第18話 マジですか山本さん?

どうやら鏑木は野原の実家にまで足を運んだようだ


「尊敬出来る人がいない」


虚な表情だが、野原はそう鏑木に話したようだ


それでも戻ってくる意思はあるようで、今はそれを待つ事となった


今日は久しぶりに山本が遅番で入る

冴島、城崎、山本が遅番で被るのは久しぶりのことだ


それは業務前の休憩室での事

「城崎さん社員になるって本当?」

「そうだね、面接あるみたいだけど、まだいつになるかは解らないけど」


「そうなんだ。前から誘われてたもんね」


そこに相澤が入ってくる形で

「冴ちゃん、ナタデココの系列店てどこがあるの?」


「東京港区にもう1店舗。あとは茨城、埼玉にあって、結構九州の方に多いみたい」


「俺は九州でもいいな。地元四国だし」

「え?そしたらここから城崎さんいなくなるって事じゃん」


「まあそうなればそうだよね」


城崎がいなくなるかもに反応したのは山本だ。


恭介、城崎、相澤は同じ年齢。山本は1つ上になる

何か思う事があるような表情をしていた



業務が始まり慣れてきたホール業務を皆でこなす


閉店時間が過ぎ、スタッフが着替えて帰る時に、山本はいち早く着替えて休憩室から居なくなっている事に恭介が気付く


「あれ?いつも遅いのに山本さんもう帰ったの?」

「いや、なんか店長に話があるって言ってましたよ」


なんだろう


たまたま事務所の近くのメダル流し機の修理を頼まれていた恭介は、修理しながら鏑木店長と山本の話が聞こえてきた


「え、山本君も社員になりたいと?」

「はい、この仕事好きなので、お願いします」

「そう、解った。本社の人には伝えておくよ」


潜り込むように作業してた恭介は驚いて思わず頭をぶつけた


「…いてっ…ズビッ」


話終わって出てきた山本に声をかけた


「山本さん、マジですか?」


「マジです。城崎さんがやるなら僕もやろうと思って」

「そう、ですか。あまりオススメは出来ないですが、山本さんが決めたなら」


山本さんってこんな流される人だったのか?

それとも元々そう思っていたのか?

解らないが、本人が言うなら止める理由はない


スタッフに挨拶をし、残りの仕事を片付ける恭介


この日は翌日のスロットイベントの為に終わったのは午前4時を回っていた


帰りにコンビニに寄ったあんま使わないからちゃんと見てなかったがATMを見ると60万位貯まっていた


まだ10月になったばかりだから半年程でこの額が貯まった

だが恭介は驚きも感動もなかった


金だけあっても使う時間が本当にない

終わるのがこの時間だ、慣れてきたとしても休みなんてまた寝て消える


家に着いた恭介はつかの間息を抜く


「幸は寝てるか、メールでもしておこ……いっ!」


まったりし始めた途端、キリッというかズキッというか

腹部に鈍く重い痛みが走るのを感じた


「…ストレスかな?今日は飲まずに早く寝よう」


相変わらず体重は増える様子がない

サイゼリヤで1人で3000円分位食べててもなお微減していっている


疲れているのに眠れない日もあり、アルコールの量も増えた


身体がおかしくなってくるのはむしろ納得出来るが


ちょうど6連勤の2日目で嫌になるタイミングだ、その日シャワーを浴びると恭介はすぐにベッドに入った

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