一ノ瀬の背に巨大な魔法陣が展開され一ノ瀬を覆うような青く透ける巨大なゴーレムが出現した。その場にいた者全てが一ノ瀬に向け構えたが、ゴーレムは両腕を上げ地面に叩き付けた。その瞬間二人の王とセリスが展開した結界は意図も容易く破壊された。








一同が驚愕したその瞬間アドルフが雷の巨大な剣を出現させ、一ノ瀬に向けて放ったが、ゴーレムの一撃により剣は激しい放電となり散っていった。苦い表情を浮かべるアドルフに視線を向けた一ノ瀬の背後にはいつの間にかブラックホールの様な物が出現していた。








「いんや~!こ~れは厄介ですね~?ですが、このままだと全滅してしま~うので、暫く裏側に送らせて頂きます。」








ペインの放った魔法により一ノ瀬は魔導禁書ごと背後の闇に吸い込まれていった。








暫くの沈黙の中、ロゼッタが口を開いた。










「一ノ瀬!?一ノ瀬を何処にやったの!??」










ロゼッタの言葉にペインが返した。








「この世界と他の世界の境目。んま~死後の世界の手前?み~たいな場所さ!ただ、魔導禁書まで飛ばしちゃったから~、暫くしたら元に戻すか~ら問題無いよ~!」










ペインの後にアルトレが言葉を続けた。








「まあその時生きているか分からないけど。後、ついでに其処の【弟】も飛ばしてくれれば良かったのに。本当に空気読めないわね。」










アルトレに鋭い眼光を飛ばすベルトレを他所に、どこから反応を示せばいいのか分からないロゼッタにかわり、アテナが口を開いた。








「この場において決定権を持つものは、最後まで立っていられた者だけだ!あの四人を倒せば全てが終わる。いや、新たな世の夜明けを迎えられるだろう!一ノ瀬殿を早くこの世界に戻す為にも、皆、行くぞ!!」










アテナの言葉にその場の一同は魔法を展開したが、ただ一人沈黙を貫く者がいた。








「あの力。あの者こそ我が待ち望んだ最後の【鍵】。」








魔族の王は静かに呟いた。

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召喚から始まる異世界生活 アンドリュー @masatatu

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